久しぶりに布貼りバインダーを買った。布貼りバインダーには特別な思い入れがある。その不易なデザインに安心感を感じていることもそうだが,私が学部時代にとり続けてきた講義ノートを今も実家で大事に守っているのが布貼りバインダーなのである。
浪人時代と学部時代に,私はルーズリーフを使ってノートをとっていた。それを閉じるのはたまたま購入した無印良品のバインダー。これも無地の茶色いシンプルなバインダーで,日々の講義の内容はそこへ取り込まれていった。
学部時代は講義をノートにまとめるのが楽しかった。大いなる世間知らずであった私は,大学の講義で接するものが新鮮で仕方なかったし,その雑多な学問の破片を書き留めるためにルーズリーフを使ってどんどん記録していたが,そうやって自分なりにつくったノートを眺めるのも好きだった。たまに学部時代のノートを覗くと,そのときの楽しさがよみがえるときがある。
要するに,私は小中高校と大した勉強をしなかった分だけ基本的な知識が欠けてはいたが,その後運良く入った大学の教養部で受けた講義で展開していた思考を巡らす学問世界に魅了されたのであった。そして,その出会いや思いの記録を保管しているのが布貼りバインダーというわけである。
学部を卒業し続く大学院を後にしてから,いつしかルーズリーフでノートをとることをやめて,キャンパスノートを使うようになっていた。しかし,不連続で雑多な記録をする癖のため,キャンパスノート内が混乱しやすく,記録保管には不都合な状態。しかし,社会人になったことによる慌ただしさ,短大教員として過ごすめまぐるしい日々のために,そこを騙しだましやってきたツケが貯まったように思う。
もう一度,ルーズリーフを主体にしたノートづくりに戻ってみようと思った。表現物の作成にパソコンを活用するのは得意なのだが,どうも思考の道具として,パソコンより紙ノートとの方が相性が良いらしい。
学部や大学院で貯蓄した知識のタネは,ほとんど使い果たしたも同然。大学教員生活を8年続けても,大した貯蓄にならないから,本当に貧乏暇なしである。再度,貯蓄に向けて努力をしないと,この世界で生き残るのは難しいと思う次第である。私にとって布貼り場インターは,その気持ちを高めるためのアイテムなのだ。