土曜日・日曜日に,職場で大学祭があった。大学祭といえば主役は学生であるから,キャンパスを提供して任せてしまえばいいようなものだが,そこは小規模な学校なので,ゼミの出展などして教職員も一緒に盛り上げるのが伝統になっている。
今年,私の担当するゼミではラジオ番組づくりをだらだらとやっているのだが,大学祭では特設ブースを構え,FM電波を使ったイベントラジオ放送に取り組んでみることにした。インターネットラジオだと編集作業や公開作業が面倒で,録音したものをなかなか公開できないでいたのだが,ラジオの生放送ならばその場限りなので取り組みやすい。むしろそのための下準備が大変といったところか。
番組を担当する学生達には,自分たちの番組進行について計画を立てさせるとして,私の方はラジオ放送に使用するための機材とシステム作りを担当した。実験的な試みゆえに大学からの資金は一切使わず,ほとんど自腹。もちろん大学にある備品をちょこちょこ利用しながら,素人考えで簡易放送設備を整えていった。足りないマイクやミキサー,ケーブル類を購入して用意。電波送信機(FMトランスミッタ)もないので,新たに購入する必要があったが,これがくせ者で,実は個人が手に入れられる範疇の手軽な商品が無いのだ。
FMトランスミッタが入手できないと,単なるPAでしかなくなり,ステージから大音量でしゃべったり音楽を流しているだけになる。今回はそれだけでなく限られた範囲だけとはいえ放送することが目標だったので,FMトランスミッタ探しは重要だったのである。
インターネットで探せばすぐに見つかると思うだろうが,そう簡単ではなかった。まずそういった類の商品自体が少ない。FMトランスミッタとして商品化されているものは,主にポータブル音楽プレーヤーの曲を車のスピーカーから聴くためのものであり,これらはとても弱い電波しか出力しないのである。十数メートルでも離れれば,雑音が入り音は聞こえなくなる。それでは放送ではない。
ある基準以下の出力ならば,電波法上の届けが必要ないため,かつてはミニFM局というものが流行った時期があった。その後,電波法の改正で基準が厳しくなり,またミニFM局も下火になって,いくつかがコミュニティFMとして生き残っている。それと同時に手軽なFMトランスミッタも消え去っていったようだ。
実はそうした生き残ったミニFM局で製作しているFMトランスミッタがいくつか存在する。頒布が終了してしまったものや,その完成度の高さゆえに価格の高いものなど,選択肢はそれほど無い。おそらく現時点で個人が手軽に入手できるFMトランスミッタは,FMえすかれぇしょんで紹介されているSTM108くらいだと思われる。
とにかく,いろいろ探している中で運良くSTM108のことを知り,早速注文した。FMトランスミッタのような機器を買うのは,昔トランシーバを手に入れるのと同じような興奮が沸いてくる。理工系大好き少年の心をくすぐる。
FMトランスミッタが手に入れば,あとはステージの音響と放送用の音響を分配する仕組みなど考えて,あちこち配線するだけだ。これはこれでパズルのような作業なので,端から見ると訳がわからないらしいが,けっこう楽しい。残念ながらありものや安物でしかシステムを組めないので,ノイズ対策はできず仕舞い。放送用に急遽パソコンソフトを使ってのコンプレッサーをかませたり工夫を繰り返したが,コード類の品質はどうしようもなかった。まあ,来年の課題。
ところでイベントラジオ放送の企画自体は無事終了。担当する学生達によって番組のカラーも異なり,なかなか楽しいものとなった。もっと指導が必要な部分も多かったけれど‥‥。おおむね良い結果で終われたのは幸いだった。
さて,ようやく行事が一段落と思ったら,また高校訪問やら入試業務。来年度予算案もやらないといけない。ううむ,山積み。