水無月二日

 研究室の建物は,空調が中央管理方式。六月の衣替えシーズンになっても「冷房」には切り替わってくれないので,換気による室温調整が必要になる。

 研究室は扉や窓を閉めると密閉状態になる設計で,夜暗くなる頃に虫が入ってくるのを避けるために閉め切った後は,換気システムのお世話になるしかなかった。

 この換気システム。ダイキン製の立派なシステムなのだが,とりあえず手元で「自動換気モード」「全熱交換換気モード」「普通換気モード」というモード切り替えと風の強弱くらいは設定できる。

 正直なところ,モードの違いがよく分からず,熱のこもった蒸し暑い研究室を何とかするために「全ての熱を交換してくれるモードでいいかな?」と全熱交換換気モードを選んで過ごす日もあった。(時々気分で自動にしたり普通にしたりする。)

 しかし,熱が交換されるどころか,むしろ暖かくなっている気もしてきた。

 う〜む,パソコン機器とかの熱源が多いから,仕方ないのか?

 自分も暑がりだから,自分のせいか…。

 とか,いろいろ考えていた。

 しかし,六月に入って,さすがに耐えられなくなり,「いったい全熱交換換気ってなんじゃ?」と疑問を持ち始めた。それで調べてみることにした。

 その結果,大変な勘違いをしていたことがわかった。

 なんと「全熱交換換気≒室温維持換気」だった。

 ははは…。道理で暑いわけだ。

 どうも,空調と連動して室温と外温の換気による急激な温度変化を抑え,エコ空調するという代物らしい。またしても「空調管理システム」絡みである。まったく…,道具がしゃしゃり出すぎだ。

 しかもモードのネーミングがどうかしている。熱交換するのは,部屋の熱と外の熱かと思ったら,換気の際にすれ違う室内排気の熱と外吸気の熱のこと。要するにせっかく追い出した熱をご丁寧に部屋に返してくれるのである。

 教訓:背後技術のネーミングをユーザー向け機能名に使ってくれるな