川端文部科学大臣就任

 鳩山民主政権が誕生した。朝から国会は大忙しで,決まれば天皇陛下の出番で首相を親任する。そして真夜中に17名の大臣が連続会見を行なっている。

 私たちのフィールドである教育分野に関係する閣僚は多いが,メインは文部科学大臣。そこに就任したのは川端達夫議員である。というわけで,川端文部科学大臣の会見も流れの中で行なわれた。

 ちなみに藤井財務大臣はご高齢で「どうかな〜」と思っていたが,記者質問の受け答えは上手で,さすが元官僚。仕事に関する頭の回転スピードは歳をとっても衰えないらしい。福祉に理解を示している点で,教育予算に対してもそれなりの理解を示してくれるのではないかと思うが,それは国家戦略室の菅氏の権限も関係するかな。イデオロギー省庁としての文部科学省が国家戦略室(局)とどう渡り合うのか,その辺が注目点である。

 川端文科相の会見は,少々パンチの欠けたものであった。学校教育をめぐる問題として「学力低下」「いじめ・不登校」「教職員の不祥事」を挙げるという語り口もだいぶ古くさいし,記者の質問への返答も明瞭ではなく,何をどうするのか明確には示さなかった。

 正確な内容は報道に譲るべきだが,曖昧な記憶に基づけば,鳩山首相からの指示書の内容としては

 ・高校の無償化,大学院教育の充実などによって,意思ある人々が教育を受けられるようにすること
 ・教員の改善などによって教育の質を向上させること
 ・世界の中で日本が科学技術によってリードできるような教育

 というものらしい。指示書がこのようなおおまかなものだから,具体的に何をどうフォーカスすべきかはこれから議論するというのは仕方ないことかも知れない。

 記者質問は次の4点だった。

 ・全国学力調査を悉皆調査から抽出調査にするのか
 ・教育免許更新制をどのようにされるのか
 ・日教組との距離感はどのようになるか
 ・メディアセンター(国立メディア芸術総合センターのこと)について

 いずれの質問に対しても,民主党のマニフェストにおける議論で扱われたことを述べ,そこに示された方向性の確認といろいろな立場の意見を踏まえて議論をしていく必要があるという返しで終わった。それぞれに対する返答の断片は次の通り。

 ・学力調査に関しては,目的にかんがみれば抽出調査でよいのではないか
 ・教員免許更新については,教員の質の向上という目的にかんがみて免許制自体を6年制にすることを議論してきた。不適格教員に対する措置に関しては,別の方法で行うことの方が正しいアプローチだと考える。
 ・日教組との関係は,広くご意見を聞く中の一つの存在として
 ・メディアセンターは税金の無駄として整理するという議論をしてきたので対応するが文科省以外も関係する

 事前報道などで出ていた「いつまでにする」「こうしていく」といったような話は極力避けたのがわかる。

 ただし,すでに先般の補正予算の執行に対して一時中断をするように文部科学省から指示があったという報道も流れてきている。予算執行がキャンセルにならないことを祈るしかないが,本当に白紙に戻ることになったら,スクールニューディールは,地震対策の耐震工事を除いて頓挫してしまうことになる。e-Japanのときもそうだったが,つくづく「教育の情報化」は運が付いてないというか,呪われているというか…。

 国民にとっては,教職員のパソコンが導入されるされないとか,電子黒板が配備されるされないは,ほとんど意識されることが無いから,仮にキャンセルになっても一番文句が出ないところだろう。地震対策の耐震工事のように命に関わることではないから,またICT機器的にプアな学習環境の継続を強いられる。大所帯になった日本教育工学会は,国民に代わって何かメッセージを発信するだろうか。う〜ん,しないか…,みんな上品だから。

 川端文科相の真価はまだ見えないが,よりよい教育よりよい学習環境を意思ある人々に提供することに本領を発揮してもらうには,まだまだ時間がかかりそうなことだけはわかった。

 とにかく,遠く遠くでエールを送りつつ,こちらはこちらで草の根から盛り上がっていきたいと思う。