6月14日,東京大学大学総合教育研究センター主催のシンポジウムに出席した。センター10周年記念と,マイクロソフト先進教育環境寄附研究部門(MEET)の開設を記念したものだった。
「大学教育の情報化,そのフロントライン」と題されたシンポジウムは,大学教育のIT化やタブレットPCを活用した教育の取り組みといった最新の事例が紹介され,大変刺激的なものであった。間もなく毎日新聞Webなどで当日の様子も紹介されると思うが,もっとこうした内容が広く知られて欲しいと思う。
この日,とても素晴らしいソフトと出会った。東京大学大学院で様々な画像処理ソフトを研究開発されている五十嵐健夫氏と栗原一貴氏の研究成果である。特に栗原さんの「ことだま」というソフトウェアは,学校の教室でパソコン画面を模造紙かホワイトボードとして扱えるシンプルなソフトウェアである。非常にいろいろなバージョンがあるみたいだが,千葉県総合教育センターとの共同研究の一環として「ことだまレクチャー」という名でソフトが公開されている。
正式には「ペンベースプレゼンテーションソフト」なのだそうだが,様々に詰め込んだ機能が,教育現場での実地使用でことごとく却下されて,非常に絞られた機能が残ったのだという。このソフトがユニークなのは,スライドの一枚一枚を「視点」の位置や構図として捉える点にある。つまり巨大な模造紙の上に必要な絵や文字を適当に貼り付けて,その部分部分を拡大したり視点を変えたりして構図決めて写真を撮るように切り出したものがスライドになっていく感じなのだ。そのことによって,パワーポイントのような一枚一枚が完結したスライドを順番に見せていくという構造とは異なり,広大な模造紙領域を自在に活用できる余地が編集時にも発表時にも生まれるというメリットがある。これを「スマートスライド」と名付けていた。
もちろんこのソフトの特徴はそれだけではなくて,その描画システムとか,ナビゲーションのシステムとか,栗原さんと五十嵐さんの研究成果がふんだんに活かされている。インターネットエクスプローラーで閲覧している画面から,ドラッグアンドドロップで画像を貼り付けて,自由にペンで書き込みが出来たりするだけでも魅力的である。本来はパワーポイント・ファイルの読み込み機能などもあるらしいのだが,権利の関係上省かれているらしい。その辺はちょっと残念だが,今後商品化されれば必需品ソフトの一本になるかも知れない。ちなみにWindowsソフト。模造紙みたいに使えるシンプルなソフトをお捜しの皆さんは,ぜひお試しあれ。