それはいつか通る道

20060126 最後の授業を終えた。もう少し題材を深めて扱いたかったものの,授業進行の狂いもあって,駆け足であっさりとこなすことになった。通年授業。お付き合い願った学生達に感謝の言葉を述べて,淡々と締めくくった。
 それで終わると思っていたが,彼女たちは前にぞろぞろやってきて「先生,一年間ありがとうございました」と声を発した。横を向けば花束。サプライズとはこのことで,私はどこへ視線を向けてよいのやら,照れて目線を落としたままだった。
 一年だけの担任となったが,この娘達は強い連帯ということが少々苦手ということもあって,こちらはハラハラすることが多かった。女の子のリレーションシップというのは,男の私には難解である。特に大人げなさの残るこの世代は,表裏の落差を抱え,実のところかなり危うい存在でもある。私にできることは,バックヤードで見守っていることを発信し続けることだけだった。
 とはいえ,彼女たちと過ごした一年は,片想いの嬉しさにも似た幸せな一年であった。それは自分自身の現在を見つめ直すものでもあったし,行く先を探ろうとし始めた記念すべき一年でもあった。
 こんなときに出てくる言葉は,あふれる想いに比して少ない。私は彼女たちにただ「ありがとう」とつぶやくように繰り返すしか言葉がなかった。