小学校英語指導者認定

小学校英語指導者認定協議会(J-SHINE)
http://www.j-shine.org/

 2011年度の全面実施に向けて,すでに小学校では外国語活動(英語活動)の取り組みがほとんどの地域で始まっている。文部科学省も「小学校外国語活動サイト」を立ち上げたり,「小学校外国語活動研修ガイドブック」や現場用の教材「英語ノート」(困ったことに文部科学省は公開を終了してしまった。税金でつくったという意識に欠けてるのは毎度のことか…)を用意するなど,お膳立てをしている。

 現場の先生達の取り組みは様々である。私が見聞きした範囲でも,どんな取り組みをしてよいか悩んでいる学校や,市内の先生達の研究活動に位置づけて取り組んでいる学校などがあった。

 教職を目指している学生達の中にも,小学校外国語活動に関心を持っている人がいて,どうすれば小学校の英語の先生になれる
のか気にしていた。

 あまり話題にされないが,2011年度から始まる小学校外国語活動を担当する教員は,特別な資格や課程を経たわけではない。現場の代表教員が官製研修に参加した成果を,校内研修の場で共有しながら指導方法を身に付ける形で対応しているに過ぎない。そこに外国人のALT (Assistant Language Teacher),つまり外国語指導助手がやってきて一緒に活動を進めていくのである。

 ところが,最近の報道によると,外国人ALTの定着率がよくないらしい(読売新聞「小学英語は民間頼み、必修化控えて質が課題」)。記事が指摘するように,安定した教育活動や質に問題が出てくる可能性がある。
 ただ,辞めてしまう外国人の気持ちも分からないではない。会社組織みたいな雰囲気の日本の学校は,外国人達が経験して知る学校の雰囲気とはまるで異なる。授業時間外の職員室で居づらそうにしている外国人助手を何人も目撃したことがある。私は,報酬の問題よりも,教育の場である学校の雰囲気に対する不満の方が大きいのではないかと思っている。

 さて,外国人ALTの力を借りるだけでなく,日本人教師の方でも民間の力を借りる動きは出てきている。2003年からNPO団体「小学校英語指導者認定協議会(J-SHINE)」が動いており,共通カリキュラムに基づいて認定団体や認定者管理を行なっている。

 サイトの情報を見ると,様々な民間の英語教育に関わる人々によって設立され,そこにいろんな団体が登録しているといった風である。語学出版社のアルク,英会話のイーオン,教育商社のベネッセなどの名前も見える。

 J-SHINEが行なっているのは,団体の認定と,その認定団体が認定した指導者の認定管理とのこと。資格試験のような形ではなく,認定団体が用意したカリキュラムを受講し,推薦された者が指導者認定を受ける仕組みらしい。

 「小学校英語指導者」資格を基本として,基本資格の手前にあたる「小学校英語準認定指導者」資格と,基本資格取得後4年以上の「小学校英語上級指導者」資格がある。

 この認定資格は,英語指導者の質の確保という目的のために民間が行なっている努力の一つであり,これが教員になるための必須ではない。これを持っていても教員として採用される保証もない。

 ただし,J-SHINEと登録団体が各都道府県教育委員会とパイプを保つことによって,採用に関する情報を連絡してくれたりする可能性が高まるので,採用チャンスを見逃すという損は避けられる。場合によっては,資格自体が有利に働くこともあるだろう。その程度である。

 興味深かったのは,J-SHINEのトレーナー資格試験に関する概要記述のところである。指導者の認定も気になるところではあるが,指導者を指導・育成する者の存在をどうするのかも大きな関心事である。鶏と卵のどちらが先か。

 トレーナー検定試験の受験資格を見ると,やはり経験豊富で各種の英語検定試験でそれなりの点数をとっていることが条件のようだ。基本的には従来から英語教育に携わっている方々を受験者として想定しているわけだから,これが特別高いハードルということもないのだろう。

 それよりも,試験のための参考文献が紹介されている点に興味が向いた。小学校英語に関して気になっている方々は,これらについても目を通しておくとよいのかも知れない。

(以下引用) 
■試験のための必読書と参考文献

【必読書】
小池生夫(編集主幹)『第二言語習得研究の現在』第4章から第13章まで(大修館書店)
松川禮子『明日の小学校英語教育を拓く』(アプリコット)
M. Slattery & J. Wills English for Primary Teachers:A handbook of activities & classroom language. (Oxford University Press)

【参考文献】
大久保洋子 『児童英語キーワードハンドブック』(ピアソンエデュケーション)
吉田研作 『新しい英語教育へのチャレンジ』(くもん出版)
中山兼芳 『児童英語教育を学ぶ人のために』(世界思想社)
文部科学省中央教育審議会関連サイト
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gaikokugo/index.htm
M.Celece-Murcia Ed. Teaching English as a Second or Foreign Language, Third Ed. (HEINLE & HEINLE)