暖かくなって

 久し振りにしっとりとした雨の日を迎える。先週末の東京滞在あたりから気温も過ごしやすいものとなり,冬から春の移り変わりが実感されるようになってきた。

 東京で開くiPad/iPhone教育利用の集いの下準備も,日付と会場が確定し,いろんな方に登壇のご協力も得て,なんとか開催できる運びとなった。少しずつ事前登録者も増えているので,舞台あれど客無しということにはならないみたいでホッとしている。

 なるべく黒子として登壇者や参加者を引き立てるように頑張りたい。ただ,なぜ集う必要があるのかという点について趣旨説明など,ある程度責任を持って受け答えしないといけないと思うので,幾多の批判や懐疑はあると思うけれど,誠実に対応していきたい。

 今度の春,徳島にやって来て1年になる。

 賑やかな東京暮らしから一転,のんびりとした土地での生活が始まる。といっても生活の慌ただしさは土地と関係なく続き,あれこれ宿題を積み上げたまま時間が経過した。

 徳島は車社会になっていて,自転車で頑張るのは利便性に限界があるなぁとは思えど,たまに駅前の紀伊国屋へ本を見に行けるので,それで満足としている。

 ただ,たまには都会へ出て刺激を受けることも大事だなと思う。そんなわけで,久し振りに遠出をしようと思って,東京行きの航空チケットを買ったというのが先日の東京滞在の始まりであった。

 歌舞伎は素晴らしかった。

 あちこちで話題が取り上げられているが,東京銀座の歌舞伎座が全面的な建て替えのために休館する。立て替え後の歌舞伎座は,現在の形をしている部分にビルが併設されるようになるらしい。とにかく現在,登録有形文化財に指定されている建物で歌舞伎を見るチャンスは残りわずかだというので,この機会に挑戦した次第である。

 以前,東京に越したばかりの時に,ある方の案内で「能」に連れていってもらったことがあった。面白かったけれど,睡魔との闘いもあって,正直十分味わったとはいえなかった。さらにその後,同じある方の出した宿題で「相撲」を見に行く機会があった。両国国技館で直接見る相撲も面白かった。

 それで,東京は離れてしまったけれど,歌舞伎座で観る歌舞伎に挑戦というわけである。

 歌舞伎座はさよなら公演を続けていたが,二月は十七代中村勘三郎の追善公演ということで,十七代勘三郎が演じて好評だった演目が並んでいるのだそうな。実はそういう前知識もなく,予定と合う夜の部の座席を予約した。値段は張ったが,一緒に一度の体験と思えば。

 そして当日,銀座三越で持ち込みのお弁当買って,寄り道しながら歌舞伎座へと歩いていくと,遠くから見たことある顔が歩いてきた。それがナント,能や相撲に導いてくれたあの方。偶然にも同じ歌舞伎の芝居を観にきたとのこと。いやはや,相手は常連さんとはいえ,なんたる偶然。歌舞伎の芝居が終わってお寿司をご一緒できたのは嬉しかった。

 歌舞伎の芝居自体も素晴らしいものだった。夜の部は「壷坂霊験記」「高坏」「籠釣瓶花街酔醒」という演目。歌舞伎初心者にはどれも分かりやすい内容だったのがよかった。特に「籠釣瓶〜」は勘三郎の演技もよかったけれど,玉三郎の女形演技も本当に素晴らしく,もう一度観たいとさえ思った(もう二月公演は終わったけど)。

 「このタイミングで玉三郎の演技を