教員養成フレンドシップ事業

 新人さんやモグリでもない限り,教員養成大学学部関係者なら文部科学省による「フレンドシップ事業」というものを聞いたことがあるはずである。平成9年度から始まり,もう12年目になるはずだ。

 教員養成課程に在籍する学生達が,教職に就く前にもっと子どもたちと触れ合うことを通して教育現場を担う人間としての経験を積みたいと願って生まれた様々な教育活動や動向を捉えて,当時の文部省によって補助事業化されたのが「教員養成系大学学部フレンドシップ事業」である。

 事業化されれば,当然,大学の教育課程内に位置づけが与えられ,講義や演習などの単位化が含まれる。制度的な持続性を確保するというメリットがあると同時に,このようなやり方は,意欲に温度差のある学生達を撹拌して全体の志気を下げるデメリットもある。

 そこで,フレンドシップ事業がとった方策は,単位化された課程内の養成活動だけでなく,むしろ学生達が主体となって取り組むボランティア的な教育実践活動を積極的に支援することだった。

 意欲ある学生達は,学生主体の教育実践活動に,選択科目を履修する形で参加するもよいし,あるいは科目履修はしないが活動自体に直接参加できたりする。そこまで求めない学生は,距離をとりながら周辺で見ているという関係になろう。

 実際は各大学で事情が異なるであろうが,フレンドシップ事業はそういう形を許容してきたと考える。この事業が10年を越えて続いているのは,そうしたスタンスを貫いてきたことにあるのではないかと思う(もちろん関係の先生方の熱意が支えてきたことも忘れてはならないだろう)。

 学生主体の教育実践活動は様々あるが,そうした活動がつながりをつくって「全国フレンドシップ活動」という大きな動きも断続的ながら続いているようだ。今年3月には信州大学を舞台に「全国フレンドシップ活動in信州」が行なわれたようである。

 在り方懇や大学GPなんてものが始まる前から,教員養成系大学学部ではボトムアップ的に志しある実践が生まれ,その中心部分で学生達が活躍していた。そして今現在も,多くの人々がこの事業に関わり,それぞれのスタンスと距離で,教育への貢献の努力を続けている。そのことを何度でも繰り返して思い出すべきと思う。