平日の昼下がり,私は人気もまばらな科学館に足を踏み入れた。それは何年ぶりなのだろうか。小学生のときに友達と来て以来,20年は経過しているだろう。増築されて少し規模が大きくなった科学館は,不思議な空間だった。
科学館のような施設は,その様々な展示の魅力が重要である。科学知識をわかりやすく見せて印象づけるため,様々なビジュアル伝達方法が駆使される。たとえば展示資料の分類には「実物資料」「復元資料」「模型資料」「写真資料」「映像資料」「音声資料」「図解資料」「解説資料」といったものがある(『博物館ハンドブック』雄山閣1990)。こうした資料を展示するために,マルチメディアを得意とするコンピュータも活用されるというわけだ。
とにかく私たちは,ボタン一つで解説が始まったり,展示物が動き出したりする,その単純な仕掛けに喜んだ経験を持っている。ボタンが増えれば,わくわく感も増したものだ。そうやって印象に残った展示装置をいまでも覚えている。そして20年もの時を経て,もう一度科学館に足を踏み入れたとき,そこには新しい展示装置もあったが,かつて見てさわった展示品もたくさん残されていることに懐かしさを感じたのである。
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文部科学省への罠?
このところ直接間接に文部科学省周辺での不正行為に関するニュースが報道されている。日本学会事務センターの破産しかり,世界青少年交流協会の補助金問題しかり,日本私立学校振興・共済事業団の算定基準問題しかり‥‥。こうして立て続けに報道されるところを見ると,三位一体改革における文部科学省の抵抗を弱めるためのリークではないかとも思えてくる。
はっきり申し上げて世間における文部科学省の旗色はよくない。その中で,直接には関係のない問題だと文科省側や教育関係者が考えようとも,世間は報道記事に「文部科学省」の文字を見れば,否応なく世間での文科省評価に結びつけられてしまう。結局,世論を味方につけられないことになる。
そもそも文科省は足並みの揃わない烏合の衆のようなところ。子育てや幼児教育に始まり,義務教育,高等教育,専門教育,生涯学習にいたるまで,人の一生に沿う事柄をまとめて預かっているのである。混沌と表現してもいいような「人の一生」についてである。そうならざるを得ない。だからこそ,もっとしっかりやってくれないと困るのだが,つけいる隙も人一倍多いのがなんとも頼りない。
もう一度,テレビCMでもつくってイメージアップでもしますか?
幼稚園実習指導訪問
幼稚園で実習中の学生たちを訪ねた。昨日は雨模様だったが,今日は気持ちのいい晴れ。この時期は運動会直前で練習が重なる日々なので,実習生達もそのお手伝いをすることが多い。日常的な保育や教育の実習に取り組むことがなかなか難しいのだが,それぞれの園でいろいろ配慮していただきながら学ばせてもらっているようだ。
あちこちの幼稚園をまわると,規模や取り組みも異なるし,地域ごとの事情の違いも垣間見える。幼稚園よりも保育所を選択する親(そちらの方が長く預かってくれるから)が多く,園児が減少傾向にある園もあった。一方で,園児600名を切り盛りする大規模園は,慌ただしい中にもどこか優雅な(悠長な?)雰囲気があったりもする。
義務教育費国庫負担金をめぐる議論で,国庫負担金が廃止になれば地方の教育に格差が生じるという問題が指摘されているのはご存知の通りである。たとえば日本の教育を考える10人委員会サイトや『世界』10月号の論考を参照。難しい議論は別にちゃんと押さえるとして,実際に格差が生じたときに見えてくる風景は,いまの幼稚園や保育所の世界なのかなとぼんやり思った。古めかしく卒園生には懐かしい園舎も味があっていいのだとは思うが,一方では潤沢な資金のおかげで新しくて明るい園舎や部屋がまぶしいところもある。地震があったらと思うと,両者の違いが何となく不安でもある。たぶん世間の人には,そういうものさえイメージできていないのかも知れない。
思ったのだけれど,たとえば10人委員会のサイトも小綺麗にまとまって,スライド資料のPDF等の資料は悪くないが,いっそのこと「金持ちA学校×貧乏B学校」ってな企画で,イメージ写真や映像をつくってみてはどうだろう。とりあえず発言しましたというアリバイサイトに終わりたくなかったら,世間の人々に訴求することに徹してみるのも悪くない。え?それはマイケル・ムーア的だって?ははは,かもね。
skm&hg_02
非常勤講義の第2回。「視聴覚教育メディア論」(skm)では,本論に入るための予備知識やイメージを持ってもらうため,パソコンで出来ることをプレゼンテーションすることにした。要するに「デモ」である。パソコン販売員よろしく,パソコンがいかに多機能かを喧伝したわけだ。
本音のところでは,こういう事を大学の講義でするのはいかがなものかと思う。視聴覚教育の歴史をたどり,メディアリテラシーのなんたるかを説き,情報モラルやセキュリティに意識的であれと啓蒙するような,そんな授業が粛々と展開する方が「大学の授業してるよなぁ,オレ」って気がしないでもない。まして,普段からマイクロソフトの手先と化して「マイクロソフト・オフィスのワークショップ」やっていると自嘲しているにもかかわらず,今日はマッキントッシュを使っての実演だったから,アップルの手先と化しただけの授業だったと言われても反論のしようがない。
もちろん,その批判は甘んじて受けるにしても,私は授業を終えて再理解した。まだ今の大学生は,パソコン知らないのである。インターネットが日本で商業向けにデビューして10年である。今の学生達が小学3〜5年生の頃だ。Windows95旋風も同じ頃だから,まだまだパソコンが身近な世代ではない。むしろ携帯世代である。
10月がやってきた
今日から10月。秋といっていい時期のはずなのに,日中はまだ暑さも残る。来週くらいからは秋物が問題なく着られる陽気になるといいものだ。今週も一段落,来週は幼稚園へ実習訪問に出かける予定。まだアポが取れていない,どうしよう。
先日の台風の日には高校訪問へ出かけ,大雨と強風の中をドライブ。あちこちに点在する担当校の進路指導室にお伺いして,資料を渡したり,様子を教えてもらう。短大なんか相手にしない高校もあるし,そうはいっても訪問客,台風の中をびしょ濡れで訪ねにきたのが哀愁を誘うのか,その優しさが身にしみた訪問校もあった。最後の高校では,駐車場の排水溝に車のタイヤがはまり,独りでジャッキアップして悪戦苦闘していたら,やみかけていた雨が大泣きをはじめるコメディ映画状態。それを,訪問しようとしていた学校の先生が校舎から発見してくれて,他の先生方と一緒に救援してくれた(ホントの話だけど,ヒミツの話)。その日に高校訪問に出かけたのは,担当授業がない日だからなのだが,先生にとっても台風は授業のある日の午前中にやって来て欲しいと思う一例である‥‥。
なにやら小学生の天動説問題が賑やか。学会なんかで改めて取り上げると,文部科学省も無視できないのか,記者会見でコメントしたのだという(この「記者会見」というのが,いつも気に入らない。私たち一般人はどこからそのニュースソースを得ればいいのか。東京人や記者クラブの連中の仲間内で勝手に盛り上がらないで欲しいよ)。はっきり言って,この話題で盛り上がる基準が私にはわからない。どう考えても些末な話だ。文部科学省が「中学校で扱います」なんてコメントする事自体,筋書き通り,予定調和のせりふを引き出したに過ぎないわけで,なんも意味がない(しかも得体の知れない「記者会見」でのコメントだ)。もっと新聞スペース費やすべき話題があるだろうに。
さて,来週の準備をしましょうか。
中山文部科学相誕生
9/27夜に第2次小泉改造内閣が発足したとのニュース。義務教育国庫負担金制度などの問題で注目される文部科学大臣のポストには,自民党森派の中山成彬氏が起用された。
今回の内閣人事は,改革路線を加速させるねらいが明確なものだという評がある。ほとんどの人々が財政関係の息がかかった経歴を持つ点,郵政民営化以外にはあまり方向性が見えない布陣など,確かにそういう印象があちこちから感じられる。
さて,中山文科相なのだが,記者インタビューの記事によると義務教育国庫負担金制度廃止には反対の姿勢を継承すると明言していた。これまでの路線を引き継ぐのは官僚出身者としては当然の態度なのだろう。文部省時代の政務次官の経歴がある人なので,文部行政と縁もゆかりもなかったわけではないが,もともとは大蔵官僚であり,最近までは経済産業大臣として活躍されたようなので,おそらく三位一体改革に対しては一定程度の理解を示し,土壇場で国庫負担金制度を切り崩しにかかる可能性も否定できない。あくまでも不安がないわけではないという意味でだけれど。
web記事を検索していると野党なんかの解説ページが出てきて,「改憲色くっきり」なんて指摘が書いてある。中山氏が改憲に対してどんな考えを持っているのか,まだはっきりわからない。中山成彬氏webサイトをじっくり見てみなければならないか。前出のインタビュー記事には「愛国心」という言葉に関する言及があったり,奥様の中山恭子内閣官房参与と共に北朝鮮拉致問題に積極的に取り組まれていた点など,あれこれ勘案したりすると,教育基本法改正に先鞭をつけて改憲につなげるという道筋に適した人物のようにも見えてくる。果たしてどうなるのか。
テレビで「個性化教育は必要か」なんてことを現場の先生を招いて討論ショーしていたが,そんな見せ物的なことをしているところで,見えにくい問題がじわじわ大変なことになっていることを取り上げて欲しいんだけどなぁ。
非常勤授業(skm&hg_01)
非常勤先の後期授業も始まった。第1回の授業だ。先日書いたように今期担当するには「視聴覚教育メディア論」と「教育の方法と技術」という,どちらも教職課程の科目。前者は今年からだから初挑戦だが,後者も毎回構成がくるくる変わるので初めてのようなものか。
とにかく,私は相手の顔や様子がわからないと異様に緊張するタイプなので,今回も何をどのくらい準備すべきか考えあぐねていた。最初は授業ガイダンス程度のことをすればいいのだから,もっと気楽に取り組めばいいのだが,それが出来ない性格らしい。相手からの要求水準を妙に高く見積もってしまうのだ。
それで,いよいよ第1回を迎えて,授業をやってみると,ああ,そんなに力むこともなかったかと思うのである。周りの教室は早々と第1回の授業を切り上げているのに,私の教室は第1回から盛りだくさんである。結局,学生達のコメントを見返すと,盛りだくさんの話が追い切れていないことがよくわかる。ただ,どうやら私が一生懸命であることは伝わるらしく(自分で書くのは恥ずかしいが‥‥),わりと最初のネゴシエーションは悪くないのである。このあと難解な授業が続くと,下降線をたどるけど。
受講生の雰囲気もわかると少し気楽なのだが,それでも授業準備は常に悶々とする。自分の勉強不足がわかっているから,いつも不安なのだな。こればっかりは永遠に絶えることのない感情なのかも知れない。
さて,苦しくも心地よいチャレンジを楽しもう。
リスニング試行テスト
大学入試センターは,再来年1月のセンター試験で導入される英語のリスニングテストのため,抽選で選んだ高校2年生約4万人に参加してもらって,試行テストを今日行なったようだ。(ニュース検索)
センター側も,今回のリスニング導入には並々ならぬエネルギーを注いでいるようで,とにかく試験が問題なく遂行できるよう,この試行テストから得られるデータも参考に準備を整えたいようだ。今回のように台風がやってくるなどのアクシデントは,季節が違うとはいえ何があるかわからないという点で,よい教訓であろう。その他,試験官の足音や消し忘れた携帯電話などの周囲の音や飛行機等の騒音,再生機であるICプレーヤーの故障・操作ミス・配布や回収そして輸送にいたるまで,完全掌握しなければならない。
公私混在
気分転換に見るWebニュースで,学校や教師の不祥事に関する報道が絶え間ない。それを報道する者の凝固した想像力と粗雑な文章力のせいで,現実がもつニュアンスは紋切り型の不祥事ものへと処理されているのが読むだけでわかる。もちろん,こういう報道記者に対する固定観念も疑う必要があるのかも知れない。けれども,見せ物的なニュースがこうも日常茶飯事にもたらされると,この人達,学校教育に残されたわずかな信頼さえも失墜させようと意気込んでいるのではないかと思いたくもなる。
もっともこの頃,学校現場とインターネットという取り合わせの狭間で起こっている事件は確かに多いし,私とて,教育現場を職場としている人間ゆえ,長らく続けている個人Webサイトについて,再考しなければならない時期にきていると思う。メディアに関する授業準備をする中で,そんなことも考えていた。
私はパソコンの先生で雇用され,サラリーをもらっている。「情報技術」周辺の事柄について関心があり,月並みだとしてもスキルを持っていたからだ。もっとも,個人的な研究専門分野は「教育」だから,「情報技術」と「教育」が重なるあたりに研究者として身を寄せていることになる。
けれど,私の中では社会・人文科学系の問題意識の方が高いらしく,そういう観点から,「学校教育にパソコンやインターネットが入るなんて事の大変さに私たちは対処できるのか?」と憂いでいる自分が常に内在している(ラッダイト的感性?)。
私は可能性について目を背けているつもりはない。脳天気な私は,結構いけいけドンドンな人である。面白いことに挑戦しないなんてあり得ない。けれども,可能性に目を奪われることで,取り返しの付かなくなる事柄には何度も出会ってきた。だから,周りの人々が可能性を論じるなら,私は懸念を表明するバランサーとして身を置きたくなるのだ。
不祥事報道や学校批判記事などに接するとき,たぶんそういう自分の中のバランサーが働くのだと思う。そのうえで自分の態度を選択しなければならないし,行動もしなくてはならない。
もっとも,健康状態や生活の慌ただしさによって,自分のバランサーがうまく働かなくなることは多いけれど。
さあ,後期だ
いよいよ後期がスタートした。授業再開である。もっとも学年によっては実習に出かけているので,そうでない学生達の授業から五月雨式に再開される。ペースをつかむ助走期間としては有り難い。でも来年度の学年歴を変えるとか会議しているみたいなので,来年はまた違った雰囲気になりそうだ。
結局,非常勤先の補講やら集中講義などもあって,この時期あちこちでやっている学会に出かけられなかった。日本教育工学会の大会も今日までやっているが,悔しいけれど今年も欠席。また情報収集をしておかないと‥‥。
さて,気持ちを切り替えて,後期授業の直前準備。後期は「情報基礎演習」というパソコンの授業や「卒業研究」というあれこれ挑戦する授業に加え,幼児教育課程の「教育方法論」が入り,非常勤先では「教育学」に変わって「教育の方法と技術」と「視聴覚教育メディア論」なる授業を担当する。特に「視聴覚教育メディア論」は今年度からはじめて担当する科目なので,講義全体の段取りがまだ固まっていない。日頃からメディア論系の文献は好きで眺めているが,講義となるとそれなりの構成作業が必要だ。
そんな感じで,慌ただしい日々はそのまま後期にも引き継がれるのでありました。実習訪問と高校訪問どうしよう‥‥。