プライベートブログにも書いたが,Apple Store Nagoya Sakaeが明日(22日)にオープンする。私の住む名古屋地区にもアップル社の直営店がやって来たわけである。教育雑談界(なんじゃそれ?)において熱心なアップルファンを自認する私としては,オープン初日に行かないわけにはいかない。始発の電車で並びに行く予定なのだ。
あれこれ慌ただしさにかまけて,先日サンフランシスコで行なわれたアップル社の新製品について取り上げなかった。いやはや,いよいよ真打ち登場である。「Mac mini」は,既存のパソコンユーザーがMacintoshコンピュータを所有し始めるには格好の製品だ。すでに持っているディスプレイ,キーボード,マウスを流用することを前提として,きわめてシンプルにデザインされた小さな本体とACアダプタのみで構成されている。特筆すべきは,そのパッケージの小ささと手軽さ,そして6万円弱という開始価格である。
皆さんは,あいかわらずMacintoshというパソコンが,Windowsパソコンと使い勝手が違うとか,互換性がないから使い物にならないだろうとお考えかも知れない。しかし,21世紀に入ってMacintoshには,Windowsパソコンが太刀打ちできないほど価値のあるソフトウェア(「iLife」という名前である)が無償で添付され,その性能と使い勝手の良さは高い評価を得ているのである。実際私は,iLifeでかなり楽しませてもらっているし,教育現場の仕事にも大変役立ち,楽しい経験を生み出している。
これまで私はそれらMacintoshの進歩やバージョンアップに多額の資金をつぎ込んできた(ファンだから仕方ない)が,はっきり言って,それほどの価値のあるパソコンとソフトウェアのセットを6万円程度から手に入れて体験できるというのは,今から購入する人たちは,幸せである。なにはともあれ,Apple Storeへ行こうじゃないか。
昨今は,Macintoshが大学など高等教育機関で大変注目を集め,新規導入が増えているといった傾向も見られる。なにしろWindowsパソコンのようなウイルス被害が多く,アップデートプログラムを適用したらシステムが不安定になったということが,Macintoshにはほとんど無い。これは教育現場でシステム管理する人間には大変有り難い特徴である。私は自分の人生の多くの時間が,コンピュータの不調や再インストールに費やされていることを考えると,Windowsパソコンと付き合い続けなければならないことに憂鬱さを感じる。
皆さんは,自作パソコンをつくったり,システムを調整したりパワーアップすることが楽しくてパソコンを趣味にしている方々も多いとは思うが,そういう世界に子どもや生徒,学生達を無闇に巻き込むことにどれほどの価値があるか,一緒に自問自答していただきたい。もちろん,使っているパソコンが問題なのではないことは百も承知。だからここではあえて「Windows的発想」のパソコンとの関わり方と,「Macintosh的発想」の関わり方という風に(ちょっとずるいかも知れないが)呼び分けてみた上で,そろそろWindows的発想におかされた情報教育分野の言説に印籠を渡すべきなのだと主張したい。
実のところ,情報教育分野の研究言説の多くは「Macintosh的発想」に近いものを提唱し続けている。私たちのライフスタイルにデジタル技術が活かされたときに生まれる有意義な時間や価値について,魅力を語っているのである。ところが,実際に入り込んでいる機器は「Windows的発想」を強いる機器ばかり‥‥。この最悪な「ねじれ」が2005年の今に至っても教育の情報化が期待した進展を見せなかった元凶なのである。
さあ,しかし,もはやそんな二項対立にとどまらなければならない理由はない。なにしろ「Mac mini」とソフトウェア「iLife’05」の登場だ。両刀遣いすればいいのである。家や職場にWinとMacの両方ともあれば,必要に応じて使い分けられる。そうしない理由は,パソコン価格としては安かれ,それでもお財布には厳しい出費以外に何もない。
[事後報告]
いやはや,宣言通り早朝から並んできた。とにかく待っている間は寒かった。じっと本を読んで待つこと4時間(ははは‥‥)。当日は2000人が並んだと報道される中で,私の順番は二百数十人目といったところに位置し, 開店から15分くらい待って入場できた。
オープン初日であることと,新製品iPod shuffleの販売ということもあり,私より前の人たちの入店時には大混乱状態だったらしい。大変な混雑であったが,私はのんびり店内の様子を吟味していた。店員やサービスの質を評価するのは早計であるため,見ていたのは店のつくりや空間の使い方。がっかりしたのはシアターがないことだった,残念っ!
ところで,アップルストアの第1号店が世界に登場してから何年も経過している。その間,アップル社はMacintoshパソコンを売る企業からiPodミュージックプレーヤーを売る企業へと世間的な位置づけをシフトしてきた。旧来のアップルファンである私たちからすると,その変化を歓迎する部分と,ひとつのコンピュータ文化(たとえば「Macintosh的発想」といったもの)を熱く語る空気というものが薄らぐ寂しさも感じられた。はたして私たちは音楽を超えたクリエイティブの世界へと誘う入り口としてアップルストアを期待できるのかどうか。まったく個人的にそんなあたりに興味を抱きながらアップルストアを後にした。
教育らくがきとしては,教育的な観点から今後もアップルストアを肴に駄文を書いていくことにしてみたい。