月別アーカイブ: 2009年8月

小学校英語指導者認定

小学校英語指導者認定協議会(J-SHINE)
http://www.j-shine.org/

 2011年度の全面実施に向けて,すでに小学校では外国語活動(英語活動)の取り組みがほとんどの地域で始まっている。文部科学省も「小学校外国語活動サイト」を立ち上げたり,「小学校外国語活動研修ガイドブック」や現場用の教材「英語ノート」(困ったことに文部科学省は公開を終了してしまった。税金でつくったという意識に欠けてるのは毎度のことか…)を用意するなど,お膳立てをしている。

 現場の先生達の取り組みは様々である。私が見聞きした範囲でも,どんな取り組みをしてよいか悩んでいる学校や,市内の先生達の研究活動に位置づけて取り組んでいる学校などがあった。

 教職を目指している学生達の中にも,小学校外国語活動に関心を持っている人がいて,どうすれば小学校の英語の先生になれる
のか気にしていた。

 あまり話題にされないが,2011年度から始まる小学校外国語活動を担当する教員は,特別な資格や課程を経たわけではない。現場の代表教員が官製研修に参加した成果を,校内研修の場で共有しながら指導方法を身に付ける形で対応しているに過ぎない。そこに外国人のALT (Assistant Language Teacher),つまり外国語指導助手がやってきて一緒に活動を進めていくのである。

 ところが,最近の報道によると,外国人ALTの定着率がよくないらしい(読売新聞「小学英語は民間頼み、必修化控えて質が課題」)。記事が指摘するように,安定した教育活動や質に問題が出てくる可能性がある。
 ただ,辞めてしまう外国人の気持ちも分からないではない。会社組織みたいな雰囲気の日本の学校は,外国人達が経験して知る学校の雰囲気とはまるで異なる。授業時間外の職員室で居づらそうにしている外国人助手を何人も目撃したことがある。私は,報酬の問題よりも,教育の場である学校の雰囲気に対する不満の方が大きいのではないかと思っている。

 さて,外国人ALTの力を借りるだけでなく,日本人教師の方でも民間の力を借りる動きは出てきている。2003年からNPO団体「小学校英語指導者認定協議会(J-SHINE)」が動いており,共通カリキュラムに基づいて認定団体や認定者管理を行なっている。

 サイトの情報を見ると,様々な民間の英語教育に関わる人々によって設立され,そこにいろんな団体が登録しているといった風である。語学出版社のアルク,英会話のイーオン,教育商社のベネッセなどの名前も見える。

 J-SHINEが行なっているのは,団体の認定と,その認定団体が認定した指導者の認定管理とのこと。資格試験のような形ではなく,認定団体が用意したカリキュラムを受講し,推薦された者が指導者認定を受ける仕組みらしい。

 「小学校英語指導者」資格を基本として,基本資格の手前にあたる「小学校英語準認定指導者」資格と,基本資格取得後4年以上の「小学校英語上級指導者」資格がある。

 この認定資格は,英語指導者の質の確保という目的のために民間が行なっている努力の一つであり,これが教員になるための必須ではない。これを持っていても教員として採用される保証もない。

 ただし,J-SHINEと登録団体が各都道府県教育委員会とパイプを保つことによって,採用に関する情報を連絡してくれたりする可能性が高まるので,採用チャンスを見逃すという損は避けられる。場合によっては,資格自体が有利に働くこともあるだろう。その程度である。

 興味深かったのは,J-SHINEのトレーナー資格試験に関する概要記述のところである。指導者の認定も気になるところではあるが,指導者を指導・育成する者の存在をどうするのかも大きな関心事である。鶏と卵のどちらが先か。

 トレーナー検定試験の受験資格を見ると,やはり経験豊富で各種の英語検定試験でそれなりの点数をとっていることが条件のようだ。基本的には従来から英語教育に携わっている方々を受験者として想定しているわけだから,これが特別高いハードルということもないのだろう。

 それよりも,試験のための参考文献が紹介されている点に興味が向いた。小学校英語に関して気になっている方々は,これらについても目を通しておくとよいのかも知れない。

(以下引用) 
■試験のための必読書と参考文献

【必読書】
小池生夫(編集主幹)『第二言語習得研究の現在』第4章から第13章まで(大修館書店)
松川禮子『明日の小学校英語教育を拓く』(アプリコット)
M. Slattery & J. Wills English for Primary Teachers:A handbook of activities & classroom language. (Oxford University Press)

【参考文献】
大久保洋子 『児童英語キーワードハンドブック』(ピアソンエデュケーション)
吉田研作 『新しい英語教育へのチャレンジ』(くもん出版)
中山兼芳 『児童英語教育を学ぶ人のために』(世界思想社)
文部科学省中央教育審議会関連サイト
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gaikokugo/index.htm
M.Celece-Murcia Ed. Teaching English as a Second or Foreign Language, Third Ed. (HEINLE & HEINLE)

葉月九日

 仕事ついでにしばし里帰り。のんびり過ごせばよいのだが,実家に戻ると「のんびり」というよりは「だらけ」てしまうので,実家に戻るのは気持ちよくない。こもりがちになるし,あっという間に時間が過ぎるのも難点だ。

 それでも,世間には里帰りできない人もいると考えれば,集中講義のおかげで強制的に里帰りできるのは有り難い。まあ,できるだけ,だらけないようにしよう。ぼちぼち徳島に戻るべき頃だが,天候がすぐれないので様子を見ながら移動日を決める。

 最近は,少しずつ歴史を気にして学んでいる。

 私自身が曖昧なアイデンティティの上に生きているので,若いうちは勢いだけで物事を考えても理屈として正しければ問題ないと思っていたが,歳をとるにつれて何を拠り所にすればよいのか見えなくなってきてしまった。

 結局,歴史との対話を通して,先を見通すしかないのかなと。

 とはいえ,歴史を勉強する余裕もない,目まぐるしい毎日が過ぎる。

 あまり大きなことを考えず,せっかく田舎に越したのだから,

 あとはしがない大学教員として静かに暮らそうか。

 それが分相応なのかなとも思う。

 ああ,だらけるとマイナス思考だ。温泉でも行って生き返りたい…。

もうワカモノではない

 なんて残念な気持ちになるニュースが続くのだろうと思う。テレビやパソコンを消せば何事もない時間が過ぎるとはいえ,世間に流れているあの話題この話題を眼にすると気分はすぐれない。

 芸能人と麻薬の問題はやたら目に付いた。そういう怪しい業界なのだと理解はしているが,その無自覚さに呆れる。そして悲しいのは,どちらも「子の親」になった者の起こした事件だということ。芸能人であるがゆえに「恥ずかしさ」も吹っ飛んでしまっていたのだろうか。

 もちろん,すべての出来事は小さな出来事の積み重ねで起こるのだから,個人的な出来事や状況が少しずつ本人達を追い詰めたのだろうと思う。どこかに踏みとどまるべきポイントがあったのだろうけれども,それさえも目まぐるしく一瞬一瞬が過ぎゆく中で捉えられなかったのだろう。

 結果的には,残念な出来事として私たちの目の前に現れてしまった。

 ちなみに,逃走劇を演じた彼女は,私と同い年である。

 そのことも私に空しい気持ちを運んでくる。

 自分の役目を粛々と演じていくことだけ。

 そのことだけが私たちの手もとに残る。

 けれども,それを自覚することが一番難しい。

葉月七日

 集中講義「カリキュラム論」が無事終了した。

 半期を通して取り組むのも悪くないが,短期間集中して取り組むのもやり甲斐がある。

 学生達の感想も「あっという間だった」「合宿みたいだった」と達成感に満ちていた。

 カリキュラム研究の成果そのものを勉強するよりも,それらを下敷きに学習指導案や
評価規準表をつくる課題に取り組むことを軸とした授業であった。

 もちろん各教科教育法のように専門内容の指導は出来ないが,どのように授業を構成
していくかを意識しながら課題に取り組む。

 集中だから質問があればじっくりと相談することが出来る。学生達が考えた指導案を
叩き台に,一緒にアイデアを膨らませていく作業は,なかなか楽しい。

 授業最後のコメントに「夢に出てくるほど印象に残りました」と書いてあったのには
笑った。それほど苦しめていたのかも知れない。

 「カリキュラム論,やってみると私が思っていたのとは違って,とても範囲が広いもの
でした。ひとことでカリキュラム論といってもいろいろな方向から授業のやり方を考えて
いく深い学問なんだという印象をうけました。」

 そのことが伝わったのであれば,今回の講義も大成功である。

 来年の夏も楽しみだ。

NHKはパロディにご執心

アルクメデス
http://www.nhk.or.jp/medes/

 NHKには良いことをしている人もいれば悪いことをしている人もいたりする。まあ,悪いことには災いが降ってくるので,思う存分苦しんでいただいて,良いことをしている部分や楽しい挑戦は応援したいものである。まあ,受信料不払いされない程度に。

 NHKは「番組たまご」という枠で,いろいろな番組企画を挑戦しているが,今夜もまた変な番組を放送していた。いかにも制作効率の悪そうな変なパロディ・バラエティ・クイズ番組「アルクメデス」である。

 私は,この手のまじめにばかばかしいのが好きだが,思うにこのパロディが通じるのは30代以上なのではないかと思うと,ちょっと悲しさも感じる。「連想ゲーム」を知ってる世代って…。

葉月三日

 名古屋で集中講義が始まる。

 猛暑の中を駆け抜ける4日間は,意外なほどあっという間に終わる。

 縦横無尽に多分野の知見を紹介し,「カリキュラム論」を展開する。

 毎年,新しい内容を入れ込もうとするが,大概オーバーフローする。

 4日間に半期分の情報量や作業をそのまま課すことは難しい。

 知識が染み込む時間が絶対的に足りない。

 だから,浸透率を上げるための工夫があれこれと必要になる。

 私自身の力量不足もあり,十分な質や量を提供できていない。

 それとも,高望みしすぎなのだろうか…。

 山積する課題に立ち止まるのではなく,解決に向けて前進すること。

 その姿勢を養うために必要な事柄は,私自身がそのことに対して

 真摯に向き合う姿勢を維持することより他はない。

 毎年の集中講義は,そのことを確認する貴重な機会となっている。