教育基本法改正案の性急さ

 最近,勉強してないから教育関連の駄文を書くのが滞っているというのもあるが,もう一つは,教育を語ると浅はかな政治の話にすぐさま直結してしまうので,うんざりした気分になるからだ。
 私がぶらぶらしていた,その同じ東京で,議論らしきものを進めて教育基本法を改正する段取りをつけた政治家達がいる。改正案の中身に関する議論の不十分さもさることながら,相変わらずプロセスが身勝手で,これが国民的な議論の結果だというなら「嘘つき」と緒川たまきに言ってもらいたいからなのかと邪推したくもなる。
 現行法は前文と11の条項から構成されている。確かに長い年月が経っているし,この時代に照らしてみれば違和感もあるかも知れない。あらためてどんな条項が並んでいるのか駆け足で確認しよう。
[現行法]
前文
第一条  教育の目的
第二条  教育の方針
第三条  教育の機会均等
第四条  義務教育
第五条  男女共学
第六条  学校教育
第七条  社会教育
第八条  政治教育
第九条  宗教教育
第一〇条 教育行政
第一一条 補則
 以上が現行の教育基本法である。さて,では先頃与党で最終報告されたとされる教育基本法の改正案はどうだろう。毎日インタラクティブの記事によると前文と18の条項から成っているようだ。
[改正案]
前文
第一条  教育の目的
第二条  教育の目標
第三条  生涯学習の理念
第四条  教育の機会均等
第五条  義務教育
第六条  学校教育
第七条  大学
第八条  私立学校
第九条  教員
第一〇条 家庭教育
第一一条 幼児期の教育
第一二条 社会教育
第一三条 学校,家庭及び地域住民等の相互の連携協力
第一四条 政治教育
第一五条 宗教教育
第一六条 教育行政
第一七条 教育振興基本計画
第一八条 補則
 以上が改正案の概要である。もちろん現行法も改正案も,各条項に複数の条文が含まれている。なんか改正案は,現行法をいじろうとして結果的には付け加えることしかできなかった下手な改変に見える。中日新聞(東京新聞)は『国家の品格』の著者である藤原正彦氏に取材し,「下手な文章」と言わせている(該当記事)。
 つくづくこういう,教育の見本にならないようなプロセスやレベルで国を動かさないでいただきたいと思う。こんな政治家達がいる国を思えと訴えること自体説得力に欠けるし,まして愛せよと傲慢かませるあなた達の精神構造をどうにかしていただきたい。百歩譲って,これに関わる政治家達のみなぎる愛国心がなせる技だと認めたとしても,そしてそれを寛大に受け止めるとしても,条項の数や順序をもっと見直そうとするセンスを持ち合わせていないことに幻滅する。作家でなくても,もう少し義務教育で習う程度の国語力を発揮してくれれば,ちぐはぐな順序に違和感を感じるはずだ。そこからしてダメ。
 ちょっとばかり内容を吟味すると,「教育の機会均等」の条項と「教育行政」や「教育振興基本計画」の条項との間で矛盾が生じる余地を残している。いろいろ付け加えすぎて,のちのちに問題を生みやすくなったわけだ。