東京都府中市の小学校へ出かけた。校内研究として日常的なIT活用について実践研究している学校なのだが,研究助言のお仕事を賜ったので今春から定期的に訪問させていただいている。国政のお話も必要とはいえ息が詰まることばかり。やはり現場での取り組みに接して,真摯に課題を考えることの方が大事だと思う。
今回は3年生のクラスにおける道徳の授業。一口で道徳といっても,様々な切り口があるし,描かれるイメージもいろいろだと思う。今回は,子どもたちが幸せを感じる出来事やモノなどを持ち寄って,クラスみんなに向けて表現する活動が行なわれた。そんな授業の中で,ITは,映像を映し出すためのパソコンと液晶プロジェクタ。それを操作するプレゼン用リモコン。そして準備段階では,デジカメや写真編集ソフトなどとして活躍した。
IT活用という観点からすると,シンプルで地味な活用事例ではあったけれども,随所に思い入れが鏤められていて,授業者の先生の人柄も反映された楽しい授業だった。普段当たり前のように周りに居る友達の新たな側面を知ることを通して,わたしやあなたを見直すという心情を育む活動というわけである。
IT機器を教育実践で活用する。そのためにはIT機器をもっと気軽に使える程度に,整備したり,改良改善してもらったりする必要がある。そこで,どうしても財政レベルの話が絡み出して,その効果のほどを証明しなくちゃならなくなる。
ところが,そうなると問いかけ方が「IT機器を使用したことで,何が変わったんですか?」となってしまいがち。これでは,変わる点がないのに予算出せるものか,という選択肢に優勢である。
たとえ授業の中の10分間だけにIT機器が使用された程度の授業でも,そのたった10分間にIT機器を当たり前に使えるという教育環境が実現される意義に対して全面的に肯定する態度を取りたいのである。
「日常的なIT活用という課題に立ち向かう現場の先生方を励ませる研究成果が出せるといい」という気持ちで研究を進めている先生たちの努力は,地道に進んでいる。
3年生の子どもたちが紹介してくれた写真や思い出の品々は,とても微笑ましいものだった。私自身が教育実習生として入ったクラスも小学3年生。本当は授業を客観視するのが私の仕事なのだが,子どもたちの活動そのものに見入ってしまった時間だった。