午前中に自宅で仕事をしてから,昼過ぎの遅い出勤をした。昼過ぎの地下鉄は,おじさんおばさんがメイン乗客のはずだが,この日は試験期間で早くに終わったのであろうか,中高生たちが賑やかに乗り込んできた。
私の隣りに2人分の空席があったので,中学生(もしかしたら高校生か?)と思われる女子が2人座った。2人楽しくおしゃべりしながら,私の隣りに座った女子がお菓子の袋を取り出して一生懸命開けようとする。「え〜!」と心で思って,止めようかと思ったところで封が開いてしまった。間髪入れずにもう1人も菓子袋を開けて見せた。
地下鉄車内でパクパクとお菓子を食べ出した女子2人。その姿はまるで自分の部屋にいるような調子で,スカートに落ちた破片や手についたカスを車内の床に払い落としたりしている。
「おいおい,おまえら」と心で思ってみたが,さて,どうしようか。たまに睨みつけてみたりもするが,全然認識されていない。周囲は女子2人に対して完全無視モードだ。この状況が嫌い。
ビデオPodcastと新iMac
本日の「視聴覚教育メディア論」の講義で,テレビとビデオの歴史を語った。最新動向として,先日発売されたばかりの動画再生機能付きiPodの紹介を熱っぽく語ったら,学生から「なんだか,話し方でアップルが大好きな印象を受けたのですが」と鋭いコメント。バレバレでした。
先日発表された新iPodと新iMac。教育らくがきのアップル好きはすでに周知の事実だが,それにしたって今回の新製品がモバイル・ラーニング分野に与える影響は大きいと思う。米国では,人気テレビドラマを過去のものはもちろん最新放映分も放送後翌日に購入できるといったサプライズ発表もあった。
しかし,何よりもPodcastの世界に「ビデオPodcast」が加わるということが,一番のニュースである。つまり,自分で短いビデオクリップを制作して,ブログに定期的にアップすれば,それは個人ビデオ放送局になるということだ。
このビデオPodcastの可能性は,従来のPodcast(ここではラジオPodcastとしよう)よりも広い。これまでのラジオPodcastは音声のみである点で,ある意味個人制作が難しい代物だった。え?音声だけだから楽なのではないか?とお思いかも知れないが,実は表現手段が制限されている分だけ,センスや技能が必要なのだ。簡単だと思う人たちや現在制作している人たちは,そういうセンスや素養を持っている人たちというだけである。
逆にビデオPodcastになると,ずいぶんと敷居が低くなる。というのも,ビデオカメラの普及と活用のされ方を考えると,結構な素材がすでにあちこちで眠っている可能性があるからだ。アップルが用意していたiMovieというソフトは,そうした眠っているビデオ素材を掘り起こすソフトであった。そしてこれまではDVDに焼いて楽しもうというアプローチだったのである。しかし,ようやく新たな楽しみ方として動画対応iPodが登場した。
米国学校視察を終えて
長い時間をかけて地球の裏側に出かけた米国フロリダ州での学校視察も,無事日本に帰国したことで幕を閉じた。これから視察の内容を見直して,報告書をまとめる作業に移る。視察時間は短かったし,プライバシーの観点から記録制限されたが,おおよそのストーリーを組み立てるのに必要な情報は得られたように思う。追加質問はメールでお願いすることにしよう。
今回の視察はThinking Mapsというビジュアル・ティーチング・ツールを活用している学校を対象としたものだった。その目的は,思考力育成の取り組みを概観するためである。実際,思考力向上の成果として社会科と作文の成績が目に見えて上がっているという。そして,痛感したことは,米国と日本の「道具観」の違いだった。
Thinking Mapsというプログラムには様々なノウハウが盛り込まれてはいるが,それを使っている現場自体は一つの効果あるツール(道具)として割り切って使い倒しているだけ。もちろん必要なければ使わない。かなり単純に見れば,それだけなのだ。その割り切り方のなんと「あっさり」したことか。かつ,とても効果のあるツールとして信頼を寄せている。
日本だとこうはいかない。何か道具を使うと「楽をした」という印象が先に立ってしまう。道具としての「手軽さ」の重要性は「短小軽薄」を得意とするものづくり大国・日本なのだから理解しているはずだが,こと教育界では「苦労なくして成果なし」みたいなスポ根観が支配しており,道具の活用が不自然なくらい下手なのだ。
帰路のデトロイトにて
あっという間にエンディングである。学校視察も終え,当初予定していた他州の学校視察はなくなったので,これから帰国するところ。長いような短いようなアメリカ滞在も,大阪行きの便に乗れば終わりを迎える。
学校の視察先は,紹介されたわけではなく,日本で有名というわけでもなく,リゾート地のど真ん中にあるとも知らず,ネットの検索でたまたま見つけた学校だった。学校のWebサイトからも取り組みへの積極性が感じられたことから,候補に挙げた次第である。日本ではほとんど知られていないというか,ごく普通に日々を送っていた学校に突然コンタクトをとったというわけで,結果的に新規開拓したことになる。それもこれも今回助手を買って出てくれたT君のおかげだ。感謝感謝。
学校視察が終わってからのフロリダは雨模様。リゾート気分を満喫するには残念な天気ではあったけれども,十分すぎるほど観光もした。罰が当たりそうだが,日頃の努力に対するラッキーなご褒美だと思えばいいか。
ケネディ宇宙センター
学校視察が一段落ついて,さてどうしようか思案した結果,ケネディ宇宙センターへと出かけることにした。もっとも,出かけるのが遅くなってしまい,到着したときには閉館の1時間前。それでもハイウェイを走ってわざわざやってきたので,ビジターセンター周辺だけでも見学することにした。
「ケネディ宇宙センターへ出かけることにした」なんて簡単に書いているが,まさに宇宙開発の第一線。アメリカの宇宙開発プログラムが進行している,その本拠地に行くのである。それは少年の日の夢であり,夢から覚めたような今でも,ある種の感慨を持って訪れないわけにはいかない。
延々と続く道路を走り続けると,やがて大きな川へと差し掛かり,左手前方彼方に有名なシャトル建設ビルが見えてきた。一気に気分が高揚する。さらに走って,私たちの車はVisitor Complexという場所に到着した。そこにはビジターセンターと宇宙開発に関する展示施設がある。本来ならば,2時頃が最終出発のバスツアーに参加して,広大な範囲に散らばる宇宙開発施設を見学することができるのだが,閉館間際なので割引チケットでビジターセンターの入館だけ。
それでも本物の宇宙飛行士によるトークショーや歴代ロケットやスペースシャトルの実物大展示など見ることができた。先日の駄文にも書いたように,スペース・サイエンスの社会教育についてNASAは積極的であり,この場所はその中枢。NASAの6大事業の一つとしても「教育」はしっかりと掲げられている。少しばかりそんなことを気にしながら,宇宙センターを楽しんだ。
学校視察
アメリカ・フロリダ州のオーランドにて学校視察。訪れたのはShenandoah Elementary Schoolという小学校。校長先生のJanice Weemsは突然コンタクトをとってきた男二人を快く歓迎してくれた。「どうしてこの学校を視察することになったの?」と聞かれて,私はたどたどしい英語で「インターネットを検索したら出てきたんです」と答え,視察の始まりとなった。
詳細はまた後日書きまとめたいが,Thinking Mapというツールを教育現場の至る所に活用して,社会科やリーディングの成績が上昇したという成果を上げている学校だ。ツール自体の概要はWebサイトでも紹介されているのだが,実際の学校現場でどのように活用されているのかを知るために視察となったわけである。
学校見学は,午前中に終わった。もう少しかかるかと思ったが,実際の導入も活用も意外とシンプルだったこともある。もう少し細かいところも突っ込んで調べられないか,あれこれ思案もしてみているが,いまのところ大まかな実践が見られたところでそれ以上のものを引き出すには場面を変える必要がありそうだった。
それに実は,プライバシーやコピーライツの問題もあって,少々材料集めに難儀したこともある。調査の方法もいろいろ考えなければならないなぁ。
デトロイト空港にて
11時間ほどのフライトの末,経由空港であるデトロイト国際空港に到着。入国審査をなんとか通り抜け,再度荷物検査をして,搭乗口前待合室にいる。空港にあるHotSpot(無線LAN)サービスで接続しているわけだ。便利便利。ちなみに一日利用料金は6.95ドルである。
と思ったらバッテリーが少なくなってきた。これからフロリダへと飛ぶ予定。入国審査は,左右の人差し指の指紋を採ったり,Webカメラで顔写真を記録したりと,前来たときよりも厳しくなってきていた。でも順調。
ちなみに,デトロイト空港はあまりに横幅が広いので,屋内電車でターミナル内を移動できる。ターミナル同士を連絡するものはよくあるが,屋内列車があるのは珍しい。それから,確かめてはいないが,デトロイト空港ってもしかしたら映画「ターミナル」の舞台か,モデルになった空港じゃないかと思う。そっくりなロケーションがあったから。
出発前夜
少しでも余裕を持って飛び立つために前日から大阪入り。関空利用は初めてなので,その方がいいと判断。それと今回の旅の友である大学院生のT君との前日打ち合わせもしたかった。大阪の街とあまり縁がなかったので,まったく地理がわからない。ホテルもどうしようかと困って,T君と同じ大学院の奥様院生のIさんに相談したら,とても洒落たホテルをお得な価格で紹介されたので,そこに宿泊することにした。
というわけで,ホテルについて,T君とIさんと一緒に夕食をする。今回の視察の件を始めとして,いろいろな教育談義にも花が咲いた。たとえば教育と宗教の関係について。これはなかなか興味深い議論ではないかなと思う。その辺の詳細はまた次回に書くとしよう。
思うに職場ではこういうコミュニケーションをしていないから,どんどん考え方が凝り固まってしまいがち。こういう機会にいろいろおしゃべりできるのは,自分の考えについて相手の反応を見られるという点で,とても大事だなぁと思った。感謝感謝。
オズの出版社
旅支度を進めながら,今月発売の月刊誌を眺める。『世界』11月号には「徹底討論・脳科学は教育を変えるか」と題し,ジャーナリスト司会で脳科学周辺の専門家3人による討論が掲載されている。
昨今,教育議論に脳科学の成果を参照したものが多く見受けられるようになった。そうでなくても昔から「左脳だ,右脳だ」と学習について脳のメカニズムを引用して語る教育論は馴染みが深いが,最新脳科学によってさらに教育方法の裏付けが得られるのではないかという期待が高まっている。
この風潮で有名なのは一時期「多重知能」(もしくは多元的知能)として注目され流行もしたハワード・ガードナー氏の理論である。ちなみに彼はその著書で,多重知能理論が学校教育の基本的な課題の触媒としてはたらくような教育場面を大事にすると記している。要するにそれは,理論を根拠としてでなくきっかけとして使って欲しいと断わっているのだ。
当事者の思いもむなしく,現実には脳科学が学習にまつわる謎を解き明かし,より効果的な学習の方法を提示してくれると思いこんでいる人たちがいる。徹底討論では,そのような誤解が発生する理由の一つとして,脳科学の研究手法の問題を取り上げ,そこに登場する「作業仮説」があたかも実証済みの事象として取り扱われてしまうことを指摘。そのような誤解を生むのは,そうした科学研究に関する一般向けの教育が足りない(またこれか!)ことを挙げている。そしてもちろん,「脳科学的な実証」を売り文句にした出版ビジネスの弊害を憂慮し警鐘を鳴らしている。
校内LANを無償でいかが【パート2】
9月に締め切られた情報化推進協議会による「校内LAN整備加速パッケージ」の選定結果が発表されていた。確か全部で50校募集だったのに掲載されているのは14校だけである。条件を検討した上で選定されたためだとしても,これは少ない。応募が少なかったとしか考えようがない。
というわけで,皆さん!第二次募集が10月中旬から予定されているそうですよ!前回の告知を知らなかったあなた,応募準備期間が短すぎて応募できなかったあなた!再度チャンスです。
おそらく条件は前回の駄文に書いたものと同じだと思われる。学校内の意志決定だけでなく,教育委員会との調整合意の上でないと応募資格を得られないので,希望される方は今から学校長を説得し,教育委員会との接触を図ることをおすすめする。さらにこのパッケージの応募は,自らの学校の取り組みを全国に対して公開することも含んでいるので,その辺に対する関係者の理解を得ることも必要だろう。
だとしても,こんな確率の良いクジはない。「よし,騙されたと思ってちょっとやってみるか」とふっとやる気になることが,大きく物事を変えるのである。興味のある皆さんは,募集がかかるのを注意深く待っていただきたい。
そして,宣伝下手な情報化推進協議会の代わりに募集の告知をしてあげて欲しい。ライバルを増やすのは気が引けるかも知れないし,義理もないとお思いかも知れないが,もしかしたら日本に残された唯一の希望は,未来をおもんぱかって渋々ながらも融通を利かす,義理人情くらいしかないかも知れないのだし‥‥(ホントだとしたら寂しいけどねぇ)。