35歳の現実

 NHKスペシャルで5月6日に放送(6月6日深夜に再放送)された「あすの日本〜35歳を救え」(番組内容)で行なわれた35歳1万人アンケートの集計グラフを見つけた。

35歳1万人アンケート集計結果
http://www.nhk.or.jp/asupro/koyou/koyou_07.html

 こういう背景があると,今まで以上に「安心・安全」を希求する行動原理が強まるのではないか。本当のところ,そのことをしっかりと捉まえて展開している教育研究は多くないし,全体の共通認識としても十分とは言えないだろう。

 学校教育の現場に対する厳しいまなざしは,玉石混交したまなざしではあるとはいえ,こうした現実に直面した社会から発せられていたのだということを,今一度,教育現場に関わる私たちは肝に銘じなくてはならない。

 

 この番組の再放送と同時に,NHKの「あすの日本」報道プロジェクトについて知った。新年度の慌ただしさで知る機会が無かったが,「取材最前線」というブログを読むと,なかなか期待の持てる動きのようだ。

 報道プロジェクトというものが,どういう仕組みのものなのか,正直言うと一般視聴者にとっては「?」なのだが,このプロジェクトの場合,報道メンバーが責任を持って取材にあたり,NHKの複数の番組を発信の場としてもつことで,様々な形でテーマを追究したり,表現することが出来るやり方のようだ。

 加藤チーフ・プロデューサーのブログによれば,未来感のある番組と「私たちは…」コメントという工夫を盛り込んだというが,そのいずれも取材報道する人間の主観を隠すことなく形にするという姿勢から出発していると思う。

 こうした番組の作り方に対して視聴者からの否定的な意見と好意的な意見があったと記されているが,どの世代からどういう反応が返ってきたのかも合わせて分かると,もしかしたら世代の違いが見えるのかも知れない。

 NHK解説委員が表に出るようになったり,こうやってNHKの報道スタッフが前面に出たりと,NHKの番組作りが変わりつつある。それは,確かに従来のNHKに慣れた立場からは違和感もあるが,民放のように分野の違う有名人が専門でないニュースにもコメントするような報道の酷いバラエティ化に対するアンチテーゼとして,むしろ歓迎すべきことだろう。

 唯一の問題は,NHKはリアルタイムの討論番組が苦手だという点だ。特に最近偉くなっちゃったMアナウンサーは,そういう場を切り盛りするときの評判がかなり悪い。にこやかな人なのだが,討議の采配が巧くないから,後味が悪いのである(特にテレビをテーマにした番組は最悪だった。本人はとても努力しているし,アナウンサーとしての技術は信頼できるのに…まあ人は万能じゃないからね)。

 それさえ巧くフォローすれば,NHKはその取材力で得た情報から公正な主張を形にして,もっと批判や議論を巻き込んで社会を作っていくべきだと思う。