現場教師にとって,「研究」という言葉は2つの響きを感じさせます。一つは,どうにも手間ばかりかかって,あまり実効性のない試み。もう一つは,もしかしたら自分の努力を後付け更なる前進をもたらす企て。
毎日の実践に追われて過ごす日々の中で,ある日,自分の実践を振り返る機会が与えられたりします。それはふとした自分の気付きによるものかも知れませんし,あるいは,教育委員会からのお達しによる研修としてかも知れません。とにかく,その日は突然やってきます。普段の実践研究とは違う,学術研究と向かい合う日が訪れるのです。
—
ここでいう実践研究とは何でしょうか。一つ参考になるものとして,群馬県教育研究所連盟(2001)が掲げる「学校における実践的研究」があります。その特質とは:
○子供の変容や成長にかかわる研究である
○実践と理論を結び付けた研究である
○教育実践の質を高め,その方向付けを行う研究である
○研究の深まりとともに新しいことに気付き,修正を加えながら進めるというように可変性,柔軟性のある研究である
となっています(15頁)。
そして,いくつかの研究方法の中から,これらを満たすものとして「授業研究」「教材開発研究」「事例研究」「調査研究」の4つを「実践的研究」と捉えるのです。
ちなみに,特質を一部満たさなかったのは「理論的研究」と「実験的研究」でした。だからといって,この2つが学術研究なのだという風に分けられるわけではありません。
何を実践研究と考え,何を学術研究と考えるかは,立場によって異なるでしょう。私は「見える世界を見ようとするのが実践研究」であり,「見えない世界を見ようとするのが学術研究」だと表現しておきたいと思います。
なぜそのように表現するのか。上記の特質も引き合いに出しながら,次回以降,考えていくことにしましょう。
—
群馬県教育研究所連盟(2001)『改訂新版 実践的研究のすすめ方』東洋館出版社2001.2