情報と接する自分を見直す

 新型インフルエンザ(swine flu)に関する事態は,私たちの日頃の情報収集に関して見直してみる良い機会を提供しているようにも思う。私たちはどこからどんな情報を得て,どう扱い,どう判断して行動に結び付けるべきなのか。特に,健康や命に関わる事態だけに,情報モラルにも関わる。

 未整理だが,私たちは次のような情報をあちこちで見たり聞いたりすることになった。

 ・新型インフルエンザ自体の知識(型や毒性,感染力)
 ・今回の感染拡大が起こった,そもそもの原因(に関する推察)
 ・感染者をめぐる情報
 ・予防など対策の方法
 ・感染範囲の最新状況
 ・感染した場合の症状や推測される結果
 ・世間,機関,組織などの方針
 ・具体的な対応方法
 ・正しい情報の取得と冷静な対応や行動の必要性
 ・事態や状況に対する風説
 etc.

 興味深いのは,あらかた見たり聞いたりしたあとになると,ほとんどのメディアで流れている情報は二次的なものに思えて,緊迫感が一気に失せてしまうことである。あとは,「新たな感染者の確認」というニュースの繰り返しにみえる。

 そうなったとき,何をどのように判断して,どのような行動をとるのかが問われる。そして,今回の全体状況を見た時に,日本の私たちの行動パターンがあらためて浮かび上がったようにも思う。明らかになっている感染回避方法をとって安心を確保しようとする行動自体は当たり前なことだと思うが,その広がり方を見ると,いかにメディアの影響が強いかがわかる。

 思考実験をしてみるとよいのだが,普通のインフルエンザが流行しているというときのことを思い返して,私たちはこのような反応をしたことがあっただろうか。その上で,普通のインフルエンザが流行している時に,今回の新型インフルエンザと同じ反応をするためには,どんな条件が必要だろうか。

 インフルエンザが普通か新型かに関わらず,感染力や毒性はそれぞれ異なり,それぞれの時に適切に対応しなければならない。インフルエンザに関する「正確な情報」は,厚生労働省の新型インフルエンザ情報ページなどの公的機関情報を頼ることになろう。

 それでも私たちは,正確な知識がそこにあっても,報道量やメディアの騒ぎ方といったところに,かなり影響を受けて,行動してしまっているのだなと思う。

 そのことの良し悪しを決する必要はなく,自分が納得できる形で問題の発生を防いだり,事態への対応を的確に行なえればよいと思う。逆に,それが達成できないのであれば情報源や判断や行動に問題があるということでしかない。結果が出てみないと分からないという世界だが,それゆえに人々はわかりやすい情報に飛びつくのかも知れない。

 まだ考えるべきことはあるが,またいつもの一週間が慌ただしく始まる。