この数日,休めなかった分を取り戻そうかとするように気の向くままの仕事をした。「気の向くまま」ってのが大事である。所詮,上手な休み方を知らない人間だから,その代わりに好き勝手なペースであれやこれや手を出している方が気楽なのだ。
無口に書斎で過ごすのが得意な父と,コメンテータばりに口出し好きな母の間に生まれ育った。噛み合ない両親二人に,兄妹三人が加わって,五人の揃っていた我が家の全盛期は毎日のように派手に家族喧嘩を繰り広げていた。ご近所にも届く大きな声量で,へ理屈から罵倒,ときには暴力を伴って展開していた。様々な事情を抱えて,そもそもコミュニケーションハードルの高い家族であったが,それにしても喧嘩状態における性格の不一致は甚だしかった。
全盛期に比べれば,家族も実家を出て一人減り,二人減り,やがて両親と私たち兄妹はバラバラ。それぞれ年齢を重ねて,だいぶ性格的にも丸くなり,落ち着いた家族間コミュニケーションを持てるようになってきた‥‥と思ったらそうでもなくて,へ理屈の知恵ばっかり増えたおかげで,スローながらも重厚感のある傷つけ合いをするようになった。まったく,人間というのは簡単には変わらない生き物だ。