韓国デジタル教科書

 とある仕事の中で、韓国のデジタル教科書について触れる部分があったので、念のために情報のウラを取り始めた。出来るだけ一次情報に近い所の文言を確認したいが、頼りになるのはネットだけ。限界あるのも承知しているが、とにかく可能な限り情報を掘り出していく。

 すでに韓国デジタル教科書の公式サイトはブックマークしてあったし、研究校も探してあったので、そこら辺を中心に情報を引き出す。残念ながら韓国語並びにハングルはほとんど分からないので、ネット翻訳がフル活躍だ。以前、韓国の人たちもネット翻訳で堂々と日本語サイトにアクセスして、情報交換していることを聞いたことがあるので、私も活用してみた。

 幸い、研究校は詳しく情報発信をしてくれているので、実証実験の様子を遠い地にいながら、少し垣間見ることができた。

 韓国のデジタル教科書は様々なマルチメディア学習コンテンツとインタラクティブなワークノート、オーサリングツールとネット端末機能を総合したデバイスとなっている。

 もともと韓国にはEDUNETという教育情報インフラシステムが稼動しており、デジタル教科書もこれと連携したシステムとして構築されている。

 ご存知の通り、韓国はマイクロソフト製品を国の基盤システムに据えているので、ほとんどWindowsベースなのだが、コンテンツ管理システム自体はオープンに作られているので、デジタル教科書にはLinux版も用意されて、同時に開発が進められている状態である。(まあ、Linuxで動けば、Macで動かすのも難しくは無い。動かすだけなら…)

 子どもたちは、国語や算数、社会や英語活動等で一人一台タブレットPCを目の前におき、デジタル教室にある70インチ以上の大スクリーンを合わせて見ながら授業を受ける。

 いくつかの動画を見る限りにおいて、先進校の小学5、6年生だし、訪問慣れしているだろうことも手伝って、一斉と個別の混在した授業は一応成立していた。しかし、授業題目によっては、教室の統制をどうとるのか悩ましい問題もありそうだ。日本の授業の組み立て方だと、かなり難しいかもしれない。

 デジタル教科書開発とそのための授業方法の開発が研究目的なので、もちろん良い所ばかりでなく、不都合な点や問題点を明らかにする活動もしている。バグ報告掲示板や定期的に行われる調査や試験、実践公開に関する情報発信も学校によって程度の差はあるが行なわれている。調査はアンケートやヒヤリング等が併用され、調査事項は学習効果に関することはもちろん、ソフトウェアの使いやすさとUIに関すること、デバイスの使用によって引き起こされる健康上の問題はないか、心理的な負荷はないかなどを調べる調査まで、実に様々である。

 こうした実験校の発信している情報をみると、対外的なショーケースに過ぎないとはいえ、デジタル教科書に対する韓国の本気度を少し信じてしまいたくなる。まあ、それでこそショーケースなのだけれども…

 はたして日本のデジタル教科書普及に手を上げている人々が、どの辺まで本気を持続させようと思って取り組み始めているのか、私はまだ計りかねている。十年後もそこに留まって見守ってくれてるほど教育の人でもないだろうし、だからと言って日本や教育を思って力を注ごうとしてくれている事は否定すべきではないし…。私は相変わらず遠回りしながら片方で応援しつつも、片方で問うていくことしかできそうにない。