父,遠方より来たる

 この週末,パチパチと会議録をつくっているところに父親が訪ねに来てくれた。到着までに大あわてで掃除。本を整理し,部屋のホコリを拭き,貯まっていたゴミを出し,風呂の湯船も洗って,さながら年末大掃除。おかげさまで部屋がきれいになった。
 親子共々,予定を決めぬ風任せな性格なので,ふらっと行動することが多い。そんな風に時間を確保するのが旧い型の研究者の癖で,そんな中で考えることが柔軟性にもつながっていた。もっとも,こういう旧式のやり方は,このご時世すっかり馴染まなくなっているけれども…。とにかく,週末は父親と過ごすことになった。
 今日は,東京国立近代美術館に出かけた。美術・芸術から縁遠い私は,美術館に出かけて作品を眺めていても,自分がちゃんと鑑賞できているのかがわからないので戸惑いがち。そういえばミュージアムの来場者研究という分野に取りかかろうとしているHさんの話では,博物館や科学館などを観覧する経験が,美術館などにも活かせるのではないかということだったが,私の場合は,あんまりうまくいってないかも知れない。
 ただ,現在開催中の「揺らぐ近代 −日本画と洋画のはざまに−」という特別展を見て,とても興味が持てたのは収穫だった。明治大正そして昭和にかけて,浮世絵といった日本画が中心だった日本に,油絵のような洋画がどのように受容されていったのかという視点で見ていくのは,日本近代美術を鑑賞のための興味深い足がかりになる。大変刺激的だった。
 この日,別会場では関係者対象のシンポジウム「美術館 マネジメント新時代」が行われていた。「なんか,どこの業界もマネジメントだらけだねぇ」と父と息子で笑っていた。
 一泊した父親は,満足してしまったのか,そのまま帰ってしまった。月光仮面みたいな訪問だったが,楽しからずや。東京駅まで見送って,少し寄り道してから帰路についた。
 家の近くまで来たら,なにやら賑やか。よく見ると,たくさんのテレビ撮影機材とスタッフ。テレビドラマの撮影をしているらしい。誰か俳優さんがいるのかなと見回してみると,白いコートの女性が立っている。ありゃ,話題の藤原紀香じゃ,あ〜りませんか。さすが立ち姿がキレイな人である。東京に来てから間近で見た有名人の第1号。彼女の結婚前に見られたのは,満足満足。そして,お仕事お仕事。