いまは遠き長野を想う

 大学の学部時代を長野県で過ごした。浪人を経て,一念発起した受験に合格してからの縁。青春時代を過ごした場所として思い入れはあるし,友人たちが活躍する土地という意味でも,大事な場所である。
 長野知事選挙が行なわれた。田中康夫氏が再選されなかったことが,全国的なニュースで流れて,ようやく選挙自体を知ることになった。思い入れのある土地とはいえ,県民でない以上,選挙の結果(県民の選択)について云々することは難しい。けれども,当選した村井仁氏の田中県政の全面否定発言を伝え聞くと,また旧世代のこうした発想が,長野をうたた寝させてしまうのかという気持ちになる。高齢も多い県だからそちらの方が気持ちいいのかも知れないが…。
 田中氏が再選すべきだったかどうかは,よくわからない。それでも地方からの国づくりという流れの中で,田中県政は確実に注目されていたし,困難が多いからこそ頑張って欲しいという気持ちであった。それなりの成果も挙げていたと思っていたのだが,さてどうだったのか。
 田中知事が誕生するときに支持していた人々について書かれている。今回,唯一支持を続けているのが平安堂の平野会長だという。私が大学時代にアルバイトしていたのが「平安堂」書店。この書店抜きにしては私の大学時代の読書環境はあり得なかったし,書物への想いを育てることはできなかった。稼いだバイト代のほとんどを社員割引を活用しながら本の購入に当てた時代が懐かしい。
 アルバイトとはいえ,旧長野店という旗艦店で働いた経験は,サービス業の奥深さを知るのに大きく役立った。私が接客業やマーケティングに関心を持っているのも,その時の経験がきっかけである。
 そんな平安堂の平野会長が支持姿勢を堅持されていると聞き,少しホッとした気持ちになった。「簡単に人を信じてはいけないが、信じたら貫き通す」と熱弁されたそうである。私もそうだと思う。