何かを研究するという場合に,現状を把握することはとても重要な出発点になります。現状を把握する調査結果自体が研究成果になることもありますが,普通は,何か別の目的や問題をやっつけるための足がかりにすることが多いでしょう。
課題にも拠りますが,アンケートを行なうというのはごく自然な発想だし,現状を把握するベーシックな方法の一つです。社会調査と呼んで,そのための資格(社会調査士)もあります。
アンケート調査をする場合にも,具体的な方法はいろいろあります。印刷したアンケート用紙(質問紙)を郵送して回答を返してもらうのか,持参して回答者を捕まえて質問するのか,あるいは電話をかけて質問するといった方法もあります。
「Webページ上に質問を用意して,ネット経由で回答してもらえないかな?」
パソコンを使わなければならない条件が,アンケート調査自体に与える影響を事前に考慮して問題が無いのであれば,インターネットを活用したアンケート調査は魅力的な方法です。
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以前は,ホームページの作り方やCGIの処理の方法など,面倒な知識を知らなければならない時期もありました。しかし,今日では,かなり手軽にWebでアンケート調査を実施できるようになっています。
1) ネット調査サービスを利用して,調査結果を受けとる
2) 自分で回答者を集めて,アンケート回答システムを利用して,回答してもらう
1)は調査会社を利用する方法です。調査会社がインターネットを使うというだけで,従来の調査会社への委託と変わりありません。ただし,インターネットを使った時間短縮が可能なので,大規模調査を短時間で実施できるメリットがあります。
2)は自分で調査する方法です。質問回答などの手続きをインターネット上で行なえるため,実施コストを抑えることが出来ます。ただし,対象者集めなどの苦労は従来通りです。
1)であれば,日経リサーチやマクロミル,Yahoo!リサーチといった会社やサービスがあります。
2)で利用できる無料のシステムとしては,「質問くん」や旧NIMEが提供しているREASがあります。
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でも,もっと簡単なのは,Googleドキュメントのサービスを使うことです。すでにGoogleのアカウントを持っているなら,こちらは本当に手軽です。
Googleドキュメント自体は,ネット上で使えるワープロや表計算,プレゼンテーションソフトのセットです。この中の表計算(スプレッドシート)の機能には「フォーム」というものをつくる機能も付いているのです。
この「フォーム」を使えばアンケート画面をつくれます。(画面例)
画面例を見ていただけば分かるように,なかなかシンプルにつくれます。質問数の多いアンケートや分岐が複雑になるようなアンケートには向きませんが,簡単な質問紙であれば,これで十分です。
質問画面の作成はWebの画面を見ながらつくることができ,結果はスプレッドシートに追加されていきますので,必要があればデータをエクセルファイルとしてダウンロードして処理することも可能です。
結果を円グラフや棒グラフで表示させることも出来るので,授業中のレスポンスアナライザとしても使えます。REASと同じように,授業の評価システムとして利用することも出来るでしょう。
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アンケート調査は,方法自体がシンプルなだけに調査項目の設計と集計解釈などが要になります。そのため安易なアンケート調査は逆に批判に晒されやすいのも確かです。
ただ,考えてみると,アンケート調査スキルも経験を積み重ねなければ向上しません。むしろ,失敗や成功を繰り返して調査のコツを感得していくことが大事で,それが調査リテラシーの向上にもつながるかも知れません。
インターネットのつながる環境があるならば,日常的にアンケート調査をしてみるのも面白い試みかも知れません。そのような日々の中で,アンケート調査に矛盾や不信を感じ始めた時,それが調査リテラシーに関するチャンス指導のタイミングとも言えそうです。
また,現場の教師が研究を志すにあたって,自分自身の調査スキルを高めておくにも,こうしたツールに使い慣れて,単なるアンケート調査に終わらない,その先の調査に繋げていく目を養うことが必要かも知れません。