『JTB時刻表』1000号

 日本交通公社(JTB)が発刊し続けてきた『時刻表』が1000号を迎えた。999号は「銀河鉄道999」のイラスト表紙だったりと,1000号よりも記念的な号だった(残念ながら入手できなかった…)。

 四,五年ぶりに『時刻表』(1000号)を購入した。旅行好きや鉄道好きの子どもだった僕たちにとって,時刻表は見知らぬ土地とそこを走り抜ける列車達と戯れるとっておきの遊び道具だった。

 ネットもケータイもない時代。

 駅名と時刻によって構成された時刻表の役割は,単に日本国内の場所と列車運行の時間を伝えるだけに留まらなかった。僕らはそこに昼夜を問わず動き続ける世界を読み取ってその風景を想像した。

 時刻表後半に掲載されている私鉄や長距離バス,フェリーの時刻表は,遠く見知らぬ土地で,本当にその通りに列車やバスやフェリーが運行しているものだろうか?と,確かめられないがゆえの不思議さを伴って存在していた。

 色紙の頁には,運賃表や計算方法,各種きっぷの種類に説明がまとめられており,それを読みふけるのが僕たちの楽しみだった。そして,各地の宿泊施設も料金とともに掲載されている。ホテルや宿泊施設の名前と料金を比べながら,どんな雰囲気なのかを想像したりもした。

 ネットやケータイが当たり前になり,最新情報が手に入る時代。

 最適路線検索やオンラインでの切符購入システムも当たり前となり,時刻表を眺めて利用することは少なくなってきた。分厚い『時刻表』の出番は,駅や旅行代理店といった特定の場所以外では極端に少なくなっているはずである。

 僕らと同じぐらいの子どもたちも,「てっちゃん」でもない限り,触れる機会はほとんど無いだろう

 昨今,学校現場では辞書ブームだと一部報道が話題にしている。自分で調べた項目に線を引いたり付箋を貼っていき,どんどん使い古していくことで勉強の進捗が目に見えて分かり,意欲向上につながるという。そして辞書引きは「調べる」活動の習慣化や習熟にも役立つと期待されている。

 かつて『時刻表』を楽しんだ僕らは,『時刻表』を眺めることで似たような効果を得ていたのかも知れない。もっとも,旅をすることばかり覚えて,どうしようもなかったのだけれど…。

 地図を広げて,時刻表を開いて,人生という世界旅行へ。
 1000号おめでとうございます。