いつか通る道-5

 最近になって『退職前後の手続きまるわかり』という本を買った。仕事を辞めることがどんなことなのか,こういう本をあらかじめ読んで知っておくべきとは思うが,幸か不幸か読む機会もなくここまで来た。とにかく「健康保険」「年金」「雇用保険」「税金」について手続きをしなければならない。
 税金は,確定申告の締め切り日も近いので,その手続きと共に諸々を考えなければならない。健康保険は悩みどころか。国民健康保険に加入するか,それとも現在のものを任意継続するか。掛金を比較しないと‥‥。年金はこりゃもう国民年金へ。そして雇用保険に関しては,失業給付を得るならそのための手続きをしなければならない。ただハローワークで休職しないと失業にならないのが厄介だな。
 口述試験で「いままで何やってきたんですか?」と不躾な質問を投げかけられて,そのあまりに投げやりな質問態度に思わず「教員ですが‥‥」と返した。けれどもその質問はある意味で的を射ていた。私の9年間の大学教員生活は,一体何をやっていたのだろうと自問したくなるからだ。善かれと思ってしてきた仕事は数々あれど,それが開花している手応えは薄い。総花式にやろうとしすぎたことにも問題があるのだろうけれど‥‥。
 それでも,ここ数年は,仕事にケリをつけられるように努力してきた。あと1年残ればもっと仕上げられることもたくさんあるが,あと1年,あと1年とやってきて5年経ったのである。本当に切り替えたいなら,今のタイミングしかない。あと1年残ったら,ずっと残ることになる気がするから。
 職場の先輩教員から「これから大変だぞ。なにしろ,りんさん,やさしすぎるから」と言われた。いつもやさしくできたら,どんなにいいだろう。私はやさしくなんかない。ただ自分に甘いだけ。それに自分で嫌気がさして,たまに無謀なだけである。