テレビ東京のニュース番組「ワールド・ビジネス・サテライト(WBS)」のコーナーに内田洋行社長である柏原孝氏が登場した(7/17)。同系列のBSジャパンというチャネルで放送する「小谷真生子のKANDAN」という番組を予告するコーナーのため,インタビューの一部を切り出した映像が流れたわけである。
そのWBSで流れたインタビュー部分で,柏原社長は地方の教育格差に懸念を持っているとして,それは地方財政の問題だと指摘する。その流れの中で,地方財政にばらつきがあることが問題で,国からは教育費が地方交付金という形で地方に渡されることを説明した。しかし,「お使いになるのは地方でお決めになる」ため,教育事業の差が出てくる可能性があるのだとする。
これは全く正しい説明と指摘なのだが,この次あたりから怪しくなっている。
「以前は,あの,ま,補助金という時代がありまして…そのときには,まあその,そのお金でこれを買わなければならないという風になってましたから,その時にはずいぶんとそういう教育設備の普及が進みました」
小谷キャスターが,「また改めてそういう方向に変えるべきとお考えですか?」と訪ねると,柏原社長は「そういう部分があると…もっと,あの,公平感,あるいはスピード,こういうものが,まあ,是正されると思います」と返している。
長いインタビューの一部分を切り出したのだから,編集が加わって,もともとの意味や文脈が落ちてしまっている可能性があるが,それにしてもこのような誤解を招くような伝わり方を容認するのはよくない。まして,この分野でイニシアチブをとっている内田洋行としては,厳密に言えば,抗議するか,訂正させるべきである。
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「補助金という時代がありまして…」という部分で生まれるのは,「いまの時代は補助金がない」ような誤解である。これは正しくない。
むしろこの教育の情報化分野に関して言えば,ずっと補助金は出続けていたのであり,それを出し続けていた文部科学省や財務省の関係者の苦労は,もっと喧伝されて良いはずである。
ただし「全額補助」ではない。だから,柏原社長が(いつそんな事実があったのか短時間で調べた範囲では発見できなかったのだが)かつて全額補助した時期があったという記憶に基づいてしゃべっているのだとすれば,かつては全額補助時代があったということを話していた文脈かも知れない。
それでも,現在でも「2分の1補助」は存在しているし,最初に指摘した地方交付金部分で,残りの2分の1も補助してもらえるようになったのだから,本来ならば,そのことをもっと主張して地方財政責任者やそれを監視する市民に対してアピールすべきだったのではないか。
インタビュー本編でそのような主張もなされていたのかも知れないが,それならば,なおさら地上波における番宣コーナーでの短い引用が引き起こす誤解に対して懸念を抱き,抗議するか,もっと別の方法でアピールすべきである。
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国民は,国の予算となると,とても大ざっぱな理解しか持っていない。
なぜ定額給付金は,予算案が可決したら,てんやわんやはあったけれども,地方自治体が動き出して給付が実現したのか。
一方,同じように予算案が可決したのに,学校ICT化(情報機器導入)に対する予算は,どうして地方ごとに格差があったり,そのうち使われたかどうかも分からなくなるのか。
前者は「全額補助」だった。後者は「半分補助・半分交付金」だったりする。
そのことの違いが何を意味するのか,誰も話題にしない。
整備されないのは「補助金がないからだって,内田洋行の社長がテレビで話してたよ」と誤解した誰かが言って,「ああそうなんだ,まったく国はどうして教育にお金使わないのかね」って嘆いて終わる。
ちょっと待ってよ。
補助金はあるし,しかも実質的には「全額補助相当」である。
いま現実に起こっていることを,ちゃんと知らせないとダメである。
文部科学省は,申請締め切りを8月21日までに延ばした。
まだ申請していない各地方の教育委員会事務局の担当者は,一生懸命に申請の準備をしているだろうか。そういうところを人々がもっと鼓舞しないといけない。
そのためには,正しい情報と正しい理解が実現されなければならない。もうマスコミに振り回されてやられちゃいましたというのは無しにして欲しい。