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東日本大震災以後

 3月11日に起こった東日本の大震災は,地震,津波だけでなく,原子力発電を始めとしたインフラのエネルギー源に致命傷を与えたことで,深刻な打撃を日本社会に与えている。

 エネルギー源の損失によって,救助や支援活動が困難になるだけでなく,東京という中枢都市の機能が低下して,日本全体の体力が落ち始めている。

 また,原子力発電所の事故による放射能漏れへの恐怖という心理的な要因が,被災地支援の難しさを高め,震災対応に対する人々の苛立ちをも高めている。

 そうであるにも関わらず,日本人が暴動に走らないことを世界の人々は驚きの目で見て賞賛していたりする。今後日本企業が復興のために動き出すことを見越して投機筋による円高さえ引き起こされたりしている。

 少なくとも1万人の命が失われたり,見失われている。

 その規模と福島原子力発電所事故の影響規模を考えると,今後の財政的な厳しさは,よりいっそう増すだろう事は容易に想像がつく。

 子ども手当など政策の棚上げ議論もすでに聞こえている。緊急の復興国債発行を提案する声もある。

 原子力発電所事故の行方が全く見えない現段階では,復興にどのくらいコストがかかるのか,素人想像すら難しい。

 科学者でさえ,原子力に対する立場の違いによって見解に相違がある。

 しかし,諸外国の関心の高さと断片的な情報を自分なりの経験則で推し量ってみるならば,おそらく日本は未来を圧迫する厄介な問題を抱え込んだのだろうと思う。あとはどれだけ真摯に引き受けるかが残された課題だろう。

 日本が抱えた大きな問題の範囲で考えると,事態を静観して見守る他ないのであるが,そこを閑却して,いつもの範疇で今回の事態を考えることも大事なことだと思う。

 初めの地震や津波が起こってから一週間。

 あらためて教育分野や情報分野に関する問題が様々な形で浮き彫りとなった。

 実のところ,もう少し自分の中で物事を整理しないと,細々書けないなぁという感じ。要するに,まだ落ち着かない感じなのである。

 それも,自分自身がネットなどのメディアに繋がっているがゆえの問題なのかも知れない。

 災害時にTwitterが役立つのか役立たないのかという議論もあるが,TwitterにしてもWebにしても,テレビやラジオにしても,どのメディアにどのように接続するかは個人個人の問題だと思う。

 その上で,情報にしても物資にしても,いざというときには「仕分け」が出来ないといけないのだなとあらためて感じたり,そのための教育をどう考えればいいのかということもあったり,いろいろあるけれども,それもまたもう少し時間をかけて考えたい。

各党マニフェスト(教育部分)

民主党
自民党
みんなの党
日本共産党
公明党
社民党
国民新党
新党改革

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以下は,民主党マニフェストから教育部分を抜粋。

【民主党2010】=====

4子育て・教育

未来を担う子どもたちへの政策を最優先にします。

チルドレン・ファースト。子育て支援や高等教育も含めた教育政策のさらなる充実で、社会全体で子どもを育てる国をつくりあげます。

●財源を確保しつつ、すでに支給している「子ども手当」を1万3000円から上積みします。

●上積み分については、地域の実情に応じて、現物サービスにも代えられるようにします。(現物サービスとして、保育所定員増・保育料軽減、子どもの医療費の負担軽減、給食の無料化、ワクチン接種の公費助成などを検討します。)

●2011年度から「子ども手当」に国内居住要件を課します。海外に住んでいる子どもは対象にしません。

●出産育児一時金、不妊治療支援など出産にかかわる支援策を拡充します。

●大学生、専門学校生などの希望者全員が受けられる奨学金制度を創設します。また、大学の授業料減免制度を拡充し、教育格差を是正します。

●出産から成長段階までの切れ目のないサービスを実施します。特に、就学前の子どもの保育・教育の一体的提供を進めます。

●少人数学級を推進するとともに、学校現場での柔軟な学級編制、教職員配置を可能にします。

【実現したこと】(マニフェストにない政策を含みます。)

20.子ども手当の支給開始
中学生以下の子ども一人あたり月額1万3000円の「子ども手当」の支給を開始しました。

21.保育サービスの拡充
2010年度から14年度にかけて、保育所の定員を毎年5万人増やすことを決定し、これに沿って実施しています。

22.母子加算の復活、児童扶養手当の拡充
生活保護の母子加算を2009年12月に復活させました。これまで給付されていなかった父子家庭への児童扶養手当は8月分から支給開始予定です。

23.質の高い教育の実現
教員が一人ひとりの子どもと向き合う時間を増やすため、2010年度は4200人の教員定数の改善を行いました。

24.スクールカウンセラーの配置
生活相談、進路相談を行うスクールカウンセラーの配置を、2010年度に3650校から1万校に増やしました。

25.高校無償化のスタート
2010年度から、公立高校の授業料を実質的に無料化しました。私立高校生などに対しても公立と同程度の支援を行うことで、授業料負担を軽減しました。

26.奨学金制度の拡充
希望者全員が受けられる奨学金制度をめざして、2010年度予算において大学等奨学金の貸与者を3万5000人増やしました。

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以下は,自民党のマニフェストから教育部分を抜粋。

【自民党2010】=====

頑張る人、頑張った人が報われる社会を実現します

「財源なくして安心なし、安心なくして成長なし」の考え方のもと、安心できる社会保障制度を確立し、普通に頑張る人が報われる社会を実現します。

39 子どもたちの成長に合わせた切れ目のない子育て支援

・特定不妊治療に要する費用の全額助成と年間回数制限(現行2回)の撤廃
・妊婦健診費用の公費負担の継続
・周産期医療ネットワークの整備・充実
・出産一時金60万円への拡充、居住地減で出産できるよう産科医療機関の開業を支援するなど出産環境の整備
・父親の産休・育休取得のための環境整備(8819運動)
・0〜3歳児のいる家庭への訪問育児支援の推進
・母子家庭等が子育てと就業の両立ができるよう環境整備の充実
・国の責任において良質な保育所を整備・拡充し、待機児童ゼロ作戦を実現
・地方における保育所の定員割れ対策
・保育所施設基準の維持・改善、保育士等の処遇改善及び人員の確保
・3歳から小学校就学までの国公私立すべての保育料・幼稚園費の無料化
・病児・病後児保育や一時預かり保育、地域子育支援センター・ファミリーサポートセンターの拡充などの保育メニュー充実への支援
・感染症の拡大防止システムなど乳幼児の安心・安全を確保する仕組みの構築
・子どもの医療費無料化
・小学校給食の無償化など小・中学生の子どものいる家庭への支援
・放課後児童クラブについて、既設の小学校施設の活用などにより全ての小学校区での設置、その規模の適正化や指導員の増員・処遇改善などによる質の確保、「公的責任」や「最低基準」などの法的根拠の明確化
・放課後子ども教室を活かした補習支援
・理科・数学の教科担任制や全国学力調査、教員免許更新制度の復活など公教育の充実
・高校生や大学生への給付型も含めた奨学金の拡充などを実施します。
特に、保育に関しては保育の質の低下、保護者負担の増加、保育従事者の処遇の低下を引き起こす恐れのある保育の産業化ではなく、児童福祉として子どもの健やかな育ちを保障し、子育て家庭の支援を積極的に行うとともに、貧困や格差に対するセーフティーネットとしての機能も含め保育制度の充実を図ります。
上記の子育て支援サービスの一部については、地減の実情に合わせて組み合わせることができるよう、子育て交付金を創設し、各自治体において、親・保育関係者・地減住民・行政の協議に基づいた予算配分と創意工夫が生かせるようにします。
「子ども手当」に関しては財源の裏付けもなく、また、政策目的や効果も不明であることから全面的に見直します。特に外国人の海外在住の子どもに対してば、子ども手当の支給を早急に停止します。

世界をリードする「教育立国日本」を創造します

子どもたちに世界トップレベルの学力と規範意識、そして日本に誇りが持てる教育再生、一人の落ちこぼれも出さない教育を行います。理念なきバラマキ、日教組の偏向教育丸呑みなど、国民の間に不安が広がる民主党政権の教育政策に対し、「教育再生」の流れを止めることなく、「人間力」を高めるための教育を推進します。

212 世界トップレベルの学力と規範意識を兼ね備えた教育

「教育基本法」に基づき、「教育振興基本計画」「新学習指導要領」を確実に実施するため、OECD諸国並み(5%)の公財政教育支出を目指します。全国学力・学習状況調査を悉皆調査に戻し、全ての子どもの課題把握、学校・教職員の指導改善に生かします。さらに土曜授業を復活させます。
国旗・国歌を尊重し、わが国の将来を担う主権者を育成する教育を推進します。過激な性教育やジェンダーフリー教育※、自虐史観偏向教育等は行わせません。道徳教育や市民教育、消費者教育等の推進を図るため、新科目「公共」を設置します。中学・高校でボランティア活動やインターンシップを必修化し、公共心や社会性を涵養します。農山漁村地域での体験学習等を推進します。

※ジェンダーフリー教育 男らしさや女らしさなど性差を否定したり、伝統文化を否定する教育。

213 激動の時代に対応する、新たな教育改革

世界トップレベルの教育立国とするため、幼児教育の無償化、小学校5・6年生への教科担当制の導入、義務教育化を含めた高等学校の理念・あり方の検討等、現行の六・三・三・四制の是非について検討し、新時代に対応した「平成の学制大改革」を行います。
「高校卒業検定試験」等の実施を図り、確実に学力を身に付けさせます。併せて、大学全入時代の大学入試のあり方そのものを検討します。例えば、東京大学において、現行の入学試験とともに、世界のリーダーたる人材の養成を前提とした入学試験を行います。一度社会に出てからも、学び直しができるよう、社会人が再び大学で学べるシステムを導入し、キャリアアップの機会保障と再チャレンジを促進します。

214 安心して、夢の持てる教育を受けられる社会の実現

質の高い教育ときめ細かい指導を行うために、教職員定数を改善します。教育の地域間格差が生じないよう、教育の正常化を図ったうえで、義務教育のあり方について検討します。「安全配慮義務」の周知徹底を図る等、いじめ問題に全力で取り組みます。17万人を超える不登校者、6万5千人を超える高校中退者を出さないための教育を実現します。
真に公助が必要な児童・生徒が安心して高校、大学、専修・各種学校に通えるよう、新たな就学援助制度や給付型奨学金※の創設、特に私学における低所得者の授業料無償化等を行い、家庭の経済状況に関わらず、志ある子どもたちの夢を徹底支援します。

※給付型奨学金 返済義務のない奨学金。

215 公私間格差の是正・私学助成の拡充

公教育において私学が果たしてきた重要性に鑑み、私学の建学の精神を尊重しつつ、「私立学校振興助成法」の目的の完全実現(教育条件の維持・向上、修学上の経済的負担の軽減、経営の健全性向上)のため、公私間格差の解消を図るとともに、私学助成を大幅に拡充します。

216 教育の政治的中立を確保するための「新教育三法」

「教育公務員特例法」違反者に罰則規定を設け、教職員組合(日教組等)の政治的中立確保及び、選挙活動・強制カンパ等の違法活動を防止します。教職員組合の収支報告を義務付け、公金を原資とした資金の透明化を図るとともに、違法活動団体は、「地方公務員法」に定める人事委員会の登録団体から除外します。「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」の徹底を図り、教育委員会等に必要な調査を義務付けるための法改正を行います。
さらに、北海道や山梨、神奈川の教職員組合がおこした政治資金規正法違反事件等を徹底的に究明し、教育の政治的中立・正常化に関する国民的な議論を喚起します。

217 教師の質を高め、頑張る教師を応援

メリハリある給与形態の確立や優秀教員認定、及び教員が子どもたちに没頭できる教育システムを構築し、真に頑張っている教師を徹底的に応援します。教員人事への教職員組合等の介入を排し、教育委員会の責任のもと、バランスのとれた教員配置を実現します。
教職員の資質向上と教育水準の維持・向上のため、教員免許更新制度の運用面での課題を是正し、実効ある制度設計を行います。一方、指導力不足教員は教壇に立たせません。

218 安全・安心な学校環境の構築

民主党政権は高校授業料無償化の財源確保のため、学校耐震化・老朽化の予算を3分の1以下に削減しましたが、わが党はこれを厳しく追及し、政府に予備費の使用を決定させました。学校の耐震化・老朽化(築30年以上が約5割)対策を強力に推進し、100%実施します。
また、わが党主導で、無認可共済となっていたPTA等の共済制度を確立するための「PTA・青少年教育団体共済法」が成立しました。今後とも、安全・安心な学校環境の構築に取り組みます。

219 幼児教育の充実・強化と幼児教育の無償化

幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものです。全ての子どもに質の高い幼児教育を保障するとともに、国公私立の幼稚園・保育所・認定こども園を通じ、全ての3歳から小学校就学までの幼児教育を無償化します。
就学前の多様化する教育・保育ニーズに柔軟に対応するため、幼稚園・保育所・認定こども園の教育機能の充実・強化を図ります。

220 読解力を高める国語教育

国語科は各教科等の学習の基盤であり、小・中・高等学校を通じて国語教育の一層の充実を図ること、特に、読解力、知識・技能の活用等、思考力・判断力・表現力の育成を重視することが必要です。そのため、国語科の授業について、「子どもの言語能力を育てる授業」へと改善し、具体的には、OECD/PISA調査の読解力の育成のため、子どもが「聴いて→考えて→つなぐ」学習を展開します。

221 外国語活動を含めた外国語教育の充実

「教育振興基本計画」で外国語教育の充実が掲げられており、「新学習指導要領」が小学校では平成23年度から、中学校では平成24年度から完全実施されるにもかかわらず、政府行政刷新会議「事業仕分け」が「英語教育改革総合プラン」を廃止と判定した結果、予算が前年度比マイナス74.3%と、大幅に削減されました。
しかし、例えば「英語ノート」は、特に外国語指導助手(ALT)等がいない町村部で活用されており、「英語ノートがなければ平成23年度からの外国語活動が実施できない」等の意見が現場には強くあります。わが党は、今後とも外国語活動を含めた外国語教育の充実を図ります。

222 理数教育及び才能教育の大幅な充実・強化

次世代を担う理数好きな子どもを増やすため、体験活動や実験教室の充実、理工学部の学生や企業関係者等の外部人材の活用、さらには理数教育に携わる教員の指導力向上等、初等中等教育段階での理数教育を大幅に充実します。「事業仕分け」で「理科支援員等配置事業」が「廃止」とされましたが、わが党は事業の継続実施や設備整備の支援を今後とも推進します。
将来、世界のリーダーとなるような明確な目的意識を持つ子どもの育成に向けて、優れた資質を伸ばし、育てる才能教育を強化します。「スーパーサイエンスハイスクール」※を一層拡充するとともに、国際科学オリンピックに参加する児童生徒数の大幅な増加を促進し、国際的な交流機会を拡大します。

※スーパーサイエンスハイスクール 文部科学省が科学技術や理科・数学教育を重点的に行う高校を指定する制度。

223 真に外国人との友好を築く日本語教育

外国人の子どもが公立学校に通っても、日本語が分からない等の理由により授業についていけず、不就学になる者が多いとの指摘があり、日本語指導員の配置等、学習者の日本語能力に応じたきめ細かな受入体制を構築します。
外国人の大人に対する日本語教育は、体制が十分に整備されているとは言えません。外国人に対する日本語教育の質と量を十分に確保するためには、日本語を学習する機会の拡充が必要であり、「生活者としての外国人のための日本語教育事業」等を継続的に実施・充実させます。わが党は、民主党のように単に外国人にもお金を出せば良いという施策ではなく、真に外国人との友好を育むための環境整備を行います。

224 一人ひとりを大切にし、充分に力を伸ぱす特別支援教育

養護教諭の複数化の充実,特別支援教育コーディネーター※の機能強化、高等学校への支援員の配置、発達障害のある児童生徒の実態調査の検討、ICT等の技術を活用した教材等の研究、指導内容・方法の工夫改善、障害のある生徒に配慮した高校入試の実施、中・高連携による進路指導の充実、特別支援学校等と産業界との連携による実践的指導の実施、障害者就労支援コーディネーターの配置、国立大学法人附属学校における特別支援教育の推進・充実等に重点的に取り組み、発達障害を含む障害のある子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じた適切な教育を推進します。

※特別支援教育コーディネーター 各学校において、教育的支援に携わる人・機関を連絡調整するキーパーソンで、校内または福祉・医療機関などの関係機関との間の連絡調整役、保護者に対する学校の相談の窓口の役割を担う者。すべての盲・聾・養護学校及び小・中学校において指名し、校務分掌に明確に位置づけることが求められている。

225 受験一辺倒でない多様な選択肢を持つ教育

普通高校以外に、最先端の職業教育を行う専門高校を設置する等、受験一辺倒でない、多様性・専門性のある選択ができるようにします。
専門学校の果たしてきた実績に基づき、職業教育に特化した新しい高等教育機関を創設し、「学校教育法」上の地位についても検討します。現状の専修学校各種学校の存在意義を十分認識して、他の学校群との制度的格差の解消を目指し、財政的支援や教育内容の充実に向けての公的支援等を図ります。

226 高等教育政策・大学政策の積極的な推進

東大・京大等に民間企業型ガバナンスを導入すること等により「民営化」、「スーパー・ユニバーシティ化」を図り、私学も含め5年後までに世界の大学ランキングの10位以内に3校、30位以内に5校以上入ることを目指します。大学を国際標準である9月入学とし、高校卒業後の3ヵ月間は社会体験ボランティア活動期間とします。
「高等教育庁」の検討等、公正かつ抜本的な高等教育・大学振興策を策定・推進します。私立大学の収入の約8割は学生納付金であり受益者負担が重く、国公私立大学の設置形態論・経費の受益者負担論の見直し等を行い、財政支出の仕組みを再構築します。地域共創(大学と地方・地域社会、産業の連携)運動を積極的に推進します。

227 大学の基盤的経費の確保

わが国の基礎科学の中核を担っているのは、多様な人材が集い、教育活動や研究活動を行っている大学ですが、近年、その安定的な教育研究活動を支える基盤的経費(国立大学法人運営費交付金及び施設整備費補助金、私学助成)が大幅な減少傾向にあります。
これにより、教員数の維持や施設・設備の管理・運用等で、多大な困難が生じていると指摘されていることから、わが国の基礎科学を強化する観点により、これらの基盤的経費を十分に確保します。

228 大学院教育の抜本改革

大学院について、研究活動のみならず教育活動を一層重視し、体系的かつ集中的な人材育成の取組みを強化するとともに、社会の多様な場で活躍する人材を育成・確保するため、産業界や優れた人材育成の取組みを行っている公的研究機関等との密接な連携・協力を推進し、大学院における教育活動を強化します。
世界をリードする大学院の形成を促進するとともに、世界水準にある大学院の層に厚みを持たせるため、世界最先端の優れた教育研究活動を行う大学や特定分野で質の高い教育研究活動を行う大学等に対する重点的支援を強化します。教育研究活動の「たこつぼ化」を排除するため、学問分野別に細分化されて設けられている学協会の改革を促進します。

229 沖縄振興の推進と沖縄科学技術大学院大学の実現

厳しい経済・社会状況を踏まえ、沖縄振興計画に基づき、自立型経済の構築を目指します。沖縄の魅力・優位性を活かし、観光や情報通信産業を始めとする各種産業の一層の振興、人材育成、雇用の創出などの取組みを進めるとともに、県土の均衡ある発展に向け、離島の活性化、基地跡地利用の促進を図り、さらに重点的・戦略的な社会資本整備等を進めます。また、世界最高水準の教育研究を目指し、沖縄科学技術大学院大学の平成24年度までの開校に向け、「沖縄科学技術大学院大学学園法」に基づき準備を着実に進めます。これにより、沖縄の自立的発展及び世界の科学技術の発展に寄与していきます。

230 博士課程学生に対する支援強化及び若手研究者の活躍促進

入学金や授業料免除の対象拡大、給付型奨学金の創設、ティーチング・アシスタント及びリサーチ・アシスタントの充実など博士課程学生への経済支援を抜本的に拡充し、学生全員が安心して学べる環境を整備します。
単なる任期付ではない若手研究者のポストを大幅に増やすとともに、キャリアパスを多様化するため、産業界の研究職や知的財産管理等の研究支援に携わる専門職等での活躍を促進します。公的研究機関等における、ポスドク等を対象とした専門人材育成の取組みを支援し、活躍機会を拡大します。若手研究者が自立して研究に専念できるようにするための新たな研究資金制度として、当該研究者の名前を冠した「冠プロジェクト」を創設します。

231「留学生30万人計画」と学生・研究者の国際交流の積極的推進

「留学生30万人計画」の2020年実現を目指し、国・地域・分野等に留意しつつ、優秀な留学生を戦略的に獲得します。
わが国の学生や若手の研究者が内向き指向にあると指摘されており、世界で活躍する優れた人材の育成を強化するため、高校生を含む学生の留学機会を拡大するとともに、若手をはじめとする研究者の海外研讃の義務づけや機会の大幅拡大を推進します。世界水準の教育研究活動を展開するためには、海外から優れた研究者を受け入れ、協働で研究活動に取り組むことが不可欠であり、奨学金の充実や受け入れ機関の体制整備、周辺の生活環境の整備等を推進し、優秀な留学生や海外からの研究者の受け入れを大幅に拡充します。

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以下は,みんなの党のアジェンダから教育部分を抜粋

【みんなの党2010】=====

みんなの党のアジェンダ

Ⅱ 世界標準の経済政策を遂行し、生活を豊かにする!

「生涯安心」「誰でも安心」のセーフティーネットを構築し、生活崩壊をくい止める

2.「子ども手当」を地域主権の観点から抜本見直し

①民主党政権で開始された、バラマキ重視の「子ども手当」は少子化対策という観点から抜本的に見直し、地域主権の観点から自治体の創意工夫による現物給付と現金給付を車の両輪とした政策体系に転換。
②子育てしながら働ける環境づくり(待機児童ゼロ、保育ママ・病児・一時保育の拡充、育児休暇取得の円滑化、職場の意識改革など)。
③幼保一元化の推進。
④幼児医療の無償化(若年層の負担軽減)、不妊治療費の助成拡大、小児緊急医療体制の拡充や、総合的な少子化対策を実施。
⑤地域の実情にあった少子化対策を行うため、中央集権的なやり方ではなく、地方自治体の裁量を大きくし、地域ごとに柔軟に対応できる仕組みに。
⑥高校、専門学校、大学等の高等教育への奨学金制度の拡充(出世払い・返済不要型の活用など。)
⑦以上の施策を実現するため、権限・財源・人間を地域に移譲する。

引き出し(選択肢)の多い教育を実現する

1.教育は現場の市町村、学校現場に任せることを基本とし国の役割は最低 限の教育水準の維持にとどめ、それぞれ地域の実情に合わせたユニークな教育をおこなう。

2.教育基本法に従って、基礎教育・公教育を充実させる

①教育の機会均等のためにも、教育基本法に従って、公教育の建て直しを充実。
②教員免許制は維持。
③少人数・体験・個性重視の教育を実現。
④手に職を持つ教育、生き抜く教育のため、芸術・文化・スポーツ・武道などを重視。
⑤国際化時代にふさわしい人材を育成するためには英語力の向上が必要であり、学校教育において英語力を図る尺度として、TOEFLなどを使用する。
⑥学習時間の確保と学力の向上を目指す。
⑦大学入試を、上記にあわせ抜本改革。
⑧教員の質と数を充実。いじめや不登校等の問題に対処するスクールカウンセラーも全校配置。
⑨親の貧富で教育格差が広がらない環境整備。高校、専門学校、大学等の高等教育への奨学金制度の拡充(出世払い・返済不要型の活用など。既出)
⑩公務教職員の政治活動を全面禁止。

3.学校を地域社会に開放する
学校を地域社会の核に。学校経営も保護者、住民、教育専門家などを入れた運営委員会で実施。

みんなの党の成長戦略

3.中期的、長期的な視点での新たな成長戦略
(4)業種横断的な産業育成策(科学技術以外)
– 2 質の高い労働力を確保する

<教育の抜本強化>

○教育の最終的な責務は国にあるという認識のもと教育を抜本強化する。具体的には、教育基本法に沿って、教師の資質を高め、教育力の向上を図り、学習時間の確保と学力の向上 を目指す。世界に通用するたくましい日本人を育てる。

○「ゆとり」が「放縦」とならないよう基礎教育・公教育を充実させる。
・義務教育段階での読み書き計算の徹底と道徳教育の教科化
・少人数・体験・個性重視。理系離れへの対応。手に職を持つ教育、生き抜く教育等を重視。
・自国や他国の歴史や文化を正しく学び、愛国心や郷土愛を学校教育の中で育む
・教員の質と数を充実。
・教員の政治活動を全面禁止
・親の貧富で教育格差が広がらない環境整備。高校、専門学校、大学等の高等教育へ奨学金制度の拡充(出世払い・返済不要型の活用等)。

○学校を地域社会に開放する。公立中学、高校の水準を向上させる。また、何でも学校がやるという考え方から家庭の役割、地域の役割も考えることも必要。

○大学を競争にさらし、研究機能とともに、教育サービス機能抜本強化。
・東大の民営化など(再掲)。産業と大学の関係を更に密接にする必要がある。産業のサー ビス機関としての大学の位置づけも重要。

○優秀な研究者や学生が国境を越えて能力を高め活躍する機会を拡大
最先端のイノベーションを実現するには、国内にこもらず、世界の優秀な人材との交流・切磋琢磨が必須。現状の日本の問題は、①国内の大学が魅力に乏しく外国の研究者・学生を 集められない、②一方で、日本人学生は内向き志向が強まり海外留学者数は減少。
・アジア域内での大学単位の相互認定、(従来の量的目標設定を超えた)留学生拡大施策の 推進など。

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以下は,日本共産党の政策集から教育部分を抜粋

【日本共産党2010】=====

I、大企業の利益と内部留保が国民のくらしと日本経済に還元される経済システムに――“ルールある経済社会”を築きます

6、安心して子育てできる社会に。国の責任で総合的な子育て支援を進めます

子育て支援は、仕事と子育ての両立、経済的負担の軽減、「子どもの貧困」の解決など、“子育てがしにくい”という日本社会のあり方への総合的な取り組みが必要です。

(1)子育てと仕事が両立できる社会をめざします

人間らしく働けるルールをつくる……残業規制の強化など長時間労働の是正、育児休業制度の改善、妊娠・出産にともなう不当な解雇や退職勧奨、不利益な扱いをなくす、若い世代に安定した雇用を取り戻すなど、子育てしやすい働き方、賃金・労働時間を保障することが大切です。

待機児解消、保護者の負担軽減に……保育所に入れない待機児は5万人。認可外施設やベビーホテルなどに預けられている子どもや保育所への入所を希望している潜在的な待機児童なども含めると100万人近くになるとされています。待機児童を速やかにゼロにするために、当面一年間で10万人分、3年間で30万人分の保育所を国の責任で整備します。それとともに保育士の待遇改善、保育料の負担軽減などのために、年間4000億円程度の財源を確保し、保育制度を充実させます。建設費あわせて、幼稚園の授業料の負担軽減や、希望者全員が入れる学童保育をめざします。

政府・厚生労働省は保育所の面積や職員配置などの国の最低基準をなくし、都道府県の条例にゆだねる「地方主権」改革で規制緩和をねらっています。保育所に対する市町村の義務をなくして保護者と保育所の「直接『契約』・自己責任」にする、保育料に「応益負担」を導入する仕組みに変えることも検討しています。保育への公的責任を後退させ、負担増や格差をもち込む大改悪を中止させ、公的保育を守り、充実させます。

子ども手当を口実とした庶民への増税に反対する……政府は、子ども手当を理由にして、配偶者控除や扶養控除の廃止による増税をねらっています。生計費非課税の原則を踏みにじる増税には反対します。

(2)子どもの医療費負担軽減を拡充します

小学校入学前までの子どもの医療費制度を国の制度として確立し、そこに自治体独自助成を上乗せできるようにして医療費負担軽減を拡充します。

(3)教育費負担の軽減・無償化をすすめ、子育ての不安をなくします

子どもを持つ上での不安のトップはどの世代も、「経済的負担の増加」です(内閣府調査)。なかでも教育費の負担は重く、高校入学から大学卒業にまでかかる費用は子ども一人当たり平均1007万円、教育費は年収の34%にのぼり、年収200〜400万円の世帯では48.3%に達します(日本政策金融公庫調査)。高校も大学も無償化していくことは、国際人権規約で定められている世界のルールであり、ヨーロッパでは教育費負担がほとんどかからない国が少なくありません。日本共産党は義務教育、専門学校をふくむ全ての段階で教育費の軽減・無償化をすすめます。

高校教育費の無償化をすすめる……今春始まった「高校無償化」をさらに前進させ、私立高校が入学金等の負担が重いことを考慮に入れ、私立高校も無償化をめざします。当面、年収500万円以下の世帯の無償化など、現行制度の拡充をはかります。低所得層への交通費等の支援の制度をつくるとともに、「無償」措置の年限制限などの不合理な制度を是正します。不登校の子どもの学習への公的支援を強めます。国際条約に基づき朝鮮人学校など外国人学校に無償化措置を適用します。

大学の高学費を軽減する……国公立大学の学費を引き下げ、私立大学の授業料負担を減らす「直接助成制度」をつくります。国公私立の区別なく、年収400万円以下の世帯への学費免除を実施する制度をつくります。各種・専門学校へも学費負担軽減をすすめます。国際人権規約(社会権規約)第13条の高校と大学の「学費の段階的無償化」を定めた条項の「留保」を直ちに撤回します。条約加盟国160か国中、この条項を「留保」しているのは日本とマダガスカルだけです。

給付制奨学金の創設など奨学金制度の改革で支援を強める……国の奨学金はすべて無利子に戻すとともに、卒業後の年収が300万円以下の場合に返済を猶予する制度を確立します。滞納者を個人信用情報機関に通報する「ブラックリスト化」を中止します。就学が困難な生徒・学生のため、返済不要の「給付制奨学金」を創設します。給付制奨学金制度がない国は、先進国のなかで、授業料無償のアイスランドを除けば日本だけです。

(4)就学援助や児童扶養手当を拡充し「子どもの貧困」の克服に力をつくします

政府が昨年11月に公表した子どもの相対的貧困率は12.2%、ひとり親家庭では54.3%にもおよびます。国として貧困の実態調査をおこない、当事者や支援団体の協力も得ながら貧困の解決のための体制を整備します。

生活困窮世帯の子どもに給食費・学用品などを援助する「就学援助」は、その役割はますます重要になっています。ところが政府が2005年に準要保護世帯への国庫補助を廃止したために、支給額や基準を切り下げる自治体も増えています。国庫補助を復活し、拡充へと転換します。児童扶養手当の増額、支給基準の拡大をはかります。児童福祉施設の生活と進学保障の充実、児童相談所の体制強化を緊急にすすめます。

III、国民の権利を大切にし、民主主義が花開く社会をめざします

4、すべての子どもの成長発達を支える教育に転換します

どの子どもにも、十分な教育を受けて成長発達する権利があります。そうした教育の保障こそ平和で豊かな社会を築くカギです。ところが日本では、「世界一高い学費」のもとで貧富の差による教育格差が広がり、過度の「競争」や非人間的な「管理」が子どもの成長を歪めています。この異常さは国際機関も厳しく指摘しており、その転換は国民的な課題です。

ところが民主党政権は、全国いっせい学力テストの実質存続、「日の丸・君が代」強制続行など、これまでの教育政策を基本的に引き継いでいます。今春の「高校学費無償化」などの前向きな施策でも、私立高校の重い負担などの新たな格差や矛盾をつくりだしました。これらの大本には、憲法や子どもの権利条約の精神に反した「日本国教育基本法案」を「教育政策の集大成」とする同党の姿勢があります。

私たちは教育格差、「競争」や「管理」などの歪みをただし、子どもたちが「わかった!」と目を輝かす授業、子どもの声をじっくり聞いてあたたかく接する先生――そんな教育が全国どこでも行なわれるようにします。

(1)教育費の負担軽減・無償化をすすめます

憲法は国民に「ひとしく教育を受ける権利」(第26条)を保障し、教育基本法は「すべて国民は…経済的地位…によって、教育上差別されない」(第4条)としています。その立場から、乳幼児教育や義務教育の保護者負担の軽減、高校の私立を含めた無償化・負担軽減、大学や専門学校等の負担軽減をすすめます。(詳しくは、一の6「子育て支援」参照)

(2)教育予算をOECD加盟国並に引き上げ教育条件を整備します

OECD加盟国で最低水準の教育予算を早期に平均(GDP比5%)まで引き上げ、全国共通に保障すべき教育条件を国の予算でしっかり支えます。教職員を増員・正規化し、国の制度として「30人以下学級」を実施します。特別支援教育の改善など条件整備を進めます。「私学の自由」を尊重する立場から、私学助成を増額し、公私間格差を是正します。大学を疲弊させている「基盤的経費」の減額をやめ増額し、基礎研究や若手研究者支援などを拡充します。図書館、社会教育施設を拡充し、専門職員の配置を進めます。

(3)教育の自由と自主性を保障し、子どもの豊かな成長を支えます

上意下達の学校運営をやめ、教職員、子ども、保護者等の参加と共同で学校を運営できるようにします。授業準備もままならない「多忙化」の解消、自主的研修の保障等で教員の力量向上を支えます。充実した授業ができるよう、学習指導要領の法的拘束力をなくし、内容も国民の英知を集めて改めます。教科書の検閲的な検定をやめ、採択に教員や父母の意向を反映させます。基本的人権を大切にする市民道徳の教育を重視します。いじめのもみ消しを根絶し、子どもの命最優先の学校をつくります。子どもの気持ちを無視する「不登校ゼロ」政策をやめ、不登校の子どもの学びと自立を支援します。

(4)競争とふるいわけの教育をあらためます

「点数をあげるため先生が正解を教える」「テスト対策ばかりで授業の質が低下」などの弊害をもたらしている「全国いっせい学力テスト」を中止し、どの子も放置せず全ての子どもに基礎的な学力を保障する体制をつくります。高度に競争的で子どもの成長を歪めている高校や大学の入試制度を改革するため、国民的検討の場を設け、改革に着手します。

(5)憲法と子どもの権利条約に基づいて、教育の制度と法律を刷新します

教員免許更新制、教育活動の数値化など教育の条理に反する制度を見直し・廃止します。硬直化した教育委員会制度を民主的な制度に刷新します。意見表明権など子どもの権利を教育のあらゆる場で保障します。「君が代・日の丸」の強制、侵略戦争の美化の公教育への持ち込みに反対します。教育への国家的統制を進める改悪教育基本法を、憲法と子どもの権利条約に基づいて再改正するための国民的討論を進めます。

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以下は,公明党のマニフェストから教育部分を抜粋。

【公明党2010】=====

教育安心社会の実現

変動の激しいこれからの時代、すべての子どもたちが充実した人生を送ることのできるよう、教育の“ 負担の安心”と“質の安心”に取り組み、「教育安心社会」を実現します。 まず“負担の安心”では、「教育は未来への先行投資」として幼児教育の無償化など、教育費の負担軽減に最優先に取り組みます。また、自然体験学習の拡充、職業教育の充実など、教育の“質の安心”を保証します。

教育費負担の軽減
●少子化対策の充実を図るため、小学校就学前3年間の幼稚園・保育所・認定こども園等の幼児教育の無償化を進めます。
●子どもの豊かな成長、健康の増進、人格形成にプラスとなる食育推進の観点から、公立小学校給食の無償化を実現します。
●高校実質無償化法の成立を受け、従来の奨学金に加えて、入学時に必要な経費などについて、給付型奨学金の創設など低所得世帯の生徒を対象とする修学支援策を行うために要する資金を各都道府県に交付します。

職業教育を学校教育の柱に“若年者雇用問題の早期対応”
●学校教育法を改正し、「職業教育」を目的条項に位置づけます。
●企業の人事担当経験者や多様な職業経験者を一定の研修を経た上で職業進路指導担当(キャリア・カウンセラー=仮称)として認定し、小・中・高の各学校段階に配置します。
●職業教育の充実を図るために、高校や大学において職業体 験学習やインターンシップを単位として認定します。

新卒未就職者対策“大学卒業後3年間は新卒扱いに”
●大学卒業後3年間は在学生と同様に大学の就職支援が受けられるよう、関係省庁の連携による積極的な対策を促しつつ、大学の就職支援機能や体制の強化など環境整備を行います。
●企業側に対して、卒業後3年間は新卒者扱いとなるように、新卒要件の緩和を求めます。

世界で活躍する人材の育成“100万人の留学生を海外派遣”
●グローバル化する社会で活躍する優秀な人材を育成するため、「留学支援プログラム」を策定し、今後10年間で100万人の日本人学生を留学生として海外へ派遣します。
●日本人学生の留学を支援するため、給付型奨学金の導入、奨学金対象枠の大幅な拡大、外国政府等の奨学金による海外留学の円滑実施など、公的留学制度を抜本的に拡充します。

子どもの豊かな心を育む自然 体験学習の拡充
●子どもの豊かな心を育むために、すべての小学生に1週間以上の農山漁村での自然体験学習を実施するなど、「子ども農山漁村プロジェクト」の大幅な拡充に取り組みます。
●子どもの自然体験学習を実施する農山漁村の“地域コミュニティー”の再生を図ります。

文化・芸術、スポーツの振興
文化・芸術は、すべての国民がゆとりと心豊かな生活を実現していく上で、必要不可欠なものです。そして、わが国のこれからの発展を考えるとき、文化・ 芸術の果たす役割は大きなものとして、期待されています。 また、スポーツの振興は、人々の健康増進や活力に満ちた生活の実現、青少年の健全育成、高齢者の生きがいづくり、人々の交流促進など、その果たす役割は、ますます増大しています。
公明党は、文化・芸術とスポーツの振興に積極的に取り組みます。

文化・芸術の振興
●地域の実演芸術(音楽・舞踊・演劇等の舞台芸術)の活性化を図る「劇場法」(仮称) の制定をめざします。
●質の高い展覧会が全国各地域で安定的に行われるよう、展示美術品の損害を国が補償することで海外等からの美術品の借り入れを円滑にする「美術品国家補償制度」を導入します。
●「子どものための優れた舞台芸術体験活動」を拡充し、全ての小中学生の舞台芸術の鑑賞機会を義務教育期間中に3回以上に増やすなど、小中学校における文化芸術教育の一層の推進に取り組みます。

スポーツの振興
●国家戦略として、スポーツに関する施策を総合的かつ計画的に推進するため「スポーツ基本法」の制定をめざします。
●生涯スポーツ社会の構築、国際競技力の向上、スポーツ観戦など、スポーツ振興政策を総合的に進めるため「スポーツ庁」の設置をめざします。
●障がい者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、必要な環境整備を進めるとともに、障がい者スポーツの一層の振興に取り組みます。

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以下は,社民党のマニフェストから教育部分を抜粋。

【社民党2010】=====

再建05 教育 貧困の連鎖を断つ

・学級生徒数は、20人をめざし、当面、30人以下学級の早期完全達成をはかります。
・就学援助の対象を高校までとして充実・強化をはかります。高校入学金・授業料の原則無償化、私学助成の充実により、家庭条件による教育機会の格差を縮小します。高校に進学しない未成年者に対する助成制度を設けます。奨学金は給付型を増やします。
・「改正」教育基本法と、教員免許更新制などを導入する教育3法を抜本的に改正します。
・教育予算を他の先進国並みの対GDP比5%水準に引き上げます。

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以下は,国民新党の政策集より教育部分を抜粋。

【国民新党2010】=====

I 国土・国益を守り抜く 伝統・誇り・価値の継承

1.正しい歴史、文化、道徳の継承
故小渕首相の「富国有徳」の精神に学び、見失われている民族共同体としての核である歴史観を再生し、日本の正しい歴史、言語、伝統文化を教科書でしっかりと教えます。
教育の機会均等の為、高校教育の無償化の継続と奨学金の充実を図ります。また自衛隊、海外青年協力隊、福祉施設などの社会貢献活動への参加を若者に奨励してゆきます。

IV 小泉・竹中改革の抜本的見直し 格差の解消、地域の再生

2.仕送り減税の創設・奨学金制度の拡充
大学等の高等教育機関が偏在している現状、親元を離れて大学等に通学する子等を有する世帯の負担は重く、この事が教育の機会にも影響を及ぼしているとされています。国民新党はこのような子弟を持つ家計を支援することにより、当該世帯の負担の軽減を図り、教育の機会均等と地域全体の活性化を図ります。

4.子育て環境の強化
小泉、竹中改革の中で、就労と子育ての両立に悩む小さな子供を抱えた家庭は長い間、置き去りにされてきました。しかし少子化対策の為にも格差社会の解消の為にも、仕事をしながら安心して子供を育てられるように、子育て環境を一刻も早く整えてゆく必要があります。国民新党は待機児童対策の一層の推進や病児保育の充実など、男性も女性もいきいきと仕事が出来、家族を大切に出来る様な仕組み作りを進めてゆきます。

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以下は,新党改革のマニフェストから教育部分を抜粋。

【新党改革2010】=====

■待機児童対策、少子化対策に効く子ども手当
●民主党の目玉政策として、子ども手当がありますが、そのバラマキ政策の効果は大いに疑問です。月26,000円では、養育費や教育費をまかなうことはできないし、子供のために使われているかを確かめることは出来ません。少子化対策の必要性は論を待ちませんが、子ども手当があるから、子供を作ったという事例はどのくらいいるでしょうか。
●より目の前に差し迫った課題として、待機児童の問題があります。幼稚園や保育が増設されていますが、不況で稼ぎに出るお母さんが増えたこともあり、全く間に合いません。待機児童数は、2007年4月の17,926人から、2009年10月には46,058人まで拡大し ています。
●待機児童解消のための幼稚園・保育園の増設、費用の無料化の検討を通じて、バラマキ政策ではない、少子化対策の再構築を図っていきます。
●議論の結果、子ども手当を残す場合には、1人目は13,000円、2人目は16,000円、3人目は20,000円、4人目は26,000円という形に、子供を多く作るインセンティブを与える制度に改善していきます。

■「詰め込み教育」と中高一貫教育
●優秀だった日本の子どもの学力低下は、「ゆとり教育」に原因があります。現在、「脱ゆとり教育」が進められ、円周率は3.14に戻り、台形の面積の出し方が教えられるようになりました。
●「脱ゆとり教育」をさらに進めて「詰め込み教育」を行い、優秀な日本の子どもを取り戻します。ここで言う「詰め込み教育」とは、子どもの学習進捗に合わせて、現場で柔軟に学習内容を決めることができる教育です。
●現在の教育制度では、各学年で学ぶ内容が定められていて、学習意欲があっても、上の学年の勉強はできません。子どもの学力の伸びを押さえつけてしまっています。「詰め込み」という言葉のイメージはあまり良くありませんが、ここで言っているのは、子どもの要求に合わせて、どんどん学習出来る教育を実現することです。効果的な「詰め込み教育」のため、中高一貫教育制度の導入を進めていきます。

■グリーンツーリズムや環境教育
●日本には、豊かな国土、自然環境、自然と一体となった農村・漁村があります。田舎に行けば、こうした自然が「当然ある」という感覚は、都会に住む人間の無知、あるいは驕りといっても過言ではありません。自然は、田舎の人が長い時間をかけ、丁寧に維持してきました。その重要性を認識するには、自らがその中に飛び込み、自然との共生の大切さ、自然環境保護の難しさを肌で学ぶことが最短です。
●豊かな国土、自然環境、安全な食糧を守るための農林水産業の役割を認識し、日本人が長年にわたって培ってきた環境保全の知恵を受け継ぐため、グリーンツーリズムや環境教育を促進します。そして、国民が地球規模の環境保全に貢献しているという豊かな気持ちを得られる社会に変えていきます。

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未来を選ぼう2009

未来のためのQ&A
http://www.google.co.jp/mirai2009

 米国大統領選挙中やオバマ大統領就任後に市民から意見を集めるため使用した「Open for Questions」というサイトで使用したのがGoogle Moderatorというシステムであったが,これを日本の選挙や政治にも活用しようとオープンしたのが「未来を選ぼう2009」というサイトである。その中のメインの試みが「未来のためのQ&A」で,これらはGoogleがやっている。

 考えてみれば,日本での世論から政治家へ向けた「多対一コミュニケーション」は,これまでマスコミを代理人として機能していたように装ってきた(あとは直接に選挙ぐらいしか手段がない)。とりあえず新聞・テレビの大マスコミが,疑問を投げ掛けそれに政治家が応えることで,市民世論の代表たるマスコミと,市民権力の代表たる政治家が対峙し,チェック機能が働くという前提にあった。

 ところが,もはやそのどちらにも「代表たる」資格や資質が失われつつあり,最悪,お互いが予定調和の中であぐらをかいてしまった。
 そうなってみて,ふと思い返せば,そもそもの主権者たる市民の側は,本当のところどういう考えを持っているのかを,私たちお互い何も知りえていなかったりする。

 少し無謀かも知れないが,直接市民の声を拾い出すシステムを動かしてみるのも,こういう時にはいい試みかも知れない。もちろん意見を述べあうことも大事だが,むしろ「鋭い質問」を出し合うことにこそ,私たちの意見や考えが集約されてくるのではないか。そういう場として「Google Moderator」が提供する「未来のためのQ&A」を考えることが出来る。

 「未来のためのQ&A」の中にある「子育て,教育」の項目には,現時点で270程度の質問が書き込まれ,投票に基づいて順番付けされている。

 大ざっぱだが短く率直な質問あり,詳しく前提を書いて焦点を絞った質問あり,このときとばかりタブーを聞く質問あり,様々な立場から書かれたものが並んでいる。それだけこの分野で問題を放置したのだし,すべての質問がそれなりに大事なのは,おそらく異論はない。問題は,どこから先に取り掛かるかの優先順位である。

 そもそもの日本の国の形のビジョンが必要になる。地方分権に基づいた合衆国的な在り方なのか,もっと国による再配分機能を強化した福祉国家的な在り方なのか。あるいはそれ以外の何かなのか。そこから筋を導かないと,教育だけを無制限に優先することが出来ない以上,何を守って,何は諦めるべきかもハッキリしない。

 とりあえず,こうしたサイトを通して,どんな質問や考えがあるのかを共有するのはよいことだ。

社会保障としての教育

 最近はテレビ東京系列の「ワールド・ビジネス・サテライト(WBS)」くらいしかテレビを見てない。それも録画して翌朝に見るスタイルになっている。ワイドショー化している他のニュース番組を数本見るくらいなら,これ一本で十分だ。

 昨夜は社会保障制度の話が特集されていて「税制の転換点だ」という意見も出されていた。若い現役世代よりも高齢世代に対して手厚い保障体系となっている現状は,配分見直しを議論するなどしていかなければ,日本全体がGMと同じように破綻する危険があるというわけだ。

 少し前には「財政的幼児虐待」という言葉も紹介されたことがある。ローレンス・J・コトリコフとスコット・バーンズが著した『破産する未来』(日本経済新聞社2005:原著2004)で用いられた言葉であるが,日本もこのままでは財政的国民虐待という皮肉な言い換えも冗談では済まされない状況なのかもしれない。

 もちろん日本の税制は,それなりの考えと経緯があって成立している。消費税率を考えてみても,ギリギリのところで国家財政を動かしているのはこの国らしさでもある(残念ながら国のお金の使い方は賢くないけれども…)。

 たとえば昨今話題であったフィンランドは,消費税率が20%前後(消費物によって違う)であり,所得税率も20〜30%(低いわけではなく日本と同程度)という水準である。考えようによってフィンランドでは,国がかなりせしめている。しかし,その分,手厚い社会保障,医療・教育環境の提供をしているので,人々は安心して社会生活できるとされている。ご存知のようにPISA国際学力調査で世界のトップになったのも,この国であった。

 いきなり北欧諸国のような豊かな福祉国家へと転換できるわけではないから,まずは日本という国が破綻しない程度まで現状にふさわしい制度調整を図ることが急務なのだろう。少なくとも育児世帯や低所得者層に対する本腰の保障がなされてしかるべきだ。そのための税制改革の可能性は間近に迫っている。

 ただ,だとするならば,その後,日本という国は再び現状に見合うギリギリラインで国を維持する形でいくのか,それとも北欧諸国のようなあり方を目指すのか,そういう選択に関する議論を始めておくことは大事だろう。

 その際に,社会保障としての教育について,保障意義や内容を明確に提示できるかどうかは,大きく問われてくる。たとえば,保育所の役割に地域への育児アドバイスやサービスの提供といった子育て支援が加えられて久しい。同様なことは,小中学校にも強く要請されてくることになるだろう(管轄省庁が違うからといって油断はできない)。

 果たして,現状の教育職員にそのような地域学習支援のような専門性があるのか,あるいはそのような事業を行うだけの制度的なリソースがあるのかどうか。様々な問題が考えられる。しかし,だからこそ,税制の抜本的な見直しを議論するのと連動して,どのような条件整備を前提としてそれが可能であるのか,議論を深めておく必要がある。

 もし,義務教育段階の学校に地域学習支援という役割が加えられるとしたら,教員養成のみならず,教員を対象とした大学院,教職大学院,教員免許更新講習に対する捉え方に大きな変更を迫ることにもなる。

 日本の教育職員は,グローバル社会の中にある日本という国で生きていく私たちの学習に,生涯伴奏してくれる存在となり得るのかどうか。そして国は,そのための条件整備を実現できるのか,そのための制度に変われるのか。

 教育の世界から見たとき,そのことが大きく問われるのではないかと考える。


ローレンス・コトリコフ/スコット・バーンズ著『破産する未来』(日本経済新聞社2005:原著2004)

35歳の現実

 NHKスペシャルで5月6日に放送(6月6日深夜に再放送)された「あすの日本〜35歳を救え」(番組内容)で行なわれた35歳1万人アンケートの集計グラフを見つけた。

35歳1万人アンケート集計結果
http://www.nhk.or.jp/asupro/koyou/koyou_07.html

 こういう背景があると,今まで以上に「安心・安全」を希求する行動原理が強まるのではないか。本当のところ,そのことをしっかりと捉まえて展開している教育研究は多くないし,全体の共通認識としても十分とは言えないだろう。

 学校教育の現場に対する厳しいまなざしは,玉石混交したまなざしではあるとはいえ,こうした現実に直面した社会から発せられていたのだということを,今一度,教育現場に関わる私たちは肝に銘じなくてはならない。

 

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安心と信頼

 今回のインフルエンザ発生に対する日本と諸外国の一般市民の態度(街でマスクをするしない等の対応の様子)の違いは,山岸俊男氏の著作で語られている「安心社会と信頼社会」の話が実際の形として表われたのではないかと思えます。

 山岸氏が言うことをかなり雑なまま部分的に取り出せば,日本社会というのは「集団主義的に行動することが有利だと考える行動原理の個人」が集まった集団主義的な仕組みをもった社会だとされます。一方で,アメリカ社会などは普遍主義的な社会の仕組みと行動原理による社会だといいます。

 つまり,日本人はもともと個人主義的で,安心を確保するために集団主義的な行動を選択しているにすぎないというのです。そのため,アメリカ社会と比べると他者への信頼度が低いという結果もあるそうです。

 こうした社会心理学の知見を,もう少し前面に出して物事を論じられないかなと,いろいろ考えを巡らせていたのですが,なかなか良い事例と結び付けられずにいました。

 今回のインフルエンザに対する反応も,良い例とはいえないかも知れませんが,ひとまずの安心を確保したいがためにマスクを買いに走る利己的行動から集団主義的現象を起こした日本人に対して,そもそも普通のインフルエンザと変わらないじゃんと普遍的な見地から考えてほとんどマスクをしなかった海外の人々の行動という風に眺めると,山岸氏の主張を適用できるような気がします。

 海外へ行ったら誰もマスクをつけておらず,恥ずかしいから(損だから)マスクを外してしまう日本人という話題も,そんな行動原理を裏付けるかのようなお話です。

 実は,この問題を情報モラルの分野で考えたらどうなるだろうかと,ずっとこね繰り回していたのです。

 もし私たちが安心を確保することを最優先に考える個人主義的な行動原理を温存したまま情報モラルを教えたら,そのような情報モラル教育は,本当に機能し得るのかどうか。

 つまり,この調子のままだと,表面的な分かりやすい「安心」もしくは「安全」の確保を満たした途端,私たちの情報モラルは停止を引き起こして,その先にあるワナに対して対応できなくなるのではないか。

 もしそうだとしたら,実は,日本人に特有の行動原理を踏まえた形での情報モラル教育というものが必要なのではないか。私はそういう風に考えているのです。

 事実,様々な調査で明らかになっているのは,子どもたちの信頼基準の狭さや浅さにあります。

 「友達がやっているから」「周りがそうだから」「兄弟に教えてもらった」など,子どもたちの言葉を拾うと,とりあえず安心や安全を保障してくれる存在が登場すると,それが信頼に足るのかどうかの問いは省かれて出てきません。

 このような行動あるいは思考原理の日本人に対して,どのように情報モラルを効果的に学ばせるのか。そのための教育内容と方法,つまりカリキュラムを考えることが重要になります。

 私も調査にお手伝いさせていただいた「子どものICT利用実態調査」の報告書が出ました。そこで,デジタルネイティブなどのキーワードを使って学校教育がとるべき対応を書きました。

 私にしては珍しく,携帯電話などの情報機器がもっと学校に入って教育が展開しなければならないといった「イケイケ・ドンドン」的な原稿ですが,その先で考えたかったことは,日本人特有の情報モラル教育の問題なのです。

 ある程度の限度を設定した上で,もっと情報機器や情報環境が学校に入り込まないと,学校という場所で情報モラルを扱うということは,たぶん変な乖離を抱えたままになります。とりあえず形はやっているんだけど,いまいち子どもたちの実感がついてこないという風なことが続くでしょう。

 とはいえ,そう指摘する私自身も,この問題をどう解決すべきかは暗中模索をしている段階です。まずは,もう一度私たち自身や子どもたち自身を知ることから始めなくてはならないだろうなと考え,調べものをしているところです。

山岸俊男(1998)『信頼の構造』東京大学出版会
山岸俊男(1999)『安心社会から信頼社会へ』中公新書
山岸俊男(2002)『心でっかちな日本人―集団主義文化という幻想』日本経済新聞社
山岸俊男(2008)『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』集英社
Benesse教育研究開発センター(2009)『子どものICT利用実態調査・報告書

伊吹氏留任

 安倍新内閣の文部科学大臣には誰がなるのか,まったく予想も出来ずにいたら,伊吹文明氏が留任。大臣がコロコロ変わるのはどうかと思うし,あの千両役者をそのまま手放す手はないから,ホッとした。
 国家による教育の統制には二面性がある。この国の教育を下支えするという点において文部科学省の頑張りに期待したいが,地方の現実を尊重するためには地方自治にも権限をゆだねて欲しい。バランスの問題である以上,丁寧な議論と施策の実行が必要なんだと考える。
 教職員の増員を目指すのは(非常勤に頼っている現実を是正する意味においても)よいことだと思う。「主幹教員その他を増やす」という言葉に一抹の不安はあるし,このあいだ義務教育費国庫負担金が減らされたばっかりなのに(地方の負担を考えると)大丈夫かなという気もする。概算要求の段階だから,厳しく言っても仕方ないけど。
 どうやってお金を使えば効果的なのか。逆に,これにお金を払ってくれれば現場を支えられるというものを創り出していくことが大事なのかなと思う。少し,この感覚で自分の研究も考えてみよう。

教育基本法改正案,特別委可決

 教育基本法改正案が,特別委員会での審議は尽くされたとの与党の見解で採決され,与党のみで可決した。野党は欠席。数の論理で突き進むのが政治とはいえ,このご時世に極めて非教育的なやり方を見せつけながら決まっていく教育基本法改正に,若い世代は何を思うのだろうか。
 「審議は100時間を超えた」から採決しようだなんて,森精機の100時間運転試験じゃないんだから,もう少し気の利いた理屈を考えてほしいものだ。結局,この土俵の上では,どんなに審議の必要なネタを引っ張り出しても,100時間経てば審議はどうあろうと多数決で決めてしまえという結末があることになる。「やらせ質問」(一時期マスコミは自分たちの悪行を思い出すから「やらせ」を嫌って「仕込み」と呼んだ時期があったなぁ)の方がまだいくらも善意を感じられるくらいだ。
 教育基本法が愛国心を高らかにうたおうと,それ自体は問題じゃない。教育行政に関する記述や国民から引っぺがされた直接の責任の消失によって,教育基本法は私たちを教育の主体から教育の消費者へと追いやってしまうことになる。
 だから,たぶん,教育基本法改正は,このご時世の多くの人たちにとって問題じゃないのだ。とりあえずお給料をもらって,とりあえず日々の生活ができている,本当にこの国のマジョリティには,何でもない話なのだ。ただこれから衆院や参院で繰り広げられる大根芝居を眺めるためのネタに過ぎないのだと思う。そうやって,次は日本国憲法改正で盛り上がるだけ。
 これは未来への大いなる「いじめ」なのだということを,その芝居に立つ人々が誰も考えないことに危惧を抱く。
 私は思うのだ。もし教育基本法を改正することで,日本の文教予算を一気に世界水準,いや世界トップに引き上げる準備に取りかかってくれるというなら,私は自分の個人的信条がどうかはともかくとして大賛成してあげる。
 もし改正することで,教員養成と教員の自己研修に対する努力に対して手厚い補助や条件確保をしてくれるというならば,毎年改正されたっていい。子ども達が通う学校が,社会の中で最も勉強に適した建物や設備を備えるように各種の法律や予算を優遇してくれるというならば,税金が高くったって納得する。
 教育基本法の改正は,そういう約束に値する,あるいはそれを期待するに値する出来事なのか。そのことが一番気がかりなのである。そして,分かり切ったことではあるが,そんなことはあり得ないということ。そのことがすべて一般の人々にも見通せた上で,政治家は茶番を演じているということに,ため息をつかざるを得ないのである。
 こんな世界のために死んではいけない。大根役者達よりたった一日だけでも長く生きて,笑ってやるべきだ。

教育再生会議2.0

 ハワイでてんやわんや過しているうちに,日本では「教育再生会議」が総理官邸で初会合を持ったという。17人の委員の顔ぶれについて,各メディアはいろいろ報じている。珍しいほどの報道量だ。
 安倍内閣の組閣時もそうだったが,今回の人選についても,各メディアのいうところでは,方向性がはっきりしないとか,各方面に気を遣った結果だとか,バランスはいいが意見集約は難しそうだとか,評価はいろいろ。つまり「こんなんで美しい国なんて実現できるのか?」という素朴な疑問を提示している。
 ただ,思うにこれこそが日本元来の「根回し文化」や「気遣い文化」というものの結果である。こうした各方面のことを気にする少々弱腰ともとれる周囲への配慮が現代の人々に欠けているのだ,という首相の強いメッセージかも知れない。
 もっともそんな皮肉を言えば済む時代でなくなったのが悲しいところ。これだけの報道量に象徴されるように,人々は教育の分野にもある種のサプライズを期待し,カタルシスを得ようとしている。そもそもそんな状況の中で教育の再生を議論していくためには,教育再生会議からの情報発信に,ある種の戦略がなければならないことを意味している。
 教育再生会議が成功するために,会議がもたらさなければならないものは何だろうか。
・大衆のカタルシスの実現
 →これは避けて通れない。教育再生という本筋とはかけ離れたこととはいえ,何かしらのインパクトは必要になっているのがこのご時世である。まして教育を死んだと表現するなら,永続的にマッサージするか,瞬間的にショックを加えるか,これらを組み合わせるしか方法がない。
・論点の切り捨てと焦点化
 →早いうちに話題に上っている様々な主題に優先順位をつけて整理して,多くをばっさり切り捨てるべきである。その場合には,GTDという仕事術が参考になる(→はじめてのGTD)。教育に関して国がやらなければならない事柄を全て書き出して,出来ることの中からやるべきことを実行するということだ。書き出す際には,あれもこれもという事態になるが,実はすでに教育行政が手をつけて動かしているものの中にも大事なものがあることが分かったり,それを徹底化することで教育の再生に繋がるものも見つけられるかも知れない。
 つまり単に真新しいものでビックリさせるのではなくて,これまでの地道な努力をグッと拾い上げて主役にしてしまうような,そんな焦点化もあり得る。そうすることで,「また勝手なことを17人が語って,結論も新しいことブチ上げた割りには,妥協の産物で終わる」というおおよその人々が抱く予想を良い意味で裏切ることができるかも知れない。
 いずれにしろアウトプットはシンプルでなければならない。17個も提案したいつぞやの会議は多すぎた。ん?17は不吉な数字だ。3つでも多いくらいである。数打ちゃ実現するやり方は逆効果だ。
・条件整備の基本に戻る
 →前項とも関係するが,国が出来ることは条件整備である,という基本に戻った方がいい。高い学力とか規範意識とかを議論することには抑制的でありたい。所詮17人のそれをいくら組み合わせても国民が納得するものは無理。委員の中に小泉前首相ほどの劇場役者がいるなら,その人の考えで魅了させることも可能かも知れないが,さてどうか。ワタミの社長さんはメディア受けがいいけど,教育議論との相性がいいかどうかは今のところ分からない。
 とにかく,条件整備。ただし,教育基本法改正はまた別格のこと。教員免許更新制の実現は,教育再生会議前からの既定事項であるから,いまさらそれを会議の議題にされても何も有り難くない。教員養成機関や教師教育・研修に関連する事柄にバーンと予算措置を約束してくれた方がいい。更新制でダメ教師を切り落とすなら,どんどん良い教師も養成していくという循環システムを確立するくらいの覚悟でやってくれなきゃ,これもまた何も変えられない。(個人的には義務教育費全額国庫負担なんかのサプライズも悪くないかなと思う。でも年金もらう団塊の世代には嬉しくないか…。)
 ここでたくさん書いても墓穴を掘るだけだし,書いているとハワイの夜も明けて,私は帰国のためチェックアウトしなければならないので,ここまで。もちろん私は勝算があって書いているわけではないのはいつもの通り。けれども,たぶん,うまくいくためには,マスコミ・メディアの人達をうまく操って,何か良い循環が始まることを印象づけていかなくてはならない。
 この駄文で書きたかったことは,困ったこととはいえ,人々が空気によって左右されているということ。教育再生会議はその空気を相手にしており,うまく流れを作っていくことが使命なのである。だとすれば,個々の委員が勝手なことを言っているという現在地点は決して悪くない。むしろ,会議の空気が良い空気に変わる過程そのものに,人々を巻き込んでいくという戦略が必要なのである。だからこそマスコミ・メディア,もしくはインターネットはそこをつなぐ大事な存在であり,パートナーとしてうまく協調していかなくてはならない。もしもそれを「2.0」と呼びたければ,「教育再生会議2.0」目指してみればいいと思うのである。まあ,自分で呼んじゃいけないんだけどね。

中山文科相問題

 あまり詳しく書いている余裕はないが,中山成彬・文部科学相の発言が繰り返し物議を醸している件。スクール・ミーティングといった発言の場所や機会が増えたことなども要因となって,不必要な発言をしてしまいがちなのかな,とは察するが,それにしても確かに大臣として自分の発言にもっと注意を払うべきであるとも思う。
 だから,インターネット上でもあちこちで,中山文科相の問題が取り上げられているし,辞任要求についても動きがある。うちのブログの一部も中山文科相に関する検索に引っかかるようだ。
 あともう一回くらい大きめの地雷を踏んだら,文科相辞任が現実になるかも知れない。もっとも内閣は別のことで大忙しだから,それが済むまでは無視されて過ぎちゃうような気もする。とにかく,中山文科相は発言に気をつけて欲しいものだ。こうなってみて,如何に遠山敦子・前文科相が(地味で評判今ひとつだったけど)堅実な人だったかがわかってくる。やはり男は女よりも幼いということなのか。