広島の放談

 さて,土産話シリーズ。この3月は福井へ出掛け,広島へと向かい,大阪にお邪魔するなど,研究関連の出張(と懇親)が続き,「ああ,僕も研究者でした,忘れてました‥‥」という気づきを得るような時間を過ごした。なにしろ自分で自分の肩をつかんで「研究者の俺,起きろー!」と振り揺らしてみても,寒がっているか,「いやいや」しているようにしか見えないし‥‥。
 広島とくれば,もちろん,W先輩に会うのが目的。なんだかんだとご無沙汰してる罪滅ぼしもあるし,なによりお祝いを直接述べたかったこともあるし,今後一緒に研究分野でも協力しようということでそのためのお話もする必要があった。地震のために少し遅れた新幹線を降りて,お待たせしていた先輩と再会。少しばかり打ち合わせした後,大学院出身や所属しているHくんやKくんと合流し,その夜,広島で飲み歌い明かした(え〜っと,「ほどほど」です)。


 「KT先生はね,あの新書に名を出すべきでなかったですよ」「僕もそう思います」,「教育研究やコミュニティはもっと一般に向けて良い面も悪い面もさらけ出さないと‥‥」,「○○先生はどうも胡散臭いし,薄っぺらい」「歩く※※です!」,「大学生が分数出来ないとかなんとか,あれはある種〈時間外取り引き〉みたいなもので,そうなったらなったで,結局対抗策を打ってこなかった教育学研究者はフジテレビですよ」とかなんとか,酔いに任せて熱い放談雑談(なんか悪口しか言ってないように見える?そんなこと無かったんだけど‥‥)が飛び交うなか,時に挑発的な議論に乗ってみせたり,「まぁそうだけどなぁ〜」と暖かく後輩達の言葉に耳を傾けつつ,「りんは,相変わらず手きびしいなぁ〜」と苦笑いしてみせる先輩は,少し嬉しそうでもあった。
 引越し直前の先輩宅に泊めてもらい,翌朝は,文献のあれこれ話やパソコン関連の相談などして,近くのバス停まで送ってもらう。以前から「尾道」に寄ることを薦められていたので,この機会に尾道に訪れることにした。
 JR山陽本線は広島から,三原,尾道,福山,倉敷,岡山,姫路,神戸という順番に駅が東へと並んでいる。列車に揺られながら,途中で車窓に現れる瀬戸内の景色に黄昏れながら(なんで?)尾道駅へ。尾道という場所は,その町並みの温かさや雰囲気から人々に愛される観光地として有名であり,数々の映画の舞台にもなったという場所である。それから「尾道ラーメン」という名も知られるとおり,ちょっとしたグルメの街でもあるそうだ。
 初めて訪れる尾道を歩いてみる。天気はよい。小さいながらもそれぞれ元気に営まれている店が並ぶ商店街をぶらぶら。そして尾道ラーメンの中でもおすすめと教えてもらった「朱華園」というお店までたどり着く。さすがは有名店,しっかり人が並んでいる。30分くらい並んで,ようやく「中華そば」と「焼餃子」にありつく。ふ〜む,その店独自の平麺の中華そばは,なんと言うべきか,「The 中華そば」という風に表現すればいいだろうか。それは正真正銘の中華そばで,「おいしい」ラーメンであった。なにしろ不満がないのだ。不満がないというのは,ある意味で素晴らしいのであるが,とにかくそこで味わった満腹感だけが正直にラーメンの味への感想になると思う。餃子は普通だったかな。
 お腹が満たされたところで,ロープウェイで千光寺山に行くことにした。ロープウェイや山の上から見える尾道の景色を楽しむ。さくらソフトクリームを食べ,「文学のこみち」を歩きながら千光寺参りをし,坂を下りながら尾道駅へと戻る。カメラ類はまったく所持しなかったので,すべては目に焼き付けて記憶するだけ。知らない街で過ごす時間は,夢の如く。今度は誰かと一緒に訪れたいものである。
 尾道駅の切符売り場で「名古屋に帰りたいんですが‥‥,どうしましょう」と訳のわからないつぶやきにも似た注文。若い女性の駅員さんが苦笑いしながら「そうですね,福山駅から新幹線に乗り換えていただくことになります」とテキパキ応える。実は,私の頭の中で山陰本線の駅順がバラバラだったので,しばらく「福山駅ってどこだ?」と制止する時間が続く。ようやく「それでお願いします」と言うと,また苦笑いされた。
 岡山に日本一大きな古本書店「万歩書店」があることも教えてもらった。とても興味があったし,時間に余裕があれば行きたかったが,残念ながら今回はパス。そのお店の名前にもあるように,本店だけでも店内を歩くのに一万歩かかるというくらい大きなところらしく,またその扱う書籍の量も半端ではないらしいので,ひやかしで寄るだけでは楽しめないだろうし,逆にちょっと寄るつもりが帰れなくなるというのが怖かったから,今回は断念した。たぶんお金もだいぶ飛ぶだろうし‥‥。
 そんなわけで,尾道から福山経由で名古屋に帰る。少しでも家でホッと一休みしたかった。なにしろ次の日には大阪で別の研究打ち合わせが予定されている。少しでもエネルギー回復と研究会の予習をしておかなくては。
 広島・尾道への短い旅は,先輩の有り難さを感じ,それぞれがそれぞれの場所で頑張っていくことを確認できた,そんな旅であった。

広島の放談」への2件のフィードバック

  1. こんにちは。
    私は万歩書店、本店の店員です。
    今回は時間の都合でご来店いただけなかったということですね。
    では、いつか時間がありましたら、当店に是非お立ち寄りください。
    大量の本や雑誌と店員一同、てぐすね引いてお待ちしております。(^^)

  2. りん

    教育らくがきに,いらっしゃいませ。
    万歩書店の方から書き込みがあるとは‥‥,光栄です。
    本当に時間的余裕と体力さえあったら行きたかったんです。
    う〜ん,残念。機会を捉えて,必ずお邪魔します。

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