先日はTwitterを話題に取り上げたが,先月末にGoogleが開発者を集めて披露した新しいコミュニケーションツール「Google Wave」が気になっている。
新しいといっても,Google Waveはこれまでのメールやチャット・IMや掲示板・ブログ,SNS・グループウェアを融合させたようなもので,コミュニケーションの時間軸と領域面を統一的に扱えるようにした点に特徴がある。
現在のGmailには画面の片隅にGtalkと呼ばれるインスタントメッセージ(IM)機能が表示されており,ある意味ではメールとIMを融合して利用できる。しかし,これは単に画面が一緒になっているだけで,機能は別々だった。
Google Waveは,全く新しい設計によるシステムがメール的にもIM的にも使えるように振舞い,同じように掲示板やブログ,SNSやグループウェア的に使うことも可能にしている。こうした様々な機能の顔を持っているくせに,実はすべて統一されたWaveというシステムで管理されているので,メール的なメッセージとIM的なメッセージ,ブログ的なメッセージなどすべてが時間管理でき,そして複数の人々がどのようなやり取りをしたのかも統一的な領域に記録される。
だから,過去のコミュニケーション過程を,機能の種類を越えて統一的にさかのぼることも出来るのである。
分かり難い?
じゃこういうシチュエーションを考えてみよう。
あなたが,ある進行中のプロジェクトに途中参加することになった助っ人だとする。
そのプロジェクトはいままで複数の人々によって様々な情報のやり取りがなされて,いまに至っている。あなたは過去の経緯を把握して,迅速に今後のプロジェクトのアイデアを提示しなくてはならない。
ところが,過去のやり取りは,グループウェアに記録された会議録やメーリングリストで交換された意見,IMで補足された細かい情報など,様々なツールを使って行なわれていた。仮にすべてのログ記録が残されていたとしても,あちこちのツールに分散した記録同士を流れに沿って追いかけるのは至難の業である。
これが今までのコミュニケーションツールの弱点だ。
しかし,Google Waveが導入されると,この問題に解決の糸口が提示される。
Waveは,それ自体でメール機能,掲示板機能,IM機能などを提供する。しかもそれらが有機的に融合されるので,システム側では,どのツールを使ってどういうやり取りが行なわれたのかをすべて統一的に記録できている。
あなたはWave上で展開されたプロジェクトのやり取りを,単に「巻き戻す」だけでいい。すると,メールや掲示板やIMでやり取りしたメッセージが,すべて実際の時間順に巻き戻され,再生することが可能なのだ。
すべてのプロジェクトが終われば,Wave上にプロジェクトのポートフォリオが出来上がるというわけである。
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Google Waveはオープンソースウェアとして公開される予定だそうだ。
もしこれを高等教育機関で導入すると,各大学でWaveによるコラボレーション環境を持つことが出来る。さらに,Waveシステム同士はコミュニケーションすることが出来るらしく,他大学の人たちとのコラボレーションも容易なのだという。
そうなると,教育工学的な評価云々という話はすっかり置いてきぼりだ。Google Waveの利用にセクシーさやエロスを感じれば,利用事例は増えていくだろうし,普及する可能性もあるかも知れない。使う?使わない?なんかそのことだけが問題とされてしまうような状況に追い込まれている。あとは教育利用のデザインをどうするのかって話だろうか。
それにしても,彼らGoogleはいとも簡単に情報の時間と領域をマネジメントしてしまおうとする。その能天気さは,ある意味で羨ましい。技術先行ではあるけれども,少なくともまだ夢を語る余裕があるってことか。
Think Globally, Act Locallyで頑張るしかない。