Intel Teach ((米国渡航記06))

 インテル社が行なっている社会貢献事業であるインテル教育支援プログラム「インテル・エデュケーション」(Intel Education)が主催するカリキュラム・ラウンド・テーブル(Curriculum Round Table; CRT)に来ている。このCRTで主に扱われているのは,いくつかある教育支援の中でも「教員研修(専門能力開発)」である。
 インテルが提供する教員研修プログラムは「インテル・ティーチ」(Intel Teach)と呼ばれている。子ども達に21世紀型スキルを身につけさせられるような教育実践・授業づくりが成せる教員能力の研修を目指したものである。特にこの時代においてICTの活用は不可欠であり,インテル・ティーチもその点を重視したものとなっている。

 オリジナルの米国版インテル・ティーチは,いくつものプログラムに分かれている。ちなみに今回,大幅なバージョンアップが行なわれた。
ITC先生向け
 Skills for Success Course
一般の先生向け
 Getting Started Course
 Essentials Course v10 (F2F)
 Essentials Online Course (Hybrid F2F & online)
 Thinking with Technology Course v2
 Advanced Online Course
管理職向け
 Leadership Forum
 もちろん米国版は各国版にローカライズされることを前提としているが,必ずしも全てが各国で採用されているわけではなく,各国事情に合わせてプログラムが選択的にローカライズされ採用されている。
 CRTは,これらのプログラムに関する更新情報を提供し,プログラム全体のマーケティングや評価に関する情報も提供する。各国の担当者や関係者は,それらの情報をもとに,各国のニーズを明確化した上で必要なプログラムのローカライズを検討し,実現するというわけである。
 ちなみに現在日本で展開しているには「Essentials Course(旧バージョン)」のみ。基本的には教育委員会単位での申し込み制を取っているのが現状である。

 もしもあなたがインテル・ティーチなるものに興味を持ったら,まずは自分のところで教員研修事業を担当している教育委員会もしくは教育センターに問い合わせて,インテル・ティーチ・プログラムを導入しているかどうかを確認することから始めることになる。
 つまり,インテル社は直接に研修会を催してはいない。あくまでも研修の中身を提供するという形で教育現場への貢献を行なっているわけである。そのため,教育委員会や教育センターなどに在籍する指導主事が,インテル・ティーチについて知った上で,研修のアウトソーシングを求めなければ,インテル・ティーチが現場の先生方に届けられる機会はないということになる。
 実際のところ,インテル・ティーチが導入されている例は少ない。全世界の中で,日本のインテル・ティーチ活用度は低水準にある。日本におけるインテル・ティーチ自体の認知度が十分でないということもあるかもしれないが,日本は教員研修プログラムが様々な形で義務づけられ自前で用意してきた歴史があるため,外部にアウトソーシングするという発想が弱いのである。

 しかし,ご存知のように教員の質の向上が叫ばれ,教員免許更新制度,教職大学院といったものの動きも慌ただしくなってきている。教員研修の強化は,時代の流れとして重視され始めている。
 そうなれば,研修内容の多様化に伴って民間研修プログラムの採用も検討せざるを得なくなる(すべてを自前で用意するには限界があるため)。当然,有償/無償,各分野向けに特化したものなど,様々な選択肢を如何に有効活用するかが教育委員会や教育センターにとって重要課題になるはずである。
 そうした時代のニーズにおいて,民間企業の社会貢献活動として無償で提供されるインテル・ティーチのようなプログラムは,大変有り難く貴重な存在である。それゆえ,このプログラムが世界中の国々で,政府レベルとの連携を得ながら展開している事実は不思議なことでも何でもない。
 むしろ,有効活用していないのは,日本くらいなものだというのが,逆の意味で目立っているのである。

 今回,インテル・ティーチ・プログラムが新しいバージョンになったことを機に,各国でのローカライズ作業が始まり,新たな段階に進むことになる。日本チームも,日本での活用度が上がるよう,普及の戦略を立てて臨むことになる。是非,関心を持っていただきたい。