月別アーカイブ: 2007年3月

意図的な欺き

 すっかり政治に取り囲まれた教育問題が,様々な意図的欺き(ミスディレクション)によって,誰かに都合のよい方向へと持って行かれている。
 教育基本法のときには目立った抗議活動も,教育関連3法案にフェーズが移ってしまうと,シンボリックさに欠けるためか,静かなものである。
 4月に行なわれる学力テストについて,すべてがあらかじめ描かれたシナリオに基づき仕組まれた90億円の茶番劇だと批判する週刊誌記事が掲載されたりしている。

 ここ数日の自分の浅はかさに誘われて,柏端達也『自己欺瞞と自己犠牲』(勁草書房2007.2/3000円+税)という本を手にした。久し振りにお堅い本(でも入門書)を読み始めたところ。
 まだご紹介するほど読めてもいないが,ちょっと先を覗くと「信念の論理と高階の自己欺瞞」といった議論が展開しているところなんかは興味深い。
 実社会は「コレとコレは別!」だなんて奇麗事を許してくれたり,温かく見守ってくれるほど優しくないので,自分自身の自己欺瞞的な部分にひとり悩むことも多くなる。
 無限退行していくような思考に,私なんかすぐ疲れちゃうところがあるので,もう「私が悪うございました」と素直に負けを認めることも多くなったが,それでもどこかで永続する自己欺瞞な部分に人生終始苛まれるのだろう。
 そうなのよ。いつまでも気持ちは若い若いと自分を欺いてちゃいけないのね。世代規範ではなく年齢規範に則って振る舞いを慎まなければならなかったのだ。元気なのは結構だけど,出来るだけ控えめにしましょう。
 またごめんね,裏方に徹するの忘れて…。

 さて,明日も会議やらセミナーに参加。頑張っていきましょ。

米国から熱海へ

 米国出張から帰国したその足で春合宿に参加。そしてようやく帰宅した。これで3ヶ月続いた海外出張などのお出かけ系予定に一区切り着いたことになる。本当に疲れた。
 世界中の人々がガヤガヤと意見交換した洋の世界から,いきなり温泉と畳部屋で雑魚寝するような和の世界に,ロクな睡眠もなく移行した。

 コミュニケーションの難しさを思う。人と関係していくというのは痛みを伴うこともあるものだが,その場その場に落としどころがないと耐えられない人々の中に生きていることも思い知る。経験は何かの役に立つどころか,むしろ問題を複雑にする。もう独りじゃないということを自覚しなければならない。浅はかなのは,常に自分なのだ。

 春合宿は遅刻をしてしまったが,ぎりぎり夕食にたどり着き,苦く楽しい一夜と貴重な学習会を過ごした。初めてWiiのゲームをプレイした。ゲームマシンは早くに卒業したつもりだったので,久し振りだったが,多人数で遊べるところがとても楽しかった。あとは夜通し飲んで話などしていた,様々なことを。
 学習会は大学院での研究活動をどう進めていくかについて情報提供があった。分野も違えば,時代も違う学術作法の話を改めて聞くと,大いなる不安も襲い,また早め早めの取り組みが大事なことを感じる。
 私にとっては,研究者免許更新制度のもとで,研究者として生きるか,別の生き方に進むか,ハッキリさせる機会のようなものだ。「教育に貢献」する生き方は他にも無数にある。それを見極める2年間にしたい。

 さてと,さっそく明日からあれこれ用件を片付けなくては。

Intel Teach ((米国渡航記06))

 インテル社が行なっている社会貢献事業であるインテル教育支援プログラム「インテル・エデュケーション」(Intel Education)が主催するカリキュラム・ラウンド・テーブル(Curriculum Round Table; CRT)に来ている。このCRTで主に扱われているのは,いくつかある教育支援の中でも「教員研修(専門能力開発)」である。
 インテルが提供する教員研修プログラムは「インテル・ティーチ」(Intel Teach)と呼ばれている。子ども達に21世紀型スキルを身につけさせられるような教育実践・授業づくりが成せる教員能力の研修を目指したものである。特にこの時代においてICTの活用は不可欠であり,インテル・ティーチもその点を重視したものとなっている。

 オリジナルの米国版インテル・ティーチは,いくつものプログラムに分かれている。ちなみに今回,大幅なバージョンアップが行なわれた。
ITC先生向け
 Skills for Success Course
一般の先生向け
 Getting Started Course
 Essentials Course v10 (F2F)
 Essentials Online Course (Hybrid F2F & online)
 Thinking with Technology Course v2
 Advanced Online Course
管理職向け
 Leadership Forum
 もちろん米国版は各国版にローカライズされることを前提としているが,必ずしも全てが各国で採用されているわけではなく,各国事情に合わせてプログラムが選択的にローカライズされ採用されている。
 CRTは,これらのプログラムに関する更新情報を提供し,プログラム全体のマーケティングや評価に関する情報も提供する。各国の担当者や関係者は,それらの情報をもとに,各国のニーズを明確化した上で必要なプログラムのローカライズを検討し,実現するというわけである。
 ちなみに現在日本で展開しているには「Essentials Course(旧バージョン)」のみ。基本的には教育委員会単位での申し込み制を取っているのが現状である。

 もしもあなたがインテル・ティーチなるものに興味を持ったら,まずは自分のところで教員研修事業を担当している教育委員会もしくは教育センターに問い合わせて,インテル・ティーチ・プログラムを導入しているかどうかを確認することから始めることになる。
 つまり,インテル社は直接に研修会を催してはいない。あくまでも研修の中身を提供するという形で教育現場への貢献を行なっているわけである。そのため,教育委員会や教育センターなどに在籍する指導主事が,インテル・ティーチについて知った上で,研修のアウトソーシングを求めなければ,インテル・ティーチが現場の先生方に届けられる機会はないということになる。
 実際のところ,インテル・ティーチが導入されている例は少ない。全世界の中で,日本のインテル・ティーチ活用度は低水準にある。日本におけるインテル・ティーチ自体の認知度が十分でないということもあるかもしれないが,日本は教員研修プログラムが様々な形で義務づけられ自前で用意してきた歴史があるため,外部にアウトソーシングするという発想が弱いのである。

 しかし,ご存知のように教員の質の向上が叫ばれ,教員免許更新制度,教職大学院といったものの動きも慌ただしくなってきている。教員研修の強化は,時代の流れとして重視され始めている。
 そうなれば,研修内容の多様化に伴って民間研修プログラムの採用も検討せざるを得なくなる(すべてを自前で用意するには限界があるため)。当然,有償/無償,各分野向けに特化したものなど,様々な選択肢を如何に有効活用するかが教育委員会や教育センターにとって重要課題になるはずである。
 そうした時代のニーズにおいて,民間企業の社会貢献活動として無償で提供されるインテル・ティーチのようなプログラムは,大変有り難く貴重な存在である。それゆえ,このプログラムが世界中の国々で,政府レベルとの連携を得ながら展開している事実は不思議なことでも何でもない。
 むしろ,有効活用していないのは,日本くらいなものだというのが,逆の意味で目立っているのである。

 今回,インテル・ティーチ・プログラムが新しいバージョンになったことを機に,各国でのローカライズ作業が始まり,新たな段階に進むことになる。日本チームも,日本での活用度が上がるよう,普及の戦略を立てて臨むことになる。是非,関心を持っていただきたい。

びっしり ((米国渡航記05))

 いやはや,駄文を書く暇もないくらい。スケジュールがびっしり詰まっている。そのうえ,前半は頭痛と時差ぼけの眠気で大変な苦労をしていた。完璧にお仕事モードである。
 インテル教育支援プログラムのCurriculum Round Tableに来ている。世界40カ国から120名程度の関係者が集まり,新しい教員研修プログラムの内容を共有し,実施するための具体的な計画を考える。
 盛りだくさんのプログラムを一週間足らずで伝達し,それぞれの国の実情に照らして意見交換を行なったりするのだから,そりゃ時間がいくらあっても足りない。

 けれども,どの国の人々も真剣である。「世界で通用する教師」の育成を目指す各国の最前線にいる人々である。日本の教員世界をもっと国際社会に通じたオープンなものにしないと取り残されて完全に孤立してしまうという危機感が襲う。
 また少しずつどんなプログラムがあるのかをご紹介していくことにしよう。

Intel Education Curriculum Round Table始まる ((米国渡航記04))

 米国オレゴン州ポートランドにあるホテルを会場に,Intel Education主催のCurriculum Round Tableがスタートした。少々頭痛を残しながら,私も初めて参加することになった。
 今回の主役であるIntel Education(インテル教育支援プログラム)については先日も軽くご紹介したが,まだまだ一般的な認知や教育関係者へのアピールも足りなさそうなので,繰り返しご紹介する必要がありそうだ。
 もっとも百聞は一見にしかずだから,インテル教育支援プログラムWebサイトをご覧いただいた方がいい。最近リニューアルして,以前よりも見やすくなった。

 民間企業が社会貢献活動をすることは目新しいことではなくなっが,日本ではまだ当たり前という域には達していない。海外を見ると社会貢献活動によって税制上の優遇を得られるといった状況があるので,様々な社会貢献活動が展開しているようだ。
 インテル社のようなグローバル企業になれば,社会貢献活動の規模も一国に限らず全世界を対象としたものになっている。世界には支援を必要としている国が多いが,こうしたグローバル企業による社会貢献活動は,いよいよその必要性が高まっているというわけである。
 そして,おそらく,どんな国においても「教育」の重要性は高い。社会貢献活動の一環として教育支援プログラムを推進するインテル社の取り組みは,国際社会が将来にわたって協働する基盤をつくるという意味でも,大変注目すべきものだといえる。

 日本でもインテル教育支援プログラムは展開している。しかし,残念ながらそのようなプログラムを活用するという土壌が日本では育っていないため,馴染みが薄いのも事実だと思う。
 教育支援プログラムにはいくつか種類があるが,近年力を入れているのは「教員研修」(英語ではプロフェッショナル・デベロップメントになり,専門能力開発という翻訳になってしまう場合もある)の分野である。ICTを活用した授業の開発が出来るよう授業づくりを学ぶコースが用意されている。
 インテル社は教育の専門家に依頼して授業づくり研修プログラムを開発してもらい,それを全世界に提供するという支援活動を行なっているわけだ。だから,教員研修プログラムの中身は,教育学的な知見に基づいたものと考えていい。
 21世紀型スキル(その詳細な定義はさておき)を子ども達に身につけさせる授業をつくる能力は,今後の教員にとって大変重要な能力であり,それを見据えたインテル教員研修プログラムは,各国から支持されている。

 インテルの教員研修プログラムは,毎年バージョンアップを続けているらしい。そしてその新しいバージョンを世界各国の関係者に披露し,様々なフィードバックを得たり,各国への翻訳に必要な情報交換をする場が,Curriculum Round Tableという,今回私が参加している会議である。
 今年はプログラムの大幅な改訂があり,そのための質疑や意見交換が活発に行なわれている。コンテンツの開発者や技術者と,各国の教育支援プログラム担当者や関係協力者とのやりとりは,それぞれのお国事情を反映していて興味深い部分もある。

 我が日本チームも,インテル教育支援プログラムを支えている担当の女性お二人と,おまけでついて行った私の3人で参加。お二人の女性がなかなか積極的な方々なので,やりとりは任せて私はぐるぐる考え事をし続けながら過ごしている。
 他国と比べて,日本は教育支援プログラムの活用度が低いというあまり褒められた立場でないのが弱みだが,新しいプログラムへの移行も含めて,活用してもらうための方策を模索することになる。

 とにかくスケジュールは朝から夕方まで盛りだくさん。頑張らないといけない。

眠った ((米国渡航記03))

 気分を晴らそうと珍しく機内で映画を見続けた。1本目は「ナイトミュージアム」,2本目は「ドリームガールズ」,そして3本目は「主人公は僕だった」。いずれも注目作である。
 映画自体はどれも楽しかったが,体調の方はすっかり悪くなった。着いたときには眠気と頭痛で最悪な状態。とにかく入管を通り抜けて,寒い中を送迎バスを探しながら,やっとこさホテルに着いて,そのまま眠りについた。
 睡眠不足は解消したが,筋肉疲労による頭痛は残った。やはり長時間フライトに臨むときは,しっかり体力と睡眠を取って万全の体制にしておくべきだった。
 とにかく明日から会議が始まる。世界中の皆さんとご一緒することになるので頑張らなくては。

最悪のチェックインnwa ((米国渡航記02))

 成田である。直前になってパソコンの不調を発見したので、システム入れ替えなんかしてたら、あっという間に時間が経過してしまった。正直眠たい。
 それでも旅立ちのときには、気持ちくらいは明るく元気にいきたいものである。そう思って成田へやってきたのに、最悪なチェックインからスタートした。
 ずらっと並ぶe-chekinマシンとは裏腹に、実際に受付をする場所は限定されていた。しかも、困ったことに、複数の係員が列の整理をするので、「あっちに並んでください」「こちらへどうぞ」「次の方、こちらへお並びください」と何のルールもなく並び替えさせられる。
 じっとしていた方が早かったりすると、もうこちらも堪忍袋の緒が切れそうだ。いったいこれはなんなのか?もう順番がやっと回ってきたときには、無口になっちゃったよ、私。
 そんなサービスのイロハも理解していない航空会社にあたってしまい、なんか憂鬱な旅の始まりである。さてと、そろそろ搭乗のタイミングだ。

また荷造り ((米国渡航記01))

 帰国したと思ったら,また出国準備。2007年,英国,豪州と続いた出張の締めくくりは米国である。今回はオレゴン州ポートランドで行なわれるインテル社のCurriculum Round Table (CRT)という会議に出席するためだ。
 とある調査研究のお手伝いが縁でインテル社の教育支援プログラムに関わることになった。ご存知,インテル社は世界的なコンピュータのチップ製造メーカーである。その企業の社会貢献活動の一つが「教育支援プログラム」である。これも全世界的な規模で展開している一大事業だ。いくつか支援内容があるが,主に教員研修支援が今回のテーマ。
 その世界各国で展開している教育支援プログラムに関する国際大会の一つがCRTである。何をするのかというと,世界各国の関係者が集まって,情報交換したり,最新情報を得たりすることが目的らしい。
 また改めて(営業マンになったつもりで)インテル教育支援プログラムのご紹介をしていきたいと思う。今後,教員研修が重視されるとともに,より多様な研修を必要とする時代において,民間が様々な形で提供する研修プログラムを利用することが求められるのは確実。そのためにも私企業と教育界との意思疎通が円滑に進むように努力をしなければならない。そのお手伝いをするのも,大事なお仕事だと考える。

 そしていつもの荷造り。さすがに3度目だから荷造りのコツは掴んできたように思う。問題は部屋の掃除がまるきり出来てないことか。ヒドい状態のまま部屋を空けるのが悲しい。
 さてと,今夜も夜更かしである。

弥生1日目

 いよいよ3月。年度最後の月となった。ここ数日ぼーっと彷徨い続けたので,ここらでシャキッとし直さないといけない。放電しきったんだから,ちゃんと充電しないとね。
 さて今月は,米国出張を皮切りに,大学院入学手続きと合宿,年度末のあれこれセミナーに参加するといった予定になっている。
 また海外渡航…,最近の落ち着きのなさはこれが原因かぁ。この先数年分を先取りしちゃった感がある。今回はインテル社の教育支援事業に関連した出張。きっと,あれこれ秘密事項ルールがあると思うので,参加するセミナーの内容をリアルタイムにお届けすることは難しいかも知れない。
 でも,報告を書くことが出張の条件なので,いずれ皆さんにも内容をお伝えできるはずである。え?最近,あちこちに魂を売りすぎてないかって?ミイラ取りがミイラになっちゃう危険はよく分かっているけれど,私はこんな性格であるから大丈夫。たぶん誰にとっても手に余るんじゃないかな。

 卒業する教え子達の卒業パーティー(謝恩会)があったようだ。卒業式の前に開催するのが世間的に珍しいか。さっそく写真が公開されていた。ちょうど受け持っていたクラスの娘達が写っている。まあ,どの娘もキレイにめかして…,2年間よく頑張りました。
 同窓会から会報に載せる原稿を頼まれた。卒業生達に向けて近況報告。感傷的かつユーモアのある文章に仕上げる。もっとも,自分のユーモアセンスには懐疑的なので,ウケるのか全く不明。とにかく元気でやっていることさえ風の噂程度に伝われば,それでよしとしよう。

 打ち合わせに出かけたついでに,教科書の下巻を物色して買おうかと思い,神田の三省堂に寄った。以前置いてあった場所に向かったが,ない。場所移動したかなとあちこち見て回るが,ない。仕方ないので店員さんに聞いた。
 「あの,教科書ってどこか移動になりました?」
 「(ぶっきらぼうに)教科書は販売停止期間に入ったので,現在はお取り扱いしておりません。」
 がーん…そうかぁ,販売停止期間になっちゃったかぁ…,欲しかったのに。
 って「販売停止期間ってなんだぁ?」とお思いの方もいるだろう。説明しよう!,販売停止期間というのは,別にそういう正式な呼び方がある訳じゃないし,絶対買えない訳じゃない。
 ちょうど新学期が近いこともあって,新年度から使う教科書を確保することを優先するために,一般書店販売を自粛している期間のことなのである。
 でも,別に教科書コーナーまで撤去しなくてもいいのにね。在庫だけでも出しといてよ。この辺は申し合わせが出来ているのかも知れない。何しろ教科書は長いこと特別扱いされてきたので…。昨年,公正取引委員会が「教科書業における特定の不公正な取引方法」(教科書特殊指定)を廃止しようとしたら,業界から結構なリアクションが返ってきたことからもそれがわかる。
 ま,とにかく三省堂では買えなかった。

 ぼーっとしすぎて,またまた宿題がたまってしまった。さて頑張らないと。