月別アーカイブ: 2005年10月

布貼バインダー

 久しぶりに布貼りバインダーを買った。布貼りバインダーには特別な思い入れがある。その不易なデザインに安心感を感じていることもそうだが,私が学部時代にとり続けてきた講義ノートを今も実家で大事に守っているのが布貼りバインダーなのである。
 浪人時代と学部時代に,私はルーズリーフを使ってノートをとっていた。それを閉じるのはたまたま購入した無印良品のバインダー。これも無地の茶色いシンプルなバインダーで,日々の講義の内容はそこへ取り込まれていった。
 学部時代は講義をノートにまとめるのが楽しかった。大いなる世間知らずであった私は,大学の講義で接するものが新鮮で仕方なかったし,その雑多な学問の破片を書き留めるためにルーズリーフを使ってどんどん記録していたが,そうやって自分なりにつくったノートを眺めるのも好きだった。たまに学部時代のノートを覗くと,そのときの楽しさがよみがえるときがある。
 要するに,私は小中高校と大した勉強をしなかった分だけ基本的な知識が欠けてはいたが,その後運良く入った大学の教養部で受けた講義で展開していた思考を巡らす学問世界に魅了されたのであった。そして,その出会いや思いの記録を保管しているのが布貼りバインダーというわけである。

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ポッドキャスティング時代

教育らくがき・試験Podcasting(3.4MB)
 連日,ポッドキャスティング(Podcasting)に関するニュースが飛び込んでくる。ポッドキャスティング関連の情報発信をしている「Podcast Now!」を眺めていると,ポッドキャスティングの教育利用に関する情報が賑やかだ。東大のTREEプロジェクトの記事にもポッドキャスティングの動向が取り上げられている。
 とりあえず,この手のテクノロジーを採用しやすい高等教育における試みが先陣を切っているが,生涯教育にも生かせることは言うまでもないから,今後続々とポッドキャスティングを利用した学習教材が出てくるだろう。特に団塊の世代が引退を迎える時代において,自己実現のための生涯学習分野は消費市場としても有望視されている。ポッドキャスティングは,必ずしもiPodを利用する必要はないので,使いやすい機器やソフトウェアなどが今後も登場すれば,確実にポピュラーな教育ツールとなるだろう。

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入試の季節

・この土日は入学試験日。個人面接を次から次へと。休みがなくなると授業準備のペースが狂うのが面倒。
・『文部科学時報』に大学教員組織と短期大学士の特集。読んでおかなくては。
・この間の旅費を振り込んだら,またスッカラカンになってしまった。働けど働けど暮らし楽にならず?
・寒くなってきた。

コミュニケーションの歯車

 雑多なリサーチをする中で,たまにインタビューのムービー(動画ファイル)をインターネットからダウンロードしてみる機会がある。誰かが誰かに,あるテーマについてインタビューするといった内容だ。そんなインタビューのやりとりを眺めると不思議な感覚に陥る。
 インタビューするのは難しい。インタビュー取材をするに当たって,ある程度相手の情報を仕入れて,知識を持っておかなくてはならない。対象者が本を書いていれば,代表的な著書は読んでおかなくてはならないし,すべての著作物を把握しておくのは当然といった考え方もある。少なくともまったく相手についてゼロ知識で会うことは滅多にない。
 ところが,それでいてインタビューの内容はゼロから問うような場合がある。あらためて相手の基本情報を相手に語らせるようなことや,仕事の紹介をさせるといった演出をすることがある。インタビュー自体を見る人たちのために,それが大事な手続きになるからだ。文脈を提示しないと,肝心の議論や内容の理解が得られないこともあるからだ。
 そんな基本的なことは重々承知の上で,私はインタビュー映像を見て思ってしまった。「なんで基本的で分かりきった事柄を,まるで本題のごとくに丁寧に語っているのだろうか」と。そして,自分のコミュニケーション歯車が,ひとりで空回りしていることに気づき,また気分が落ち込んでしまうのだ。

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逃げ場のつくり方

 午前中に自宅で仕事をしてから,昼過ぎの遅い出勤をした。昼過ぎの地下鉄は,おじさんおばさんがメイン乗客のはずだが,この日は試験期間で早くに終わったのであろうか,中高生たちが賑やかに乗り込んできた。
 私の隣りに2人分の空席があったので,中学生(もしかしたら高校生か?)と思われる女子が2人座った。2人楽しくおしゃべりしながら,私の隣りに座った女子がお菓子の袋を取り出して一生懸命開けようとする。「え〜!」と心で思って,止めようかと思ったところで封が開いてしまった。間髪入れずにもう1人も菓子袋を開けて見せた。
 地下鉄車内でパクパクとお菓子を食べ出した女子2人。その姿はまるで自分の部屋にいるような調子で,スカートに落ちた破片や手についたカスを車内の床に払い落としたりしている。
 「おいおい,おまえら」と心で思ってみたが,さて,どうしようか。たまに睨みつけてみたりもするが,全然認識されていない。周囲は女子2人に対して完全無視モードだ。この状況が嫌い。

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ビデオPodcastと新iMac

 本日の「視聴覚教育メディア論」の講義で,テレビとビデオの歴史を語った。最新動向として,先日発売されたばかりの動画再生機能付きiPodの紹介を熱っぽく語ったら,学生から「なんだか,話し方でアップルが大好きな印象を受けたのですが」と鋭いコメント。バレバレでした。
 先日発表された新iPodと新iMac。教育らくがきのアップル好きはすでに周知の事実だが,それにしたって今回の新製品がモバイル・ラーニング分野に与える影響は大きいと思う。米国では,人気テレビドラマを過去のものはもちろん最新放映分も放送後翌日に購入できるといったサプライズ発表もあった。
 しかし,何よりもPodcastの世界に「ビデオPodcast」が加わるということが,一番のニュースである。つまり,自分で短いビデオクリップを制作して,ブログに定期的にアップすれば,それは個人ビデオ放送局になるということだ。
 このビデオPodcastの可能性は,従来のPodcast(ここではラジオPodcastとしよう)よりも広い。これまでのラジオPodcastは音声のみである点で,ある意味個人制作が難しい代物だった。え?音声だけだから楽なのではないか?とお思いかも知れないが,実は表現手段が制限されている分だけ,センスや技能が必要なのだ。簡単だと思う人たちや現在制作している人たちは,そういうセンスや素養を持っている人たちというだけである。
 逆にビデオPodcastになると,ずいぶんと敷居が低くなる。というのも,ビデオカメラの普及と活用のされ方を考えると,結構な素材がすでにあちこちで眠っている可能性があるからだ。アップルが用意していたiMovieというソフトは,そうした眠っているビデオ素材を掘り起こすソフトであった。そしてこれまではDVDに焼いて楽しもうというアプローチだったのである。しかし,ようやく新たな楽しみ方として動画対応iPodが登場した。

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米国学校視察を終えて

 長い時間をかけて地球の裏側に出かけた米国フロリダ州での学校視察も,無事日本に帰国したことで幕を閉じた。これから視察の内容を見直して,報告書をまとめる作業に移る。視察時間は短かったし,プライバシーの観点から記録制限されたが,おおよそのストーリーを組み立てるのに必要な情報は得られたように思う。追加質問はメールでお願いすることにしよう。
 今回の視察はThinking Mapsというビジュアル・ティーチング・ツールを活用している学校を対象としたものだった。その目的は,思考力育成の取り組みを概観するためである。実際,思考力向上の成果として社会科と作文の成績が目に見えて上がっているという。そして,痛感したことは,米国と日本の「道具観」の違いだった。
 Thinking Mapsというプログラムには様々なノウハウが盛り込まれてはいるが,それを使っている現場自体は一つの効果あるツール(道具)として割り切って使い倒しているだけ。もちろん必要なければ使わない。かなり単純に見れば,それだけなのだ。その割り切り方のなんと「あっさり」したことか。かつ,とても効果のあるツールとして信頼を寄せている。
 日本だとこうはいかない。何か道具を使うと「楽をした」という印象が先に立ってしまう。道具としての「手軽さ」の重要性は「短小軽薄」を得意とするものづくり大国・日本なのだから理解しているはずだが,こと教育界では「苦労なくして成果なし」みたいなスポ根観が支配しており,道具の活用が不自然なくらい下手なのだ。

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帰路のデトロイトにて

 あっという間にエンディングである。学校視察も終え,当初予定していた他州の学校視察はなくなったので,これから帰国するところ。長いような短いようなアメリカ滞在も,大阪行きの便に乗れば終わりを迎える。
 学校の視察先は,紹介されたわけではなく,日本で有名というわけでもなく,リゾート地のど真ん中にあるとも知らず,ネットの検索でたまたま見つけた学校だった。学校のWebサイトからも取り組みへの積極性が感じられたことから,候補に挙げた次第である。日本ではほとんど知られていないというか,ごく普通に日々を送っていた学校に突然コンタクトをとったというわけで,結果的に新規開拓したことになる。それもこれも今回助手を買って出てくれたT君のおかげだ。感謝感謝。
 学校視察が終わってからのフロリダは雨模様。リゾート気分を満喫するには残念な天気ではあったけれども,十分すぎるほど観光もした。罰が当たりそうだが,日頃の努力に対するラッキーなご褒美だと思えばいいか。

ケネディ宇宙センター

 学校視察が一段落ついて,さてどうしようか思案した結果,ケネディ宇宙センターへと出かけることにした。もっとも,出かけるのが遅くなってしまい,到着したときには閉館の1時間前。それでもハイウェイを走ってわざわざやってきたので,ビジターセンター周辺だけでも見学することにした。
 「ケネディ宇宙センターへ出かけることにした」なんて簡単に書いているが,まさに宇宙開発の第一線。アメリカの宇宙開発プログラムが進行している,その本拠地に行くのである。それは少年の日の夢であり,夢から覚めたような今でも,ある種の感慨を持って訪れないわけにはいかない。
Img_3324_1 延々と続く道路を走り続けると,やがて大きな川へと差し掛かり,左手前方彼方に有名なシャトル建設ビルが見えてきた。一気に気分が高揚する。さらに走って,私たちの車はVisitor Complexという場所に到着した。そこにはビジターセンターと宇宙開発に関する展示施設がある。本来ならば,2時頃が最終出発のバスツアーに参加して,広大な範囲に散らばる宇宙開発施設を見学することができるのだが,閉館間際なので割引チケットでビジターセンターの入館だけ。
 それでも本物の宇宙飛行士によるトークショーや歴代ロケットやスペースシャトルの実物大展示など見ることができた。先日の駄文にも書いたように,スペース・サイエンスの社会教育についてNASAは積極的であり,この場所はその中枢。NASAの6大事業の一つとしても「教育」はしっかりと掲げられている。少しばかりそんなことを気にしながら,宇宙センターを楽しんだ。

学校視察

Img_3304_1 アメリカ・フロリダ州のオーランドにて学校視察。訪れたのはShenandoah Elementary Schoolという小学校。校長先生のJanice Weemsは突然コンタクトをとってきた男二人を快く歓迎してくれた。「どうしてこの学校を視察することになったの?」と聞かれて,私はたどたどしい英語で「インターネットを検索したら出てきたんです」と答え,視察の始まりとなった。
 詳細はまた後日書きまとめたいが,Thinking Mapというツールを教育現場の至る所に活用して,社会科やリーディングの成績が上昇したという成果を上げている学校だ。ツール自体の概要はWebサイトでも紹介されているのだが,実際の学校現場でどのように活用されているのかを知るために視察となったわけである。
Img_3313 学校見学は,午前中に終わった。もう少しかかるかと思ったが,実際の導入も活用も意外とシンプルだったこともある。もう少し細かいところも突っ込んで調べられないか,あれこれ思案もしてみているが,いまのところ大まかな実践が見られたところでそれ以上のものを引き出すには場面を変える必要がありそうだった。
 それに実は,プライバシーやコピーライツの問題もあって,少々材料集めに難儀したこともある。調査の方法もいろいろ考えなければならないなぁ。