そして高尾山にいた

20061223_takaosan クリスマス・ムードにあふれる都心から離れて,東京都の外れに出かけようと思い,京王線の西の終点・高尾山口駅を目指した。都心から1時間もかからぬ場所に自然は広がっていた。
 午後から出かけたので,ちょっと散歩するだけのつもりだった。ところが,ケーブルカーに乗り,すこし歩き回っていたら,ついでに頂上にでも行ってみようという気持ちになって,登山ハイキングになってしまった。
 どうも頂上から見る日の出や日の入りが素晴らしいようで,夕日を目当てにした観光客が多かった。そんな人の流れに身を任せながら,私も頂上を目指して高尾山薬王院有喜寺を経由する登山道を歩いた。
 途中,百八段階段や北原白秋歌碑,天狗が居場所にしているという大杉原と遭遇する。薬王院有喜寺でお参りをし,さらにその先の頂上へ。いろいろなことを考えながら歩いた。
 人生で初めての退職願を出してからちょうど1年が経過していた。あの日のことは今でもわりと鮮明に覚えている。冬期休業に入る前の慌ただしい一日だった。なんども書き直した退職願。書き上げるのに時間がかかったわりには,学長先生に手渡す場面はあっさりとしたものだった。
 その1年後に,自分が高尾山にいるなんてことは,想像できるはずもなかった。こうして振り返ってみれば,不思議な気分になる。けれども「人生何が起こるか分からない」ということを信じるに足る経験ともいえる。そして,諦めずに邁進すれば何かしら結果はついてくることも…。
 頂上は大混雑。もうそろそろ夕日が沈もうというところで,みんながカメラを構えて待っていた。老若男女,家族もカップルもグループも,わいわいと頂上で群れていた。
 沈みゆく夕日を眺めたいという気持ちは強かったが,この大群と共に下山するのは御免だ。美味しい部分はまた次回にとっておくとして,混み合う前に下山することにした。散歩が目的だったのだから,これで十分である。
 大学の講義を担当すると,たまに雑談をする。こんな感じの話をすると,若い学生達は興味深く聞いてくれたりする。自分の未来が想像もつかない展開をする不思議さを感じてもらえればと思う。
 入試募集活動の際に,高校に出かけて模擬授業したときにも,10年後の未来について想像してみることを提案したことがあった。高校生達には,10年後は遠すぎるようだが,どうやら5年後も1年後すら想像する(夢見る)ことが苦手らしい。もちろん「一寸先は闇」なのは確かだけれど,逆に若い人たちにはもっとわくわくするような未来を夢見て欲しいと思うのである。
 また1年後,今度は富士山かも知れないし,海外でクリスマスを迎えているかも知れない。あるいは,私も誰かと連れ添って夕日を眺めているかも知れない。もしかしたら,何も変わってないのかも知れないが,とにかくまだ見ぬ未来が楽しみである。