世界と繋がらない日本

 iPadに表計算ソフト「Numbers」を入れて,受講生名簿を扱い始めている。「一枚板デバイス」の携帯性・可搬性はノートパソコンとは明らかに異なっており,存在感はクリップボード(用箋ばさみ)に近い。

 そうなると,画面との距離のとり方も変わってくる。直接のタッチ操作であることが逆に表示物との余裕の確保を可能にしているように思える。ノートパソコンでは,どうしても画面に釘付けになる傾向があるのだが,iPadだと,他からの視線が入り込む余地を生んでいる。

 新製品ゆえ,目新しさからのめり込む体験をしている人も多いが,やがて見慣れてくれば日常に溶け込み,デバイス自体にはそれほど特別な関心を向けなくなるのではないかと思える。

 明日(22日)に「学校教育の情報化に関する懇談会」が行なわれる。

 文部科学省は,このところネットの力を活用することをさらに加速させており,この懇談会もネットで中継されることが予告されている。画期的といえば画期的。教育の情報化に関して以前から触れてきた私たちにすれば,ようやくの前進だが,世間一般の認識が追いつくことも重要な要素と考えれば,これでも先進的ということになる。

 懇談会は主に

(1)授業におけるICTの活用について(デジタル教科書・教材、情報端末・デジタル機器、学校・教員等の在り方を含む)
(2)ICTを活用した校務支援について
(3)ICTの活用に関する教員へのサポート等について

 を話し合うとされている。学校教育の情報化に以前から関心を持つ人々にとっては,出てくる話も想像できる範囲だと思われ,問題はそれをどう地方公共団体が理解して具体的な施策として学校現場に届くよう行動してくれるのかだが,広くコンセンサスを得るためには,少し遠回りも必要というところだろう。

 正直なところ,ここまで政治状況が混迷し,財政的な困難が深刻化している中では,大胆な提案も難しく,議論の展開も空回りがちになると予想される。ICT関連が総務省にお株を奪われたことや,過去にはメディア教育開発センターを廃止に追いやったツケをどう払うのか等,本来であれば議論されてしかるべきなのだろうが,おそらくそういう部分は触れない範囲で意見交換が行なわれるのだろう。

 日本という国の国際的なプレゼンスという観点で学校教育の情報化をどう考えるのか,そういった水準で懇談会の意見が交わされることを期待してやまない。世界の人々は,情報ツールをあっさりと利用して得られるものを得ようとしている。慎重なのが日本の取り柄とはいえ,そうこうしているうちに日本の情報化が世界のそれに付いていけてないことは,相変わらず国内志向の閉鎖性を維持することにしか繋がらないと思う。

 日本版のBecta(英)のような組織をつくって,もっとガンガンやるべきではないのか。財団法人だけどJAPETはもう少し政治的に動いてもよいように思うのだが,メンバーには日本の有力なメーカーが揃いすぎていて結果的に誰も動けなかったし,そうこうしているうちに韓国など海外勢が市場を席巻し始めて自社存続の危機意識から足並みが揃えられなくなって…。だれかビジョンを語って行動し,この領域に骨をうずめる覚悟の人を立てないとダメだなと思う。