G7教育相会合 倉敷宣言全文(2016年5月15日)

Kurashiki Declaration
倉敷宣言

はじめに

1. 我々、G7 各国の教育大臣は、G7 教育大臣会合のため、2016 年 5 月 14 日、15 日に岡山県倉敷市に集まった。歴史と伝統文化が息づく地域一体で教育を支える、この倉敷において、教育の課題について深く議論し、今後の教育の在り方の多くの側面について合意を得るに至ったことを感謝したい。

2. 今日の急速な社会・経済的な発展は、我々の社会に多大な変化をもたらしている。グローバル化や技術革新により、多様な社会、より広く情報にアクセスする新たな機会、人々の交流の活発化、生活の質の向上への扉が開かれた。AI(人工知能)やインターネット・オブ・エブリシング(IoE)を含む技術的進歩により、生産性が増し、一部の仕事が自動化され、新たな仕事が創出される可能性を指摘する研究もある。一方で、我々は、貧困、拡大する収入格差、紛争、テロ、難民・移民の大量流入、環境・気候変動問題などの地球規模課題に直面している。

3. このような(社会の)発展及び課題を踏まえ、グローバルな視点から教育政策の方向性を議論する重要性を認識する。私たちはこれ以上、収入格差や対立の根深さを放置することは許されない。国際社 会の平和を守り、持続可能な発展を促進するためにも、倫理を尊び、他者を理解し、(特に社会的少数者の)人権に配慮し、主体的に行動するには、ひとえに教育の力に拠らなければならないことは自明の理である。人々が自らの可能性や夢を実現し、社会を発展させる上で、教育は極めて重要な役割を果たす。

4. 特に、暴力的な過激化・急進化 、テロを阻止し、これらに対抗するため、我々が協調して取り組む中で、教育によって、基本的な価値観である生命の尊重、自由、民主主義、多元的共存、寛容、法の支配、人権の尊重、社会的包摂、無差別、ジェンダー間の平等を促進するとともにシティズンシップを育成することは、極めて重要である。

5. 教育の重要性に基づき、我々は、以下について宣言するとともに、それを世界的にどのように実行に移していくかを示す G7 教育大臣の行動指針を設定する。

 

I: The New Role of Education
教育の果たすべき新たな役割

Social Inclusion and Harmonious Coexistence through Education
(教育を通じた社会的包摂と調和のとれた共生の実現)

6. 貧困、若者の失業や社会経済的不平等、最近の国境を越える移民・難民 のかつてないほどの増大、 一部の若者の間での暴力的な過激化・急進化等、根深い課題や新たな課題と対峙している我々は、「社会的包摂」、「共通価値の尊重」を促進する上で、教育が重要な役割を果たすことができると信じる。誰ひとり排除せず、すべての人が最大限の可能性を発揮できるよう、社会を生き抜いていくために 必要な力を培うとともに、社会形成や地方創生に積極的に貢献し、生きがいを感じることができるよう、 教育がそうした社会への変革を支えていくことを我々は認識する。そして、生涯学習を通じた、すべて の人に対する公平で質の高い教育の実現に向け、我々はあらゆる努力を尽くしていくことを約束する。 ここに述べた認識やコミットメントは、2015年の仁川宣言及び新たな「持続可能な開発目標」に即していることに言及する。

7. 暴力的な過激化・急進化を含む、人間の尊厳を損なうあらゆる暴力、人種差別をはじめとするあらゆる差別を阻止する価値観や行動を促進し、共生社会を実現する上で、教育が果たすべき役割の重要性を認識し、我々は、ここに改めて、我々の共通価値である生命の尊重、自由、寛容、民主主義、 法の支配、人権の尊重について未来の世代が確実に学び、理解する重要性を再確認する。我々は、 こうした共通価値に基づいて、よい「シティズンシップ」を育成する教育実践を推進する確固たるコミットメントを表明する。

8. 行動の原動力となる価値観の重要性を踏まえ、我々は、教育によって文化間の対話や相互理解を 促進し、思いやりや相手の気持ちに寄り添うホスピタリティの精神などの道徳心を醸成していくべきことを強く断言する。よって、我々G7 が一致団結して、グッドプラクティスの共有や更なる国際交流の推進によって、こうした教育を促進していくため、共に行動する。

 

Competencies Required in the New Era
(新しい時代に求められる資質・能力)

9. 予測困難な変化の激しい世界を生きる次世代が、自らが将来を作り出すことができるようにすべきとの認識のもと、与えられた課題に効率的に回答する力にとどまらず、自ら新たな問いを立ててその解決を目指し、他者と協働しながら新たな価値を生み出していくための力を身に付けていく必要があることを我々は認識する。

10. 我々は、新たな時代に求められる児童生徒の資質・能力を育成していくためには、各国の実践や客観的根拠、またそれぞれ異なる国の様々な文化的、社会的、哲学的な背景を考慮しながら、全ての教育関係者が、例えば以下のような視点を教育実践の基盤として共有することが基本的な目標と考える。

・何を知っているか(知識に関するもの)

・知っていることをどう使うか(コンピテンシーに関するもの)

・どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか

これらの視点に基づいた教育を実践することにより、子供達は、変化の激しいこれからの時代に求められる、(コミュニケーションやコラボレーションのための能力、創造性、批判的思考、問題解決力、困難から立ち直る力等を含む)あらゆる汎用的な資質・能力を身につけ、市民社会や世界に関わっていくことができるようになると確信する。こうした能力は、しっかりとした教科の基礎的な知識とその知識の背 景にある概念についての深い理解のもとに開発されるべきである。

また、我々は様々な国際的議論や事業が、時代の変化に対応した新しい教育の発展に示唆を与え得ると期待する。

 

International Collaboration for the New Role of Education
(教育の新たな役割を果たすための国際協働)

11. 前述の教育の新たな役割を踏まえ、個人間、学校間、地域間、国家間など様々なレベルでの教育分野における国際協働の促進により、異なる考え方や価値観に対する寛容な精神を身につけることができるなど、多文化共生社会の構築に向け、極めて重要かつ幅広い能力を育むことができることを、我々は強調する。

12. 日本においては、児童生徒が教科の知識を習得するとともに、様々な学校行事や課外活動において積極的な役割を担うことを教師が学級経営や生徒指導を通して奨励する、学習への総合的なアプローチを重視している。また、自然災害を受けやすい国として、子供たちが、災害時に自ら危険を予測し、安全な行動ができるようにするための教育を促進している。このようにそれぞれの国で様々な分野で豊かな経験があることを踏まえ、我々は、それぞれの国における教育実践を改善すべく、G7メンバー 間の学び合いをさらに進める。

 

Education as a Priority Policy Agenda
(優先的アジェンダとしての教育)

13. 教育を受けることは人間の基本的人権であり、世界の平和と繁栄、持続可能な社会の構築のために 不可欠な要素であるという深い認識のもと、これまでにも増して国際協働をより強力に進め、教育を世界、各国の優先的なアジェンダに引き上げる必要性を我々は強調する。また、2015年の仁川宣言に即した教育への公共支出の重要性とともに、それらの財源を、全ての人々にとって質の高い教育を実現するために効果的に使うことの重要性を我々は確認する。

 

II: How to Improve and Enhance Teaching and Learning
教えや学びの改善・向上策

Diversity Education
(教育における多様性の尊重)

14. 我々は、一人ひとりが自身の潜在力を発揮して新たな発想、創造を生み出すことのできる多様性(ダイバーシティ)が、現代社会の更なる発展への不可欠な原動力であることを確認する。多様な人々が包摂され協働するとき、我々の社会がより盤石なものとなるとの認識のもと、異なる文化の人々と協働することができる力やグローバル化に対応した能力を身につけることが極めて重要であることを我々は 確認する。我々は、PISA のような将来の国際的な評価が、この分野の進捗を測定する指標を提供するであろうことを確認する。

15. 我々は、困難な状況にいる子供や若者(例:移民・難民、社会的・経済的に不利な状況にいる子供、 障害のある児童生徒、虐待やいじめに苦しんでいる子供、不登校になっている子供、就業、就学、職業訓練をしていない若者(NEET)、性的指向や性自認を理由とした差別に苦しんでいる子供)がさらされやすい排他や疎外、格差や不平等の解消が喫緊の課題であることを認識する。このため、我々は、それぞれのバックグラウンドや環境に関わらず全ての若者が幸福感を抱き、生活や仕事に必要な知識やスキルを習得できるインクルーシブで公平な成果に届くための教育が保障されるよう最善の努力をする。 さらに、我々は、個別性や多様性が尊重され、全ての子供や若者が自らの可能性や長所を 最大限に活かすことができるような教育環境を実現することを約束する。

 

Promoting Girls’ and Women’s Empowerment for Sustainable, Inclusive and Equitable Growth
(包摂的かつ公平で持続可能な成長のための女児・女性のエンパワーメントの促進)

16. 我々は、包摂的かつ公平で持続可能な成長を実現するためには、女児・女性の社会参画とリーダー シップのための平等な権利、アクセスと機会を保障することが不可欠であるという基本的認識のもと、 教育を通じて、性別に関する固定観念を払拭し、女児・女性のエンパワーメントを促進する重要性について再確認する。

17. 女児・女性の教育については、学業的に成功している女児が増えていることを歓迎する一方で、特定の分野においては女児・女性が引き続き少数派であることに留意する。我々は、多様化、高度化した社会や、それぞれのライフステージに応じ、全ての女児・女性の多様な生き方・キャリア形成を促進するような、生涯にわたる平等な学習機会や職業教育を含めた能力開発の機会を 充実することを主張し、支援していく。また、我々は、男児・女児双方に同じ機会を提供することを通じて、教育により男女共同参画を促進すべきと認識する。我々は、教育行政担当者や教員が、男女共同参画に関する理解を深め、ジェンダーに配慮した指導技術を身につけられるよう、能力開発を支援するコミットメントを表明する。

18. 我々は、固定観念を変え、STEM(科学・技術、工学、数学)を含む全ての分野において、女性が積極的に参画できる平等な機会を保障する重要性を認識する。また、理工系(STEM)分野への潜在的なキャリアの意識づけやそうしたキャリアを目指す女性への支援などを通じて、産業革新や技術革新においてリーダーシップを発揮したり、その他様々な重要な役割を果たす女児・女性への更なる教育を推進し続ける。また、我々は起業における女性の役割の重要性について普及啓発や支援を行うべきである。

 

Links between Education, Employment and Society
(教育と雇用・社会の接続)

19. グローバル化や技術革新による雇用のボーダレス化に伴い、雇用を確保するために必要な訓練や技能を保障するだけでなく、現在の教育・訓練により育まれる資質・能力や資格と労働市場が求める資質・能力とのギャップの解消の必要性についても我々は認識する。

20. 我々は、教育・訓練と技術革新の影響を受けた雇用とのつながりを改善するため、特に情報通信技術(ICT)や理工系(STEM)分野における教育・訓練の適切な見直しにより、すべてのバックグラウンド の人々が社会的・経済的変化を主導し、適応し、同化することができるような、仕事に関連する汎用的なスキルの習得を促進し、社会的包摂に貢献する。また、我々は、理工系(STEM)分野のほかアートやデザインを含む他の分野も重視した総合的なアプローチが、柔軟な思考、挑戦、創造的な問題解決を促し、新たなイノベーション創出につながり得る可能性を認識する。

21. また、我々は、労働に直結する特定の技能・技術だけでなく、一人ひとりが社会の構成員として社会経済の発展に貢献し、適切な報酬を得て、働くことに喜びを感じる勤労観・職業観を育成する重要性を認識する。我々は、キャリア教育・職業教育を促進するため、学校、家庭、そして労使、地域社会、経済団体、非営利団体等すべての関係者との緊密な連携、対話を奨励する。

22. さらに、我々は、教育は社会の枠組みの中で営まれ、社会と分断されるのではなく社会に開かれたものであると同時に、社会そのものがオープンかつ多様でありすべての伝統や文化的価値を尊重するものであるべきとの共通理解の必要性を強調する。子供や若者が社会生活に影響を与え、そこから学ぶ効果を経験することにより、社会における個々の役割や責任を自覚する重要性を認識する。そして、 学校・家庭・地域や全ての関係者が緊密な連携を図り、次世代を担う子供は地域・社会全体で支え・育てていくという認識を共有する重要性を強調する。

 

Education that Accommodates Technological Advance
(技術革新に対応した教育)

23. 第4次産業革命やインターネット・オブ・エブリシング(IoE)を伴う飛躍的な技術の進展に対応するためには、情報活用能力は子供たちや全ての学習者に不可欠な資質・能力であることを再確認するとともに、ICT が、課題の発見・解決を促す主体的・協働的かつ双方向の多様な学びを実現するための効果的なツールであることを我々は認識する。教員と児童生徒の対面指導の重要性を認識しつつ、我々は ICT を用いた質の高い教育を促進する必要がある。我々は、全ての学習者が等しく、学びを支援するテクノロジーにつながり、アクセスでき、学びを経験できるようにすべきであることを確認する。 我々は、生徒が学び、ICT による恩恵を受ける上で教員が重要な役割を果たすことを認識するとともに、教員が教室で ICTを使うスキルを向上させることが重要であることを確信する。

24. 我々は、社会的・経済的に不利な状況に置かれていたり、心身の事情その他の理由により学校に通えていなかったりする学習者の個に応じた多様な学びのニーズに応えるための ICT の利活用を強く奨励する。ネットワークを通じて、世界の子供たちとの双方向の学びの機会の増大や教員間で他国の優 れた教育実践の共有が実現できるなど、ICT が持つ遠隔教育の可能性を我々は評価する。

25. 同時に、技術革新の悪用の可能性や様々な性質のオンライン情報の氾濫にも対処するため、我々は、 子供や若者が情報の質や情報源を見分けるために必要なメディアや情報に関する能力を身に付けさせる必要性を強調する。さらに、若者に影響力が大きいソーシャルメディアに関して、オンラインでの健全な社会的交流を行い、虚偽の情報と現実を区別し、事実と単なる意見をしっかり見極めることができるようになるための教育や指導も必要であることを認識する。

 

Enhancing and Supporting Teaching Profession
(教職の向上と支援)

26. ますます多様化・複雑化する社会の中、教師の高い専門性への期待が非常に大きくなっており、また 教員の果たすべき責任も拡大しているとの共通認識のもと、G7各国の教員の資質能力向上のための職能開発を協力して支援していくコミットメントを表明する。教師という職業への尊敬の念(リスペクト)を高め、その社会的地位及び待遇を向上させる具体的な取組を推進していく。

27. 特に、増加する国家間の人の移動に対応するため、教員自身が異なる文化の人々と協働することができる力やグローバル化に対応した能力を身につけることが不可欠であることを我々は強調する。 我々は、この国際社会の喫緊の課題に対応するため、異なる文化的、宗教的、言語的背景をもつ児童生徒を効果的にグローバルな視点から教育できるような教員人材を、各国の英知を結集しながら協力して育てていく。

28. 不可欠な資質・能力を育成し、学習への総合的なアプローチを促進するためには、学習者個々人の 能力、理解度、関心を踏まえ、様々な背景をもつ彼らの多様なニーズに応じた適切な指導が他の専門家やコミュニティと有意義に連携しながら行われるよう、職能開発を通じた教職員や他の学校スタッフの(指導力や指導体制)の強化・支援や効果的かつ十分な教員配置が極めて重要であることを確認するととともに、上述の政策を実施するために、政府の積極的な投資が必要であることを我々は強調する。

 

Evidence-Based Education Policy
(客観的根拠に基づく教育政策の推進)

29. 我々は、教育が、自己実現、社会的包摂、社会経済の発展のための不可欠な資産であり、広く国民に、適切な教育投資の効果や必要性について意識啓発を図り、教育は未来にとって極めて重要な先行投資であるという理解を醸成することが重要であることを確認する。

30. 我々は、質的、量的研究に基づく客観的根拠に基づく教育政策が、社会の理解と支援を増進し、教育政策の効果を最大化するための重要な鍵であることを認識する。また、我々は、様々な学問や手法の視点から研究を発展させることにより、教育の現状を総合的に把握する重要性についても認識する。

31. 我々は、客観的根拠に基づく教育政策を推進するために、教育政策研究に関する優れた取組や課 題を共有すること、各国間の行政官や研究者の交流を促進すること、成果を国民に普及啓発することの重要性について確認するとともに、客観的根拠を収集・検証・活用する際には、各国の置かれた状況や社会的・文化的背景等を踏まえることも重要であることを強調する。

32. 我々は、このような基本認識のもと、教育効果に関する調査、研究、分析及び教育政策の評価を推進するための具体的な取組として、G7 間の情報共有の促進等を進めていくことに合意する。

 

III: New Paradigm for International Cooperation
新たな国際協働の在り方

 

Internationalization of Education
(教育の国際化)

33. 特に、G7 各国は、世界中で増加している学生・研究者や教育職員を多く受け入れてきたが、世界中の若者が他国の教育システム、文化や伝統を経験し、価値観を共有するよい機会を引き続き創出していくべきことを我々は認識する。

34. 国際的な協働やお互いのベストプラクティスからの学びを通じて、異なる地域の高等教育圏における各機関、学生、教員、研究者がより開放的で相互に関わりをもつものとなるよう、我々は協力して更に努力していく。さらに、若者の学び合いを促進するため、より多くの大学と学生、研究者及び職員の国際教育プログラムへの参加を促していく。

35. また、我々は、高等教育段階における留学のみならず、初等中等教育段階からの国際交流の取組や留学に向けた意識づけ、また、高等学校段階での生徒間の交流(交換留学プログラム)の強化などへのコミットメントを表明する。そのためにも、我々は、教員や校長の国外における経験、仕事、学びを積極的に推進する。実体験が限定されまたは困難な場合は、バーチャルな経験が学校や教室間の意義ある関係をもたらすことを認識する。

 

Sustainable Development Goals
(持続可能な開発目標)

36. 持続可能な開発目標(SDGs)やターゲットは、普遍的、不可分で、密接に関連し合うものであることを 我々はあらためて表明する。SDGs のゴール4(教育目標)は,他の全ての SDGs の達成に重要な役割を果たすものであると認識する。我々は、ゴール4を含む SDGs の実現の加速に向けて、国内的にも国際的にも一層の取り組みを推進するとともに、第 38 回ユネスコ総会にあわせて開催されたハイレベル会合で、世界の教育コミュニティに承認された「教育 2030 行動枠組み」を G7 の教育リーダーとして歓迎し、これを実施していくというコミットメントを表明する。

37. グローバル化が進展した現代において、一部の国・地域の混乱は、世界の平和と繁栄に広く影響を及ぼす現状を踏まえ、我々は、これまでにも増して国際協力を強化し、共通の課題に共に対処していく必要性を強調する。特に、全ての人々がバックグラウンドに関係なく、主要学習領域において基礎レベ ルのスキルを獲得することを保障するため、国際的なモニタリングや相互の学び合いの強化を促進する。我々は、平和で繁栄した社会のレジリエンスと持続可能性の構築に重要である、開発途上国におけるキャパシティ・ビルディング(自助能力の構築)を支援する国際教育協力を強化する必要性を認 識する。

38. これまでの取組により「教育へのアクセス」は大幅に改善したが、教育や学習の質の改善が必ずしも伴っていないという認識のもと、教育制度の強化や教員訓練の促進、また各国事情に応じて教材の開発に集中的に取り組むことを表明する。また、訓練やスキル・ディベロップメントと働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)や起業の機会とをリンクさせる取組を支援するよう努める。

39. 脆弱で不利な状況にある人々、特に女児・女性の、質の高い教育へのアクセスが限られている状況を踏まえ、我々は全ての女児・女性の教育へのアクセスを保証するだけでなく、ジェンダーに基づく暴力や差別のない、安全でインクルーシブで効果的な学習環境の中で教育を実施し、衛生設備を含む健康と福祉の特定のニーズに対応する必要性を再確認する。

40. また、「2030 年までに G7 の措置を通じて、開発途上国において職業教育・訓練を受けた女児・女性 の数を(対策をとらない場合と比べて)3分の1増やす」という 2015 年 G7 エルマウ・サミットで宣言されたコミットメントに係る取組を引き続き前進させる。

41. 我々は、G7 として、持続可能な社会を構築するため SDGs へのコミットメントを再確認する。我々は、持続可能な開発のための教育(ESD)を更に推進するとともに、ベストプラクティスを共有し、更なる連携に向け、多様なステークホルダーによる対話と協力が可能な限り促進されるべきことを認識しつつ、 ESD に関するグローバル・アクション・プログラムの実施においてUNESCOを強力にサポートする。

42. そして、我々は、教育をスポーツや文化、福祉など他分野とうまく融合しながら、人間の尊厳の保持に 関係する平和な社会の促進を目的として、人類の調和のとれた発展と繁栄に貢献していく教育の価値を高めることを強調する。

 

Conclusion
終わりに

43. 我々は、OECD、UNESCO の代表者がこの議論に参加したことに心より感謝の意を表するとともに、今後も全ての関係機関と更なる協力関係を築いていく重要性を再確認する。

44. 我々は、この宣言に記された我々のコミットメントを遂行し、行動指針を適用する意向を表明する。そして、議長国イタリアによる、来年のG7教育大臣会合の開催を歓迎する。

45. 最後に、来るべき新しい時代を見据えて、教育改革を推進していく決意を示した倉敷宣言は、最前線 で学生や生徒と向き合い教育活動に携わる人々の日々の努力なくしては成り立たないものであることを強調する。我々は、今を生きるすべての人たちが平和と繁栄、持続可能な社会を構築する支援をするために、教育に携わるすべての人と共に不断の努力を続けていく。