星空をGoogle Earthで

 夏休みの宿題として毎日,気象日記をつけずとも,気象庁のデータベースを使えば好きな場所の好きな時点の気象情報が手にはいるようになったことは一大事だった。そしてGoogleマップは衛星写真による世界地図を提供し,Google Earthは衛星写真による地球儀を提供して,世界中を驚かせた。
 いよいよ私たちは高質な天体写真・星図を自由に眺めることが出来る。ニュースでも報じられているようにGoogle Earthに新機能「Sky」が追加され,地球から眺める夜空を自由に探索できるようになった。

 人によっては,宇宙や天文の世界に憧れる機会がある。雑誌の付録についてきた天体望遠鏡を使って,必死に星空を見定めようとした経験をもつ人も多いに違いない。
 昨年12月には長寿雑誌であった『月刊天文』が静かに休刊となったが,『月刊天文ガイド』といった雑誌は天文ファンにとっては大事な情報源かつコミュニティの場であろう。
 かつてのパソコン総合誌『月刊アスキー』から生まれた天体シミュレーションソフトの「ステラナビゲータ」が大ヒット。90年代には天文関係のムックが数多く製作されてブームが起こった。PC-9801シリーズのMS-DOS上で凝ったことをすれば,とにかく話題になった時代である。そのソフトを生んだアストロアーツという会社が,親会社だったアスキーの名を受け継いで現在に至っているというのだから,何が起こるか分からない世の中だ。
 そしていま,無償配布ソフトで天文写真が自由自在に見られるようになったのである。

 こうした変化は確実に学校教育に届いていく。問題は届けられた側に,それ相応の準備や実践が出来るのかということだ。衛星写真や天文写真をこれほどリッチに扱えるようになったことは,喜ばしいことではあるけれど,同時に使い方にも工夫の余地が生まれる。場合によっては,教材の自由度が,教授の焦点を甘くしてしまう逆効果についても配慮が必要になるだろう。またまた教材研究の新たな課題がやってきたということかも知れない。
 ただ,カリキュラムデザイン的な問題意識からすれば,こうした新しい教材を現行の学校教育の文脈に取り込む工夫の開発というだけでなく,こうした教材の生まれる背後の文脈を見通すことにも意識を向けたい。
 こうした革新的な産物が,基本的な教授学習の営みを否定するわけではないし,慌てふためいてそれらを変えなければならないというわけではない。そのことを踏まえた上で,あらためて世界が前提としている地盤がフラットになっている現象や,地球環境の変化による過酷な世界生存競争の流れを理解していかないと,同じことをしていても結果が全く異なってしまうし,説得的な説明も難しくなる。