『デジタルゲーム学習』

 「デジタル・ネイティブ」という言葉を広めたマーク・プレンスキー氏の主著”Digital Game-Based Learning”の邦訳『デジタルゲーム学習』が発売された。

 「シリアスゲーム」という,ゲームを使った社会的な学びに関する領域があり,本書はそのようなゲームを介して学ぶとは何かを考察していった文献である。書名の翻訳の悩ましさで,事情を知らないとデジタルゲームについて学習することを論じた本のようにも受け止められるかも知れないが,そうではない。

 ゲームが好きな人たちは多い。本当に多い。そうした嗜好をもつ人たちは,ゲームを介して様々な事柄を学んでいたりする。物語性の高いゲームから,人生の教訓を学んだという人ももう珍しくはない。

 シリアスゲームは,その辺のゲームの効果を頼りにしながら,もっと現実の社会に沿った学びを狙ったものである。それでいてゲームとしての特性も失わないものをつくらなければならないので,この辺が結構大変みたいだ。

 ゲーム自体を云々することも重要なのだが,この議論には,デジタル時代に生きる人たちの学びのあり方を考えるという,あるいみこれからの時代にとって普遍的な問い掛けが含まれている。そういう意味で,本書は,同著者による『テレビゲーム教育論』とともに重要な文献ともいえる。