文月三一日

 なんとか採点と成績処理作業が終わった。要領の良い皆さんは,日頃から受講記録や課題達成を点数化して,計算式に放り込んだら自動的に成績が付くようにされているのかも知れない。
  
 私も大ざっぱな計算式は描いてあるのだが,なにせ授業も試験も生ものみたいに考える人間なので,毎回最後になってから計算式を最適化するのに時間をかける要領の悪さがある。

 結局,職場で夜を明かして成績をつけ,学部学科ごとに分かれたフロッピーディスク内に入力していく地道な作業を終えた。後期からは学内ネット上で入力できるようになるらしいが,昨年度からそう言われ続けているとかいないとか…。物事を推し進めるのも阻むのも,最後にゃ人間。そして私は睡眠時間が欲しい。

 八月がやって来る。

 夏は,毎年恒例のカリキュラム論の集中講義がある。

 今年度で七年目だ。

 この七年の間に,仕事に悩み,仕事を辞め,単身上京し,学業に励み,再び職を得て,いまに至る。

 すべてを無くす覚悟で退職したのに,唯一残っていたのが「夏の集中講義」だった。

 都会で困ったときに「非常勤講師」という肩書きが我が身を助けた。

 そしてこの七年間,夏になると見慣れた場所でいつもの授業が始まる。

 そんな変わらぬ場所があることのどれほど有り難いことか。

 今年も八月がやって来る。