教育改革関係図2007

 「教師の専門性・育成に関する勉強会」に出席してきた。この分野を専門とする若手研究者の皆さんの報告を聞いて,ディスカッションをした。

 私なりの議論は別に駄文を書くとして,研究会ではこの問題の緊急性とともに,あまりの領域の広さと現状における様々な困難を改めて確認することになった。懇親会の場でも,この問題を論じる難しさや限界について議論が交わされていた。

 もちろん各自の前向きな取り組みについても触れられていた。それに教師問題に関心を持つ若手が集まったことで,今後この問題について一緒に何かできるのではないかという機運も芽生えそうである。

 さて,連日断片的に流れてくる教育改革に関するニュースに振り回されて,どうも全体像が見えにくくなっているように思う。そもそも教育に関する基本情報が世間に十分浸透していない状態で,どこの誰それが何か言ったことが報道されても,それが全体の中でどういう位置づけになるのか,理解できるわけがない。

 教師問題の難しさが,世間一般の教育組織への理解が乏しいためであることは明白である。「教育委員会」ひとつとっても,その言葉に含まれている摩訶不思議な体系を理解している市民は少ない。


Stakeholders2007

 というわけで,まことに力不足ながら,教育らくがき版「教育改革関係図2007」を作成し,リスクは承知でご紹介してみたい。なお,予めお断りしておくが,物事は常に変化するゆえ,この図の賞味期間は短い。また私自身,理解が深まれば図を修正することになるので,その点を念頭に置いて参照されたい。

 この関係図で注目すべき箇所は,以前の駄文にも記したように,「文部科学省」「都道府県市町村首長」「都道府県教育委員会事務局」「市町村教育委員会事務局」の四者がそれぞれ持つ権能である。

 このことによって派生しているのは,義務教育(小中学校)における教員や学校長の雇用と学校の設置が,都道府県と市町村に分離しているという事態。こうした形が,場合によっては幸せな状況を生んでいない可能性があるということである。

 それから教育再生会議の周辺についても,ややこしさが見えてくる。縦割りによる省庁間の溝が,細かいところで敵対関係を生んだり,場合によっては利害を利用し合ったりしていて,なんとも国民には分かりにくい。17人の委員がピーチクパーチク叫んでいるのを隠れ蓑にして,官僚がうまいことやっている感じでもある。

 まだ中途半端な図なので,意図をうまく表せていないものもあれば,誤解を生む部分もたくさんあると思う。

 「子ども」が周囲から隔離されて置いてきぼりになっていることを表した部分に,「企業」からの消費者育成を線で伸ばしてある。皮肉を込めた面もあるし,学校教育などがいろいろ後手に回っている間,消費社会から様々影響を受けて育っている事実を込めたつもりでもある。

 教員人事の部分については,簡略している。非常勤講師なども登場していいだろうし,むしろいまはそれが大きな問題になっている。この図からは,教員が都道府県の「県費負担職員」として位置づけられており,市町村にとってはよそ者感があることを読み取っていただくことを期待している。

 それから「教育委員会」と「教育委員会事務局」という夫婦がいて,実のところ家庭内別居しているということを理解してもらうことも大事だろう。首長(この図では都道府県の知事レベルと市町村の長レベルを一緒にまとめてしまった。図の簡略化のためである)が任命できるのは「教育委員会」の教育委員だけ。「教育委員会事務局」は独立している。

 というわけで,この図の利用は,利用者本人の責任においてご自由に。作成者である私にとっては未完成な図なので,正確性についても利用によるトラブルなどについても責任は持てる段階ではないのであしからず。