アップルストア名古屋栄にオープン初日訪れたその足で,紀伊國屋書店に寄る。最近はなかなか本のご紹介が出来ていないが,このところ出てきて入手したものをランダムにご紹介しておこう。
○苅谷剛彦・志水宏吉 編『学力の社会学』(岩波書店2004/3200円+税)
→以前,『論座』論考や岩波ブックレットとしても紹介された苅谷氏と清水市による学力調査「関東調査」「関西調査」に基づく調査分析の書。日本の学力問題を考える際には重要な先行研究成果のひとつだろう。
ちなみに苅谷氏は,アメリカにおける子ども中心主義の登場を歴史的に追いかけた書『教育の世紀』(弘文堂)も上梓した。その書のエッセンスは雑誌『アスティオン』61号の論考「教育改革という見果てぬ夢』として掲載されている。
○国立教育政策研究所 編『生きるための知識と技能2』(ぎょうせい2004/3800円+税)
→話題にされているOECD-PISA(生徒の学習到達度調査)に関する2003年調査国際結果報告書の日本語版である。2000年調査に続く第2回なので,書名に『2』が付いている。この書も学力を云々したければ目を通しておくべき資料だ。
日本における調査実施の状況や考え方も記されているので,単に調査結果の数値を比較するだけでなく,調査自体の在り方と併せて吟味できる。特に「学習の背景」のセクションについては,国の違いを考えるためにもその辺は大事なポイントだろう。
○S.B. メリアム『質的調査法入門』(ミネルヴァ書房2004/4200円+税)
→以前から,教育研究における研究方法を勉強するための図書選択の難しさについては考えてきた。もちろん細分化しつつある教育研究のすべてをカバーするものは難しいし,だったら個別に親和性の高い他学問分野の研究法文献で腕を磨くのが一番良いのだろう。この本は,質的調査法に関するテキスト本。副題が「教育における調査方法とケース・スタディ」とあるのが嬉しい。それでいて具体事例どっぷりでなく,基礎議論から積み上げようとしている点に(私は)好感を抱いた。
○『教育小六法 平成17年版』(学陽書房2005/2500円+税)
→教育にかかわる法律について収録した基本資料の新版。『教育小六法』は,学陽書房と三省堂から毎年発行されているので,そのどちらかを買うが,今年は学陽書房のものが先に店頭に並んでいたので購入した。基本的な内容に違いはないが,資料セクションにはそれぞれの出版社の工夫がある。研究者には三省堂版がいいときもある。余裕があったら両方買えばいいのだけれど‥‥。
○山田昌弘 著『希望格差社会』(筑摩書店2004/1900円+税)
→遅ればせながら読み始めている。議論の内容はあちこちで聞いていたので後回しにしてしまったが,意外と面白いこと書いてあるので改めて購入した次第だ。日本の教育制度を「パイプライン・システム」と表現して説明する教育議論は少ないので,ここに登場する「パイプの漏れ」といった表現も考慮しておかないと‥‥。「リスク化」「二極化」する日本社会について小気味よく紹介してくれている。
○宮台真司・仲正昌樹『日常・共同体・アイロニー』(双風舎2004/1800円+税)
→素養もないのにこういう議論に身を乗り出してみることが好きなので,ちょこちょこ読んでみる。ただ読んでいるというだけ。
○杉山幸丸『崖っぷち弱小大学物語』(中公新書ラクレ2004/720円+税)
→説明はいらないと思う。私たちにとっては日常が書いてあるかも知れないし,皆さんにとってはびっりする世界が展開しているのかも知れない。それでも頑張らなくては‥‥。