月別アーカイブ: 2009年5月

タイムスクープハンター

 火曜日の夜,0時越えしたNHK総合チャネルで『タイムスクープハンター』というドラマが放送されており,今度の19日に最終回を迎える。日本の過去へとタイムトラベルしたジャーナリストが歴史事象をリポートするという空想歴史ドラマだ。

 要潤さんがタイムトラベルするジャーナリストを演じ,高度な交渉術とやらを使って当時の人と接触し,密着取材を行なうという設定である。主観撮影法(P.O.V.方式 = Point Of View)という撮影方法を使って,あたかも当時の様子をタイムトラベルしてきたジャーナリストのカメラで撮影しているという雰囲気を出し,リアリティを生み出している。

 昨年,開発番組(実験番組)として放送されて好評を博し,レギュラー番組化されただけあり,面白い。史実を下敷きにした作り話であるから,歴史番組というよりは空想歴史ドラマと表現した方がよいと思うのだが,とりあえずNHK的には「ドキュメンタリー/教養」のジャンルだと認識しているらしい(ちなみに,かわいそうに単独のホームページを用意してもらえずブログを間借りさせてもらっているようだ)。

 人それぞれ好みがあるから,こうした番組を受け入れない人も居るかも知れないが,私はこの番組自体はもちろん,番組に通底する「作り手の姿勢」の良さを高く評価したいと思う。

 あらかじめ世界観や枠組みを自分たちで作り込んで,そのセオリーを守ることを通して楽しみながら番組をつくっていることが伝わってくる。世界観や枠組みの作り込み具合によって番組のグレードが決まり,セオリーを守りつつどれだけ楽しんだり楽しませたり出来るかで人気が決まる。

 「タイムスクープハンター」は,史実を下敷きに空想世界を作り込み,製作者も演者もその世界観やセオリーの中で良い仕事をしている。(未来からの取材という部分で)史実をパロディしているようでいて,当時の人々を演じる部分については(あたかも本物ですといわんばかりに)真剣そのもの。この辺の案配がいい。

 見たことない方は最終回をお見逃しなく。たぶん新シリーズへと続くんじゃないかな。

 変に教育に繋げて考えない方がこういう番組にとってはよいと思うのだが,歴史への関心を喚起するという点においては,こういうドラマの方が学校放送番組よりも効果的なのかも知れない。

 あるいは「クイズ面白ゼミナール」の歴史クイズの寸劇くらいコミカルにするかどっちかだな。

研究会がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!

 徳島大学で日本教育工学会の研究会が開かれるので参加した。わざわざ研究会の方から徳島の地にやって来るのだし,この前やっと準会員から正会員に切り替えたんだし,東京大学からの発表者もいらっしゃるみたいだから,参加しないわけにはいかないだろう。

 久し振りにいろんな方とお会いした。地方での研究会は賑やかというわけにはいかないけれど,それでもいろいろ発表があって面白く聞いた。自分も発表しないといかんなぁと刺激を受けた。頑張ろう。

 徳島大学では「五月祭」をやっていた。東京大学の五月祭は「ごがつさい」なのだが,こちらの五月祭は「さつきさい」と読むらしい。もちろん規模は比べ物にならないくらい小さいが,それでもステージが設置されて,賑やかにやっていた。

 せっかくなので,昼食は模擬店で買って少しは貢献しようかと思ったが,腹が膨らみそうなのはたこ焼きと焼き鳥とフランクフルトくらいしか売っていない。焼きそばとかはないらしい…,う〜ん。仕方ないので,たこ焼きと焼き鳥で我慢した。

 今日は天気がすぐれないので,途中,雨もポツポツ。それでも本降りにならなかったのはよかった。私も研究会を終えたら自転車で帰らないといけないので,買い物で駅に寄ってから急いで帰った。

著作権法改正法律案

著作権法の一部を改正する法律案
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/171/1251917.htm

改正の趣旨
 骨太方針2007等に基づき,電子化された著作物等(デジタルコンテンツ)の流通促進のため,インターネット等を活用して著作物等を利用する際の著作権法上の課題解決を図る。

改正の概要
1. インターネット等を活用した著作物利用の円滑化を図るための措置
2. 違法な著作物の流通抑制
3. 障害者の情報利用の機会の確保
4. その他

青山学院大学がiPhone導入

青山学院大学が550台のiPhoneを導入,出席確認アプリで“代返”防止も
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090514/329889/

 日本の大学での導入事例が登場しましたね。値下げキャンペーンを活用しているところが抜け目ないですし,出席確認にGPS機能も使うあたりは,感心半分,呆れ半分。教室の外で代返して逃げれば同じだから,結局テクノロジーは補助に過ぎなくて,基本は本人の勉学意欲かな。本当はiPhoneがNFC(ICカード規格)に対応すればいいんだけど…。

The Muppet Show

 今年,ETV(NHK教育テレビ)が50周年を迎えた。私たちにとっては,学校放送と語学番組で大変なじみの深いテレビチャネルということで,まずは素直にお祝いをしたい。

 すでにリクエスト自体は終了してしまったが,記念サイトには「もう一度見たい教育テレビ」と題して過去の放送番組が紹介されている。「自分の年齢から探す」のページを使えば,自分が幼い頃に放送されていた番組を時間をさかのぼって知ることも出来る。

 私が教育テレビと聞いて思い浮かべるのは,「なんなんなあに」のテーマソングと「できるかな」のゴンタくんとノッポさんである。あとは「セサミストリート」というイメージ。

 セサミストリートは,途中からNHKの手を離れてしまったのだけれども,僕はNHK版のイメージが強いので,民放版で変わってしまった部分はあんまり好きになれなかったりする。そういう意味では「教育テレビ」がいつしか「ETV」になっちゃったのも,正直言うとまだ素直に受け入れてなかったりして,まあ,世代に縛られるということから逃れられないみたいだ。

 だから,「天才てれびくん」のノリも,「ウゴウゴ・ルーガ」が好きだった僕らにとって,確かに最初は期待を抱かせたのだけれども,どこか芸達者な子どもたちに楽屋オチ的な笑いを演じさせ始めたところから好きになれなくなってしまった。いろいろ試行錯誤しているようだから,もうちょっと真面目に見れば好きになれるのかも知れないが,なかなか余裕はない。

 ETVが扱った番組ではないけれども,セサミストリートつながりで,私が一番好きな番組なのが「The Muppet Show(マペットショー)」である。セサミストリートでもおなじみの人形(マペット)たちがホストになって,実際の俳優や歌手のスターたちと架空の劇場でバラエティを演じるというコメディ番組である。日本の番組で一番近い雰囲気なのは「ハッチポッチステーション」だと思う。見たことはないが「どれみふぁワンダーランド」というBS2の番組には,似たような雰囲気を感じる。

 要するに,コントや寸劇部分でコメディを展開しつつも,演技や歌などに妥協しないという姿勢のメリハリ感がよいと思うのである。「マペットショー」は,子どもたちにお馴染のマペット達が一流スターを相手に共演してしまうという敷居の低さ,しかしスターが演技したり唄い始めると一流のエンターテイメントを味わえるという本格的なつくりが,わくわくさせる。

 たぶん「ハッチポッチステーション」や「どれみふぁワンダーランド」なんかが歌に関しては一流(あるいはプロとしての品質)を維持していることと通じているように思う。

 相変わらず映像の権利問題に関しては懸念が残るものの,YouTubeのおかげで「マペットショー」の一部分を見ることが可能である。

 たとえばダイアナ・ロスが共演した動画を見ると,マペットとの会話から歌へとつながる部分のなめらかさや優雅さみたいなものを感じることが出来るし,一緒に合唱する部分の盛り上がりや一体感なんかは,上質なエンターテイメントである。

 いま,こういう番組作りをしようとすると,たぶん製作者側にもそれだけのテンションを維持する力がないかも知れないし,まずもって視聴者が受け付けなくなっているように思う。要するにつくっても数字はとれないからBS行きなのだ。これは海外でも事情は同じかも知れない。実際,マペットショーに追いつこうとした番組はあるが長続きはしていない。

 「教育テレビ」を系譜とする「ETV」には,今後もぜひ上質な番組作りを目指して欲しいと思う。

 追記:いやはや,カイリー・ミノーグとカエルのカーミットとのデュエットのビデオも素晴らしいね。やはり,マペット・キャラクターの魅力が強いんだろうな。

最後のUTカフェ

 東京大学のキャンパス内には,いくつもの飲食店がある。私が在籍していた大学院は出来たばかりの福武ホールという建物にあったが,そこにもUTカフェ(UT Cafe BERTHOLLET Rouge)という飲食店があった。

 東京大学のカフェと名付けられたこともあってメニューは本格的である。正直,貧乏大学院生にとっては,少々値の張る内容のため,すぐ隣にありながらも自分で利用するのは特別な時だけだった。

 それでも,ゼミの後の食事会やイベント事のパーティーの席,何かの機会に複数の人間で利用することは幾度もあった。大変贅沢な料理を堪能できたのは幸せだった。

 仕事に就いた今も(就いていた昔も),自分での食事は貧相なものばかりなので,UTカフェのメニューは想い出深い。特に「ポムフリ」というフライドポテトの味は絶品だ。そのことを研究室のブログに書いたりもした。その評判を聞きつけた地下鉄の広報誌が取材に来て,ポムフリが記事になったくらいの絶品メニューである。

 大学内で飲食店を営むということは,どれだけ大変なのだろう。

 特に,新規開店したお店の立ち上げ時期は,何も蓄積がなく,すべてが初めてという条件の中だけに,無事に通常営業するということが難題だったのかも知れない。

 その女性店長さんは,いつも黒いシンプルなユニフォームを着て,朝の開店準備を始める。スタッフが前日分のゴミ出しや店内のテーブルや食器の準備などして,店長さんは地下にある食材庫から必要な食材をせっせと運ぶ。段ボールはいつも重たそうだ。階段を上がってくる店長さんを見かけた時には,ドアなどを開けてあげる。

 お店は赤門のすぐ横。お客は観光に来た人々だったり,キャンパスに散歩しに来る近所の人だったり。お昼のランチタイムは,学内の女性職員さん達がどっと押し寄せる。東大の近辺にはOLさん向けの飲食店が少ないのだ。ある意味,UTカフェは,東大の若い女性職員さん達にとってランチタイムの救世主的なお店となった。

 小さい厨房で店長さんは休む暇なく調理を続ける。スタッフの皆さんもフル回転だ。ランチタイムのUTカフェは,ほぼ女性専用だと考えた方がいい。それくらい賑やかな異空間だった。

 そんな慌ただしい時間を過ぎると,ようやくカフェらしいゆったりとした時間が流れ始める。やがて辺りが暗くなり,夜へと迷い込むと,UTカフェには,たまに静けさが訪れたりする。学内に残っているのは,残業中の先生方か職員さんか,大学院生くらいだ。

 たまに通り過ぎる時に店内からしゃべり声が聞こえる。店長さんやスタッフさん達の憩いの時間といったところだろうか。閉店時間の夜9時半まで。そんな雰囲気でお客の来店を待つ。

 そろそろ閉店時間。看板をしまい,閉店の準備。今日も何度,一階のお店と地下2階の食材庫とを往復しただろう。そんなことを考えながら明日の準備と仕込みが始まる。

 10時を過ぎて,スタッフが帰ったあとも,店長さんは一人薄暗くなった店内の奥にある厨房で作業をしている。実際,どんな作業をしていたのか,ただお店の前を通り過ぎるだけの僕には分からないけれども,毎晩のように次の日お店が開くよう努力されていたことだけはわかる。

 そうやって,東京大学に新しくできたカフェは,最初の一年間を乗り切り,2回目の春を迎えた。

 特別な時にポムフリとビールを飲みに行くだけだったけれども,居場所はお隣さんみたいな場所だったので,店長さんともたまに挨拶をしていた。

 春になり,東京大学を離れることになった最後の日,僕はUTカフェに寄って,店長さんにお礼を言うことにした。何しろ,年間を通してこんなに贅沢な食環境にいたのは人生で初めてだったし,ポムフリの味には感動していたので,どうしても感謝の言葉を伝えたかった。

 「店長さん,こんにちは」
 「あ,こんにちは」
 「あの,この度,東京大学を離れることになりまして…」
 「ああ,そうなんですか」
 「はい,で,この一年美味しい料理をありがとうございました」
 「いえいえ,で,どちらへ行かれるんですか?」
 「はい,徳島へ飛びます」
 「そうですか,頑張ってください」
 「ありがとうございます。店長さんも大変でしょうが頑張ってください」
 「あ,実は…私も離れることになって」
 「え?」
 「今月までなんです」
 「あ〜,そうですか,じゃ本店か,別の支店に…」
 「いえ,別のところへ…」
 「そうなんですか〜,それはまた…,本当にお疲れさまでした」
 「ありがとうございます」

 そんな店長さんからの意外な返事を聞きながらも,本当にその一年間のお仕事の大変さを想像して,僕は心の中で大きな表彰状をあげたくなってしまった。

 2年目からのUTカフェは,営業時間をずらして,夜の8時には閉店することになったらしい。一年目の夜の静けさを考えれば当然の変更かも知れない。90分早く終えれば,それだけ次の日の準備も仕込みも早く取り掛かれる。そうやって,UTカフェはいまも賑やかに営業しているのだろう。

 夜遅くまで頑張っていたあの店長さんのその後はもちろん知らないが,きっとまた頑張られているに違いない。そんな店長さんが私にとっては想い出深い。

 賑やかなUTカフェの裏側の小さな物語である。

ジャーナリズム学校の新必需品

School of Journalism to require iPod touch or iPhone for students
http://www.columbiamissourian.com/stories/2009/05/07/school-journalism-requires-ipod-touch/

 ふーむ,日本だとすでに携帯電話が席巻しているから別に目新しいことではないかも知れないけれど,iPod touchとIPhoneは高度な情報端末なので,進化次第では日本の携帯電話をあっという間に抜くかも…。結局,プラットフォームとしてデザインされているかどうかで差がついちゃうんだ。

 ケータイとかマンガ・アニメがあると思ってあぐらかいてると,すぐに置いていかれるかもね。

教員養成フレンドシップ事業

 新人さんやモグリでもない限り,教員養成大学学部関係者なら文部科学省による「フレンドシップ事業」というものを聞いたことがあるはずである。平成9年度から始まり,もう12年目になるはずだ。

 教員養成課程に在籍する学生達が,教職に就く前にもっと子どもたちと触れ合うことを通して教育現場を担う人間としての経験を積みたいと願って生まれた様々な教育活動や動向を捉えて,当時の文部省によって補助事業化されたのが「教員養成系大学学部フレンドシップ事業」である。

 事業化されれば,当然,大学の教育課程内に位置づけが与えられ,講義や演習などの単位化が含まれる。制度的な持続性を確保するというメリットがあると同時に,このようなやり方は,意欲に温度差のある学生達を撹拌して全体の志気を下げるデメリットもある。

 そこで,フレンドシップ事業がとった方策は,単位化された課程内の養成活動だけでなく,むしろ学生達が主体となって取り組むボランティア的な教育実践活動を積極的に支援することだった。

 意欲ある学生達は,学生主体の教育実践活動に,選択科目を履修する形で参加するもよいし,あるいは科目履修はしないが活動自体に直接参加できたりする。そこまで求めない学生は,距離をとりながら周辺で見ているという関係になろう。

 実際は各大学で事情が異なるであろうが,フレンドシップ事業はそういう形を許容してきたと考える。この事業が10年を越えて続いているのは,そうしたスタンスを貫いてきたことにあるのではないかと思う(もちろん関係の先生方の熱意が支えてきたことも忘れてはならないだろう)。

 学生主体の教育実践活動は様々あるが,そうした活動がつながりをつくって「全国フレンドシップ活動」という大きな動きも断続的ながら続いているようだ。今年3月には信州大学を舞台に「全国フレンドシップ活動in信州」が行なわれたようである。

 在り方懇や大学GPなんてものが始まる前から,教員養成系大学学部ではボトムアップ的に志しある実践が生まれ,その中心部分で学生達が活躍していた。そして今現在も,多くの人々がこの事業に関わり,それぞれのスタンスと距離で,教育への貢献の努力を続けている。そのことを何度でも繰り返して思い出すべきと思う。

母校60周年

 大学の歴史は奥深く,制度成立の歴史も興味深いものがあるが,昭和24年(西暦1949年)に日本で新制大学がスタートしたことは,何かの機会に聞いたことがあるかも知れない。

 というのも今年2009年は,多くの(国公立)大学が60周年記念と銘打って,大なり小なり記念の取り組みをしているので,大学教育に関わった人ならば,そういう便りや話題に触れたりしているのではないかと思うからである。あちこちの大学ホームページもこれを機にリニューアルしているようだ。

 私の母校・信州大学も,そのような記念行事等を展開している。

 ホームページを覗いたら「卒業生メッセージ大募集」とあって,各学部出身のOG/OBが書き込みをしているようだ。

 まだ十分メッセージが集まっているとはいえず,それほど投稿が掲載されていない…。「時代」としての大学は各個人にとって大きいものの,「機関」としての大学がいかに学生から遠いのかが,如実に分かってしまうところがこういう企画の悲しいところである。ええ,卒業生を大事にしない日頃の行いへの皮肉である(ははは…)。

 ただ,嬉しいことも発見した。

 教員養成フレンドシップ事業の一つ「信大YOU遊世間(ワールド)」という活動に対して,「信州大学功労賞」が贈られたというのである。

 活動内容は変わってしまっているのだけれども,私自身がこの活動の前身である「YOU遊サタデー」の立ち上げメンバーだったこともあり,ネーミングにその痕跡を感じるというだけで後輩達が行なっている現在の「信大YOU遊世間(ワールド)」に親近感を抱く。ただホームページによれば,「今年で16年目を迎えた学生主体の地域貢献活動…」とあるから,私たちが立ち上げたときからをカウントしていると考えてよさそうだ。

 ようやく大学から公式に評価されたというわけである。これに関わった学生の数は16年でどれくらいになるだろう。もちろんこの活動が続いたのはひとえに16年も学生達を引っ張ってくれた土井進先生(写真左)の功労があってのことだ。そしてこれに関わったすべての人たちの協力があってのことだ。

 あれから16年である。まったく…。

 さて,みんな,自分自身の定期点検は終わった?これからまだまだ走り続けますよ。

 どんな道を歩んでいようが,僕らは仲間だし,そしてこれからもそれぞれの志を持って歩んでいこう。そうすることが何よりも自身やお互いに対する功労賞だと思う。