【教師が研究を志す日】00

 今回から,現場教師の皆さんが研究を志すことになる際に知っておきたいこと,考えておきたいことを書いてみようと思います。長期シリーズとして続けていきますので,どうぞよろしくお願いします。

 私は長らく,このようなテーマで駄文書きすることを躊躇っていました。実際には,学問や研究について沢山述べてきたにもかかわらずです。

 理由は簡単。私にその資格や力量があるとは思えなかったからです。

 実際に,現場教師として研究に携わっている先達がいらっしゃるし,大御所の研究者となって活躍している方々もいらっしゃる。私よりも現場教師と密接に関わっている研究者先輩もいらっしゃる。その方々を差し置いて,私が研究の何たるかを書くことは,以前の私には出来ませんでした。

 しかしここ数年,自分なりの問題意識で分野を越えた領域を学び直してきて,見えてきたこと,逆に見えなくなりそうな事柄が分かってきました。

 もちろん,研究というもののすべてを知ったわけではなく,どこまでも私の偏った見方なのでしょう。それでも,いまなら先達とは違うことが書けて,自由に刃も向けられるだろう(半分冗談)。ご恩を返すとするならば,ズレたところの考える素材を提供することだろうと思ったわけです(論文書けってのは別にするとして…)。

 現場の教師は,たくさんの研究活動をしています。授業研究,教材研究などの実践研究です。そして今日では,専門性を高めるために学術研究との連携が重視されています。

 教員養成系の大学院,教職大学院はもとより,研究者を伴った民間の自主研究活動といった場が増え,現場の教師にとって「研究」という行為がどんどん高度化しているのです。

 実践研究と学術研究では,似ている部分もありますが,異なっている部分もたくさんあります。そのため,実践研究から学術研究へ手を出し始めたときに,あるところまではついていけるけれど,あるところから急に苦しくなる事態に直面します。

 苦しみながら進んで慣れていくのも一つの手ですが,根底にある考え方の違いを理解すると,もっと可能性が開けていくはずです。現場で活躍している教師の皆さんが,根底にある考え方の違いを理解すれば,それを土台に,職業研究者よりも素晴らしい教育研究を展開することが出来ると信じます。

 最終的に,私が如何に役立たずの教育研究者なのかが浮き彫りになり,お読みになった現場の先生方が研究を志す敷居を下げることが出来たなら,試みは成功です。

 さあ,それでは拙いシリーズを始めることにしましょう。