ビジネスに青田刈られて

 TechCrunch Tokyo 2011というイベントをちょこちょこ眺めると、スタートアップのプレゼンなど目に入る。

 テクノロジーやソーシャルサービスなどを活用し問題を解決しようとする営為をビジネスとして具現化していく動きが賑やかだ。

 こうした動きがどの程度の持続性を持つのか分からないけれども,少なくともテクノロジーによる社会貢献を志す者にしてみれば魅力的なパスであることは確かである。

 ただ他にも,テクノロジーで社会貢献するという似たような営為を目標としてきた領域がある。アカデミックな世界だ。

 テクノロジーの基礎的な部分を研究の対象とすることで同じ方向を目指しているのがアカデミアの世界で,応用的な部分を商品としてリリースしていくのがビジネスの世界,という違いはあるだろう。

 けれども,アカデミックな世界にも応用的な部分を扱う領域はあるはずで,そこではビジネスの領域と衝突が起こっているのではないかと思われる。

 何かしらの工学的な営為をアカデミックに扱っているべきか,あるいはビジネスとして扱っていくべきか。

 これは別に新しい問題でも何でもない。昔から産官学の連携とか,研究成果をビジネスとしてどのように活かすかはいろいろ試みが展開してきた。

 けれども,それが上手にできるのはごく一部。基本縦割り社会の日本だと一度それぞれに別れてから連携するのは,いまだにコストがかかる。

 そうなると,テクノロジーを思考する人は端的にビジネスを指向した方が社会貢献への近道へと考えたりするんではないだろうか。

 シリコンバレーに打って出て起業するなんて夢物語と思った時代もあったが、それがもう珍しいものではなく,やる気のある者にとっては現実なのだという時代が訪れた。

 そういう時代に生きる子どもたちを育てているのだと考えれば、私たち自身がもっと考え方も実践も前進させなくてはならないと思わずにはいられない。